隙間を活かして、再利用する。島田陽が設計する「伊丹の住居」の魅力とは!?

建築家・島田陽は1972年 兵庫県神戸市産まれ。1997年に京都市立芸術大学大学院卒業。同年にタトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所設立する。「六甲の住宅」でLIXILデザインコンテスト2012金賞、第29回吉岡賞受賞。「石切の住宅」で日本建築設計学会賞大賞を受賞している。

核家族が進んでいる現在。土地も細分化され、1家族が家にあてられる空間も限られてきている。建築家・島田陽の元にも、そういった住宅設計の依頼が来るようだ。兵庫の伊丹市に建てた住居もそのひとつ。その限られた空間では今までの設計における常識が通用しないことも多いが、島田陽は今が新たな作法の形成期なのだろう」と考え、試行錯誤を続けているという。

隙間をうまく利用した設計

Via : https://tat-o.com/

島田陽が設計した「伊丹の住居」は、地上階3階建てで敷地面積は59.16 ㎡。民法で定められている500mmの外壁後退のため、これから建てる家とすでに隣に建っている家のあいだには、計1000mmの隙間が生まれる。

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島田陽はその隙間をうまく活かせないかと考え、あえてギリギリの500mm後退させるのではなく、北東側の隣地境界線から900mmほど外壁面を後退するように設計。そうすることで生まれた1400mmの隙間を通路として、側面の中央に玄関を用意して住宅内での動線空間を最小化させたそうだ。構造の入っていない壁は外に押し出して、2階・3階にトイレや収納をつくり出し、空間認識に揺らぎを生じさせている。

置き家具のように見えるデザイン

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階段や洗濯機置き場、収納など、生活感を感じさせる家具は、本来その姿をなるべく隠してデザインしたいもの。しかし洗練されすぎたデザインでは、逆にモノの置き場所を制限されているように感じることもある。もっと自然に、そして自由に空間を楽しめるようにと、「伊丹の住居」では家具を置き家具のように作られているのだ。

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この大きなタンスのように見えるこちらも、実は1階から2階へとつながる階段。中央に配しスペースを最大限に利用し、階段を上ると白い壁が広がる開放的な空間へ。そしてソファと一体化しているような家具を踏み台に、3階へと上っていく。階が上がるたびに部屋の雰囲気もガラッと変わり、光の状態も変化しているのを感じられるのだという。

広がりを感じられる空間

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狭い土地に建てる住居は横に広げられない分、縦のスペースをうまく使うことになる。しかしそれによって階段が空間を圧迫したり、縦長を意識するあまり横の広がりを感じられなかったり…ということもあるだろう。しかしこの住居では先述したように、家具を外に押し出して設計して空間をうまく使い、壁と一体化させることで広く感じさせる設計になっている。

限られた土地でも、隙間を利用して快適な住まいを確保する。島田陽はこれからも試行錯誤を続け、新たな作法を生み出していくのだろう。