「できるだけ自分の色は出さないように」建築家・西澤徹夫が考える〈八戸市美術館〉の見どころやアート空間のデザインの魅力

日本建築学会賞にて作品賞を受賞した〈京都市京セラ美術館〉や、建築家・浅子佳英、森純平と協働で建築設計を担当した〈八戸市美術館〉など美術館や展覧会の空間設計を中心に手掛ける建築家・西澤徹夫。今回は西澤さんに、2021年11月にオープンした〈八戸市美術館〉の見どころやこだわり、アート空間のデザインの魅力について伺いました。

〈八戸市美術館〉の見どころとは

撮影:西沢徹夫

2021年11月のオープン以来地元の方をメインに多くの来客で賑わう〈八戸市美術館〉。西澤さんが考える美術館の見どころを伺いました。

「一番特徴的なのは、ジャイアントルームと呼ばれる柱のない大きな空間です。45m ×18mの約800平米くらいの広さで、高さが17mあります。ここはエントランスロビーでもあり、イベントスペースでもあり、作品制作の場でもあり、打ち合わせスペースでもあり、ワークショップの会場でもあります。用途は決まっていない、巨大なカーテンと移動棚で簡単に仕切りながら様々な活動が同時に共存できる空間なんです。空間が広く、離れているから向こうの音が気にならないとか、簡易的な仕切りから隣の活動の気配が感じられるとか、広場や街のような場所を目指して作られた部屋です。」

撮影:西沢徹夫

設計チームには美術や街づくりに詳しい森純平さんもいらっしゃいましたが、ご一緒にお仕事されるのは今回が初めてなのでしょうか。

「一緒に仕事をするのは初めてですが、東京藝大の建築学科の後輩でもあるので元々仲がよかったんです。彼はアーティストインレジデンスを運営しているので、そういう場所づくりとしては気づきが多い現場でした。浅子さんも含めて、あーでもないこーでもないと彼らと話をするのは楽しかったですね。プロジェクト前にはヨーロッパに視察旅行にも行きました。」

公共空間デザインと自分のスタイルのバランスとは

https://tezzonishizawa.com/kyoto-city-museum/

美術館のような大きく公共性の高い施設の設計は要望も多いと思いますが、ご自身のデザインのスタイルとのバランスの取り方はいかがでしょうか。

「建築家がデザインした、ということを売り文句にしたり、自分のスタイルを打ち出すというやり方にはこだわりがないんです。できるだけニュートラルに、オーダーごとに必要なことを必要なだけやる、ということを目指しています。建築家が前に出てしまうと中に入ってくる作品やアーティストの活動を邪魔してしまうと思うので、できるだけ自分の色は出さないようにしています。」

https://tezzonishizawa.com/kyoto-city-museum/

大学卒業後に所属されていた青木淳建築計画事務所では〈青森県立美術館〉を担当され、独立後は美術館はもちろん展覧会の会場構成など多くのアート空間を手掛けられていらっしゃいますが、近年担当された〈京都市京セラ美術館〉や〈八戸市美術館〉にも生かされている経験やポイントはありますか。

https://tezzonishizawa.com/kyoto-city-museum/

「展示空間は様々な展覧会を行うためニュートラルな空間になりがちなのですが、会場構成を行う中で、展示室を使う側からすると何もない空間は手掛かりがなくて、ちょっとクセのある空間のほうが作品と空間の対話が生まれてより作品が新鮮に見えることに気がつきました。〈京都市京セラ美術館〉では5つある展示室の壁に、同じ白色でも少しずつ色味に変化を加えていたり、天井の作りを変えていたりしています。〈八戸市美術館〉でも、いわゆるホワイトキューブといった真っ白な展示室がある一方で、映像展示に特化した暗い部屋を作ったり、ビスが打てるベニア仕上げのスタジオを作ったり等、空間にコントラストを設けています。」

アートに特化した空間デザインの魅力とは

https://tezzonishizawa.com/the-window-a-journey-of-art-and-architecture-through-windows/

独立前から現在に至るまで数多くのアート空間のデザインを手掛けられていますが、芸術表現に特化した空間デザインのやりがいとはどういった点でしょうか。

https://tezzonishizawa.com/onchi-koshiro/

「単純に美術が好きなので、プロアマ問わず何かを作り出そうとする人に出会えるのは嬉しいし楽しいです。そこからインスピレーションを得ることもありますね。また、美術館は基本的に何もない空間なので、空間が埋め尽くされるのを待っているという感じがして、そこを僕達の意図を裏切られるような形で満たされた光景を目にするとととても嬉しく感じます。」

ライフイズ◯◯

アート空間のデザインを中心に活躍されている西澤さん。そんな西澤さんにとってライフイズ〇〇の〇〇に入るものは何でしょうか?

「”クリエイティブ”ですね。僕は建築というわかりやすいモノを作っていますが、実際は掃除や書類ひとつ作る作業もクリエイティブなことだと思います。人間が暮らす、生きていくということは何かを作り出すことと同義だと思うので、そういうことに意識的になればどういうふうにモノを作ったらいいかと見直すきっかけになる。結果それが暮らしを考えることに繋がると考えています。」

協働で生み出されるクリエイティブを楽しむ

人との関わりを大切に、そこから生まれるアイディアやインスピレーションを活かしご自身のクリエイティブに繋げる西澤さん。そんな西澤さんの日常でのデザインとの接し方や好きな空間については「『違う視点で見てみると発見も多い』建築家・西澤徹夫のデザインへの接し方と好きな空間」からどうぞ。