レンゾ・ピアノによるニューカレドニアの先住民族の家をモチーフにした「チバウ文化センター」

太平洋に浮かぶ離島ニューカレドニア。そこに根付くカナック文化はご存知でしょうか。東海岸沿いの諸島に伝わる文化・慣習には、自然と共生する人々の知恵が詰まっています。ニューカレドニアの首都、ヌメアにあるチバウ文化センターには、牧歌的な雰囲気の中に芸術センター、博物館、劇場や図書館、そして美しい景観の庭園が揃っています。大人も子供も現地の文化を楽しみながら理解することができる施設です。

伝統家屋「カーズ」をモチーフにしたファサード

建物は周りの木々に溶け込むように建てられています。近くには海もあり、現地の自然も感じることができます。入口を越えると、レンゾ・ピアノ設計によるセンターの建物が見えます。この建物は現代的デザインとカナック文化に着想を得たものを緻密に混合し、練りあげられたニューカレドニアのヴァナキュラーを生かした建築になっています。

特徴的なファサードは先住民族カナックの伝統家屋「カーズ」がモチーフ。木材と鋼材による10棟の建物がティナ湾を見下ろしています。各棟が一本の線上に並び、空へと向かって伸びる、見応えのある建築です。

巻貝のような形をしており、カナックの文化の発展を願うことからいずれも未完成の状態となっています。

エントランスは庇が設けられ、涼しげな印象に。

「カーズ」型の塔の裏にはモダンな作りのヴォリュームが連なっています。

細い部材を連続させた繊細な印象の空間

伝統的なものを取り入れるとどこか無骨さが感じられることも多いですが、「チバウ文化センター」は繊細な印象を与えてくれます。レンゾ・ピアノらしく細い部材を連続させるように空間を作っているのも要因の一つと言えそうです。

豊かな自然を取り入れる

ニューカレドニアらしい開放的な作りになっていて、小さな中庭で植栽や自然光を取り入れることで心地の良い空間が広がっています。

テラスのようなオープンスペースは周辺の緑と溶けこんでおり、気持ちのいい日差しが差し込みます。

カーズをモチーフにした部分の内部は、丸い平面に斜めの天井が特徴的です。展示されているオブシェも動物を模したデザインが可愛らしく、目を引きます。

魅力的な展示内容

施設の中には美術館の常設展、企画展のようなスペースがあり、日本やフランス本土とは異なる離島独自のユニークな作品が展示されています。

企画展には来場者が参加するような仕掛けもあり、アートに対してフラットな姿勢が伺えます。

カーズの一つでは、この「チバウ文化センター」のコンセプトや建築模型、コンペ時の応募案が展示されており、参加者それぞれのカナック文化への理解、その表現を感じ取ることができます。

ニューカレドニアの歴史的な資料ももちろん展示されており、現代に到るまでの流れを学ぶことができます。

心地の良い空間で学ぶカナック文化

「チバウ文化センター」は、レンゾ・ピアノらしい繊細な空間とニューカレドニアの伝統がミックスされた、ユニークな建築です。特に時間の経過とともに森に溶け込み、土着的でスローな要素が多く感じられます。建築に興味がない人でも楽しめる居心地の良い空間。ニューカレドニアにきた際はぜひ足を伸ばしてみてください。

チバウ文化センター – Centre culturel Tjibaou

開館時間:9:00~17:00
休館日:月曜日
入館料:大人/500パシフィックフラン、 12歳未満と65歳以上は無料
URL : http://www.adck.nc
住所:Rue des Accords de Matignon, Tina, BP 378 98845, NOUMÉA, New Caledonia