窓が無い空間でも光の移ろいで一日の流れを感じられる五十嵐淳による住宅「光の矩形」
北海道札幌市にある建築家・五十嵐淳が設計した住宅「光の矩形」。緩衝空間における矩形の開口を試行した住宅の第一作でもあります。札幌市の北に位置する、古い区画割りされた住宅街。そこには北面接道で他の3面に隣家が迫った30坪ほどの小さな敷地が残っていました。風致地区のため必然的に決まった建坪12坪の容積いっぱいに、夫婦と子供2人のための空間を計画して建てられたのがこちらの住宅です。この作品はJIA新人賞を受賞しています。
窓のない特徴的な外観
「光の矩形」には光を貯める緩衝空間が設けられており、景色を眺める窓のないユニークかつ機能的な設計となっています。矩形の開口からは緩衝空間に集められた光によって、柔らかい光がリビングダイニングなどの室内に広がります。
凍結深度分床レベルが下げられた結果、高い天井が確保されたリビングダイニングを中心部に配置し、その両端の南北に緩衝空間を設けています。
窓がない閉ざされた建物は独特の存在感が感じられるものの、外壁に用いられた木の風合いによって柔らかな印象となっています。
シンプルかつ心地の良い内部空間
玄関を入るとほんの少し低くなった1階の部屋に下りていくように進みます。
北側の緩衝空間には階段室とその踊り場を使った個人の居場所が断面的に展開しています。
ほんのりと薄明るく、静かな落ち着き。作品の名の通り壁面いっぱいにとられた光の開口。自然光の反射を利用した柔らかくて大らかな光が室内にやさしく広がっています。
南側の緩衝空間は光溜まりの吹抜けとなっており、採光・通風・冷気止め・動線などの機能を持ちます。
衝突空間には、ホリゾントのように光る白い壁があります。壁は二重になっていて、東西に設けたガラスのスリット状の窓から外の光が入って外部側の白い壁を照らします。
矩形の開口から刻々と変わる光がリビングダイニングに間接的に差し込み、その光の状態が室内にも反映されます。
窓がない空間で体感する柔らかな光の移ろい
この家に直接に外の風景を見ることが出来る窓は存在しません。南側に設けられた、緩衝空間にのみ光が入り貯められます。矩形の開口から刻々と変わる光がリビングダイニングに間接的に差し込み、その光の状態が室内にも反映される。暗くないと感じることができない光の美しさ、その明暗の感覚をうまく取り入れた名作住宅です。