SANAAによる、ゆるやかな曲線がもたらす心地のよい空間が広がる「ロレックス・ラーニング・センター」
現代建築を多く抱える国、スイス。そこには日本人建築家である妹島和世と西澤立衛による建築ユニット「SANAA」による作品も並びます。彼らは、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞している世界的な建築家です。日本では、石川県の金沢21世紀美術館や、山形県の鶴岡市文化会館が有名です。そんな彼らが手がけたスイス連邦工科大学ローザンヌ校のキャンパス内に建設された学習施設「ロレックスラーニングセンター」は、大胆な構成と抽象的なデザインが美しい建築です。
波打つような緩やかなカーブの曲線が美しい外観
〈ロレックス・ラーニングセンター〉は、スイス連邦南部に位置し、美しいレマン湖沿いの街にあります。ローザンヌは、スイスの文化の拠点となっている街であり、IOCの本部があり、ローザンヌ国際バレエコンクールが有名です。
平面に広い建築ですが、ところどころ波打つように緩やかなカーブで持ち上がっています。うねりによってできたトンネルや、スロープはすべて動線となっています。空間のつくりかたとしては、平屋の長方形を垂直方向にうねりを起こし、円形の中庭をちりばめることにより、内部空間に光を取り入れる構成となっています。
光を取り込む円形の孔
ところどころに設けられた孔には、建築内部への動線や採光の役割があります。中庭のガラスは、円形ガラスとなっており、うねりによってサッシの割り付けが変わるため、ガラスもひとつひとつ違うモデュールになっており、細部へのこだわりを感じられます。
建築ヴォリュームの下に行くと、自然にできた洞窟や岩陰のようで安心感が感じられます。中庭はトンネルで繋がっており、回遊できます。この施設は、ローザンヌ工科大学の図書館となっており、レストラン、カフェ、休憩スペース、自習コーナーがあり、一般の人も利用できるコミュニティ施設となっています。
孔になっているところから光が落ちる様子が綺麗な空間。構造はシェルとアーチの中間構造で、軸力を接地面に流しています。シェル構造は文字通り貝のかたちのような、なだらかな曲面によりもちこたえる構造です。
地形が豊かで公園のような楽しげな内部空間
長方形のキューブに円形の穴を空け、うねらせた操作をしただけのシンプルな建築ですが、内部空間もとても豊かに感じられます。
〈ロレックス・ラーニング・センター〉のユニークなところは、斜めになっているスラブが斜面のまま建築になっているところ。うねりは、空間に様々な表情の陰影を映しています。うねる角度、中庭の大きさによって光の入り方は異なるので、決して同じ空間に見えません。
うねりが生み出すリズム感を邪魔しない工夫
全てガラス張りで孔になったこところからは向こう側や中庭を見ることができるうえ、扉や階段で外に出ることもできます。この施設は窓ガラスが多く配されており、うねりの連続性が途切れるような「垂直」の印象をできるだけ消すため、サッシや方立は目立たないようとても細く作られています。
レストランや図書館まで、様々な要素がシームレスに配されたワンルーム空間
広い場所や狭い場所だったり、採光の具合だったりと一つの平面の上に色々なスペースがあります。
斜面の上にスロープを作っていたりと遊び心が感じられるエリアも。
うねりとうねりの間にレストランや図書館などの施設としての機能があり、動線もあります。仕切りはほとんどなく、シームレスに繋がっており、全体がひとつの部屋として感じられます。
開放的な場所もあれば、少し洞窟のような雰囲気の場所も一続きになっているのがユニークな空間。まさに公園のように使われていて、学生がその辺で寝そべっていたり、おしゃべりしたりしています。
ユーザーそれぞれが好きな場所で、好きなことをしながら過ごせる〈ロレックス・ラーニング・センター〉。建築自体にスケール感を感じさせる要素が圧倒的に少なく、人がいないとサイズ感がわからなくなるような不思議な感覚を、是非体感してみてください。
ロレックス・ラーニング・センター – Rolex Learning Center (EPFL)
開館時間:7:00~24:00
住所:1015 Ecublens, Switzerland
URL : http://rolexlearningcenter.epfl.ch