オランダ・ロッテルダムにあるレム・コールハースとOMAによる批評的な建築「クンストハル美術館」
オランダ・ロッテルダムの中心街、ここにはOMAが手掛けた重要な建築物「クンストハル」がある。世界中から名が知られるレム・コールハース率いる建築設計士集団OMAは、クンストハルの建築を通して当時の「モダニズム建築」に訴えかける。批評的建築の中から生まれた「現代建築」が、今もなお朽ちず我々に新しさを与える。その魅力を解説と共に見ていこう。
レム・コールハースとOMAとは?
建築業界の人間や建築ファンであれば、知らない人は居ないと断言しても良いほどの存在である「OMA」。OMAは「Office for Metropolitan Architecture」の略であり、建築設計事務所であり、都市計画コンサルタントである。
1978年、オランダ出身の著名建築家レム・コールハースによって設立されて以来、複数の建築家が対等な立場でプロジェクトを計画しながら、世界中に多くの著名建築物を生み出している。
レム・コールハース率いるOMAが手掛けた作品の中では、オランダのクンストハルやユトレヒト大学・エデュカトリウム、アメリカのシアトル図書館、ポルトガルのカサ・ダ・ムジカなどは、彼らの代表作と言っても良いだろう。
今回はその中からオランダのクンストハルを紹介していく。
OMAによる近代建築「クンストハル」
オランダ・ロッテルダム中心部の公園内に佇む「クンストハル」。この建築はモダニズムに批判的な建築を「斜行空間」で魅せ、多くの注目を集めたことで、建築歴史の中でも「最も重要な建物の1つ」と言われ、現代建築のアイコンとなった。
モダニズム建築によくある設計といえば、「四角い平面」を持つ建築。クンストハルも同様に四角い外観ではあるが、内部の床自体を斜めにすることで「階層」という概念自体を否定しているようにも感じる。
「斜行設計」がもたらす豊かな空間
OMAが斜行設計で創り出した「切れ間のない連続的な空間」。斜めのスロープを取り入れ、それをスラブと一体化させることでスロープ自体を空間化している。
今まで斜めのスロープを動線として取り入れた著名建築は多く存在する。しかし、このクンストハルは「大きな面で床全体を斜めにしたこと」が他建築にはない最大の魅力である。
これにより、生まれた「斜めの床スラブ」は、エントランスやカフェではそのまま天井として現れ、動きのある奥行き空間が創り出されている。その天井は公園に向かって徐々に高くなり、よりパースが効いたことで平面では取り入れられなかった開放感を我々に与える。
モダニズムを批評する建築「クンストハル」
斜行設計以外にも、OMAが手掛けた「モダニズム批評的表現」は建築随所に現れる。モダニズム的な外観の中に、OMAらしい「新たなスタイル」で空間を演出しているのだ。
それらはモダニズム時代の建築を踏襲しつつも、モダニズムとは違った価値を挿入し「近代建築」を表現しているようにも思える。
ミース・ファン・デル・ローエのユニバーサルスペースの概念を取り入れた美術館機能。ミースの石張りやコルビュジエの横連想窓などをファサードにオマージュしながら批評性を訴えかけている。
インダストリアルな素材とアクセントが鮮やかなインテリアデザイン
館内全体に漂うのは、OMAらしいインダストリアルな印象空間。グレーチングの床や亜鉛めっき鋼板、ポリカーボネートなど、建築的で安価な材料を使いながら、アクセントに使われているカラーリングが鮮やかで実にデザイン的だ。
RC打放しをそのまま用いて、カジュアルに仕上げた美術空間と、工業製品を使ったインテリアが独特な印象を受ける。
ポリカーボネートの壁を通して光だけを取り込む。
通常であれば下地に使う合板もうまく取り入れ、ポリカーボネートやグレーチングなども含めて効果的な使用方法で安っぽさを与えない。
革新的であり、批評的な建築「クンストハル美術館」
レム・コールハース率いるOMA。彼らが手掛けた「クンストハル」は、モダニズム建築を批評しながらも、それらを継承し進化をさせた「現代建築」の重要な作品であることは間違いない。
理論的に建築の成す形を批評・研究しながらも、革新的な建築と遊び心のあるOMAらしいインテリア空間デザインは、今もなお廃れることなく新しさを残し続けている。
Kunsthal Rotterdam – クンストハル・ロッテルダム芸術ホール
開館時間:11:00~17:00
休館日:月曜日
入館料:14€
URL : https://www.kunsthal.nl/
住所:Museumpark, Westzeedijk 341, 3015 AA Rotterdam, Netherland