casa建築家シリーズの五十嵐淳氏が「HOUSE VISION 2」で表現した「窓断面」の拡張。

前回、前々回のレポートでも掲載した「HOUSE VISION 2」にはcasa nordの建築家である五十嵐淳氏が参加している。

8月9日には五十嵐淳氏やコラボレーションした家具デザイナー・藤森泰司氏、TOTO、YKK APの担当者でのトークセッションも催された。

五十嵐淳氏の作品とトークセッションも合わせてレポート。

五十嵐淳氏と家具デザイナー・藤森泰司氏とTOTO、YKK APがコラボレーション

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casa nordの建築家である五十嵐淳氏と家具デザイナーの藤森泰司氏が提案するのは、「窓」を単なる壁の開口部と考えるのはやめ、そこに新しい機能を仮想し空間の可能性を読み込み、家具を部屋から切り離した道具と考えず、空間と機能を同時に作り出す家具のあり方を模索した作品だ。

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中心の空間から放射状に伸びた空間が元々は「窓」と定義されていた場所だ。

とても窓という薄いものではなくて、それぞれが外部とも関係する縁側のような空間にも感じられる。

TOTOとYKK APとのコラボレーションですが、TOTOの商品が見つからないようにさりげなく置かれていたり、協賛YKK APのサッシが全然使われていないことも驚きだ。

だけれども、そこには純粋な建築の表現なんだろう。

「窓断面」を拡張して窓自体が家具や部屋のような場所に

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リビングの空間に入ると「窓」が美術館の絵画の額縁のように並んでいる。

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額縁のような「窓」を覗き込むと、アルコーブのようになった建築と家具の中間のような空間が見えてくる。

窓から飛び出したテーブルは、窓の向こう側では、床や椅子のようになって不思議な感じ。

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窓から飛び出たテーブルだったものが、窓の向こう側に別の用途と空間を作り出している。

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窓の奥、部屋とソファが一体となった空間は洞窟やほこらのようで安心感を感じられる場所で居心地が良さそう。

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窓自体に多様な空間が内包されていて、普段は見たことがない空間体験が可能だ。

トークセッションでデザインプロセスを知る

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19:00から行われたトークセッションでは作品のプロセスを公開し、初期のアイディアは展示されている作品とは全く異なる姿形だった。

2013年のトイレがフィーチャーされたような展示が、商品が今回あまりにさりげなく置かれることになったTOTOの担当者は「本来、便器はその存在に気付かれない程度が良い」と。

商品であるサッシが全く使用されていないYKK APの方は社長にどう説明しようと心配していたようだが、挑戦的な建築表現のこの作品を大変気に入ったようだ。

また、五十嵐淳氏は#casaで伺ったインタビュー同様に、スリランカのジェフリー・バワやマレーシアのガラスの入っていない開口部を引き合いに出して、数値的な目標を守ろうとする窮屈な社会や建築に対して、「快楽的に生きること」とそのための建築について強く話していた。

スペックを追い求める現代社会に疑問を抱き、すごく共感できることであると同時に「快楽的」な部分は五十嵐淳氏の作品の中にも感じられた。

 

行為と行為をつなぐ「窓」も興味深く、言葉や文字だけではない人間本来の感受性や、感覚を軸にした空間が広がっているようにも感じた。

くつろぎ・入浴・集中・ダイニング・睡眠などのアクティビティがそのまま五十嵐淳氏の言う「快楽」に繋がっているようで、言葉や空間の垣根を越えたユニークな中に人間哲学が隠されているようで興味深かった。

これからも五十嵐淳氏の作品にも注目したい。