アジアンリゾートの源流はスリランカから?自然を取り入れた熱帯建築家「ジェフリー・バワ」とは!?
次の旅行はどこにしよう?パリやニューヨークでお買い物やアートを楽しむのも良いけど、バリやインドネシアなどのアジアの南国で時間を気にせずリゾートでゆったりと過ごす休暇も魅力的ですよね。そんな力強い木々と青々とした海を身近に感じられるアジアンリゾートの源流とも呼ばれる建築家・ジェフリー・バワをご存知でしょうか。自然と一体になることを目指した彼の建築は知れば知るほど訪れたくなる名作ばかり。心地よい空間で過ごす時間はもちろん、その建築にも目を向けると楽しい発見があるかもしれません。
弁護士から建築家?意外なバワの経歴
ジェフリー・バワ(Geoffrey Bawa)は20世紀で影響力のあるアジアの建築家の1人とされるスリランカの建築家。スリランカムーア人と英国人のハーフである父と、スコットランド人とスリランカ人を祖先に持つ母のもとに生まれ、裕福な家庭で育ちました。
イギリスで法律を学び弁護士として働きましたが、母親の死後、法律の仕事を離れ、世界各国を2年間かけて旅行したのち、自分の理想郷をつくろうと、スリランカのリゾート地に土地を買いました。しかし建築の知識に欠けていたことから、33歳でイギリスの建築学校に入学、38歳でイギリス王立建築協会の一員となりました。
彼が世界的に知られるようになったのはイスラム教徒が抱く社会へのニーズに応える建築コンセプトを特定し、奨励することを目指すアワード「The Aga Khan Award for Architecture」での受賞。
バワはこのアワードの創設以来3度目となる「The special chairman’s award」を受賞し、また非ムスリム初の受賞であったためアワードが始まって以来の栄誉とされました。
トロピカルモダニズムという特徴的なスタイル
バワ建築は独創的な「トロピカルモダニズム」と称され、自然を取り入れた開放的な空間が特徴的です。バワの建物は自然を中心に捉え、その場所によって作られることを意図して設計されています。バワは屋内と屋外の障壁を最小化することに努め、その結果、建物と風景が一つになることが可能になっているのです。
水平線に溶け込むかのような「インフィニティープール」
この例として有名なものが「インフィニティープール」。インフィニティープールとは、海側のプールの水面を水平線と平行にし、柵などを作らずに縁から水をそのまま流すことで、まるで水平線に溶け込むかのようにデザインされたプールのこと。
シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズの屋上にあるものが有名ですが、実はこのインフィニティープールの考案者がジェフリー・バワ。バワが設計したHeritance Ahungalla(ヘリタンス アフンガッラ)にあるプールが、初代インフィニティープールなんです。
現地のライフスタイルに合わせるから、心地よく自然に過ごせる
また、バワは“スリランカのライフスタイルにあう”デザインと様式を目指しました。例えば、傾斜屋根、張り出したひさし、ベランダ、中庭、ガラスのない窓など。これらは高い開放性、換気性、日当たりの良さを生み出すことで、現地の暑い環境のなかでも心地よく過ごせる空間を実現したのです。
実際、囲いのある中庭、ダブルスキン、格子の出窓など、バワのデザイン要素の一部は現在でもスリランカの住居に吸収されています。
自然との一体感が感じられる建築
2003年に83歳で亡くなるまで、故郷のスリランカをベースに活動した建築家、ジェフリー・バワ。土地の風土や文化を尊重し、自然と一体になることを目指した彼の建築には、他にはない安らぎが感じられます。アジアンリゾートの源流とも言われるバワリゾートへ一度訪れてみてはいかがでしょうか。