コロナ禍によって”縁側”が再び求められるように。建築家・島田陽インタビュー。

タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所を設立し、住居から店のデザイン、パブリックアートまで手がける建築家の島田陽氏。多岐にわたるジャンルで活躍しているが、実は島田氏の原点には「アーティスト」の存在があったそう。芸術大学を卒業したあと活動する中で、日々の生活でどんなデザインを大切にしているのか。そして、仕事への想いや島田氏が考えるデザインについて語っていただいた。

建築家・島田陽

1972年神戸生まれ。1997年京都市立芸術大学大学院修了後、直ちにタトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所設立。「六甲の住居」でLIXILデザインコンテスト2012金賞、第29回吉岡賞受賞。「石切の住居」で日本建築設計学会賞大賞(2016)「ハミルトンの住居」でHouse of the Year Award, AIA Brisbane Regional Awards/State Award, AIA Queensland Architecture Awards/National Commendation, AIA National Architecture Awards「宮本町の住居」でDezeen Awards2018 House of the Yearを受賞。

アーティストではなく建築家へ

家族がギャラリーを経営していたことから、昔から身近にアーティストが多かったという島田氏。

「アーティストに憧れはあったが、大学は芸大に進むことに。デザインや彫刻、日本画などから専攻を選んで学べるが、だんだん空間体験というものが人の心に影響を及ぼすことが面白くなっていった」そうして環境デザインを専攻し、最終的には建築家に面白みを感じるようになったと語った。

大切にしているのは日々の生活のデザイン

島田さんは意外にも物質的なデザインにはあまりこだわりが強くなく、日々の生活のデザインを気にしているとのこと。たとえとして挙げたのは、家で食べる昼食の時間。

事務所は両親のために建てた家の地下にあり、昼食は上の階のキッチンでみんなで談笑しながら食事を満喫しているという。そんな日々の暮らしをなるべく楽しんで、その時間を損わないようにしていると話してくれた。

特に好きなのは「イギリスのダンジェネス」

島田さんによると、好きな建築や公園は数限りなくあるが、その中でイギリスのダンジェネスが特に気に入っているそう。荒地のようなところに、エイズで亡くなった映画監督デレク・ジャーマンが建てた小屋で、とても美しい聖地ような場所だと話す。最近はその場所の保存に関するクラウドファンディングが行われ、島田さんも寄付をしたんだとか。

「ああいった場所が世界のどこかにあるというのが、非常に大切なこと。真っ黒く塗られた小屋で、その周りに彼が作った庭があってきれいに残っている。彼が作ろうとした環境全体が美しいんです」

ダンジェネスが位置しているのは原発があるような、非常に荒涼とした海岸沿いの植物があまり育たない場所。青々とした庭ではないものの、植物やオブジェが置かれていて良い雰囲気を出しているという。

コロナ禍でデザインはどう変わる?

これまで住空間はどんどん切り詰められ、応接間や仕事場などの機能を住宅の外に出す風潮があった。しかしそんなデザインに求められるものの考え方が、コロナ禍によって変わると島田さんは語る。

「ステイホームやテレワークによって、今の住まいの貧しさ・余裕のなさに気づいたと思う。この大事さは前から意識していたが、昔の縁側のような空間が復権していくはず。環境性能的にも人間関係的にもバッファーゾーンとして、夏には日差し、冬には冷気を遮って応接間としても使える空間が増えていくのではないか 」

島田氏は2015年、オーストラリアのブリスべンで住宅を建てている。その際に現地の暮らしを観察したところ、彼らにとって1番大事なものは”大きな庇の出たベランダ”だったそう。まさに応接間やダイニングとして使われているような空間を意識することになり、そしてコロナ禍によって換気や屋外空間の大事さが身にしみたのでは。そして、そういった考え方がますます大事になってくると話す。