「違う視点で見てみると発見も多い」建築家・西澤徹夫のデザインへの接し方と好きな空間

日本建築学会賞にて作品賞を受賞した〈京都市京セラ美術館〉や、建築家・浅子佳英、森純平と協働で建築設計を担当した〈八戸市美術館〉など美術館や展覧会の空間設計を中心に手掛ける建築家・西澤徹夫。今回は西澤さんに、日常のデザインとの接し方やお好きな空間について伺いました。

建築家・西澤徹夫

©前谷開

1974年京都府生まれ。2000年東京芸術大学修士課程修了後、2000-2006年青木淳建築計画事務所勤務。〈ルイヴィトン銀座店〉、〈青森県立美術館〉等を担当し、2007年に西澤徹夫建築事務所開設。〈東京国立近代美術館〉所蔵品ギャラリーリニューアル、〈京都市京セラ美術館〉など美術館の新築、改修、展覧会の会場デザインをメインに様々な建築設計を手掛け、高い評価を得ています。現在はご自身の活動の傍ら、東京芸術大学、日本女子大学非常勤講師も務められています。

暮らしの中で大切にしているデザイン

まずは日常生活の中で大切にされているデザインについて伺いました。

「特定のジャンルで好きなデザインはないのですが、何かを購入した時に“消費者にならないようにする”ということを意識しています。矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、無批判にそのデザインを受け入れるということをせずに、批判的に『もうちょっとこうした方がいいな』とか『ここは転用できるかもな』とかいった視点でモノゴトを考えています。」

好きな場所・空間

建築家として、お好きな空間はどういったものなのでしょうか。

「学生の頃にエジプトに訪れた際にオアシスを求めて砂漠を歩いていたときに、砂と空と太陽しか見えなくて一気に怖くなったんです。つまり、究極的に生物が何もいない空間に立ったときに、人間がどれだけ環境を変えてきたのかを思い知らされるような体験だったんです。今でも時々その風景を思い起こすことがあるので、好きな場所ではありませんが、心に残っている印象的な風景ですね。」

確かに、人工的なものが一切ない空間は日常では珍しいですよね。身の回りのプロダクトや建築物など、人がどれだけ自然に手を加えてきたのか、改めて考えさせられるきっかけとなったのですね。

5年の歳月を掛けた〈八戸市美術館〉が完成してみて

撮影:西沢徹夫

2021年11月に完成した〈八戸市美術館〉は、西澤徹夫建築事務所・タカバンスタジオ設計共同体の連盟で選考され、約5年の歳月を経て実現したプロジェクト。まずは完成してみての率直な感想を伺いました。

撮影:西沢徹夫

「オープニングには多くの市民の方にお越し頂きました。当初、今回の提案が従来の美術館とは異なるものなので、戸惑われる方も多いかと思っていたのですが、美術館に長く滞在されている方が多くて、ようやく自分達の手から離れ、市民の方々に受け入れられたような感じがして嬉しかったのを覚えています。」

タカバンスタジオの浅子さんとは、デザインのアプローチや、作家性がご自身と似ていることから協働されたのでしょうか。

「お互いのベースは近いところがあると思いますが、デザインについての趣味とか参考にしているものは異なります。だからこそ互いに説得したり、リファレンスを持ってきて議論するのが楽しいと感じるんです。そこが協働で設計する魅力でもあるのではないでしょうか。意見が並行で喧嘩になることもありますが、違う視点で見てみると発見も多いですね。」

撮影:西沢徹夫

今回の美術館のコンセプトが「出会いと学びのアートファーム」ということですが、具体的にどういった使われ方を意識していますか。

「八戸市美術館は芸術とか文化といったものが、市民の日常生活に染みついた当たり前のものを再発見するところから生まれるのではないか、ということから始まった美術館です。なので学芸員が展覧会を作るだけでなく、市民同士で互いに学んだり何かを作り上げていくことを目指しています。こうした地域住民の参加をコンセプトにしている美術館は日本では1つだけだと思います。周辺の方々としては最初は慣れないかもしれませんが、どんどんと美術館に巻き込まれていってほしいですね。」

客観的な視点で他者との関わり、創造を楽しむ

日頃からデザインされたものを批判的に見ているという西澤さん。他者が生み出したものを正確に捉えつつ、自身の感覚との差異を客観的に捉えることで、より良いクリエイティブへと繋げている様子が伺えました。自身のスタイルを通すのではなく、常に変動的な立場であるからこそ、美術館や展覧会の会場デザインといった様々な個性をうまく活かす空間を提案できるのかもしれません。そんな西澤さんが考える〈八戸市美術館〉の見どころやこだわり、アート空間のデザインの魅力については「『できるだけ自分の色は出さないように』建築家・西澤徹夫が考える〈八戸市美術館〉の見どころやアート空間のデザインの魅力」からどうぞ。