建築家・服部大祐が万博で挑む「休憩」の再定義と直感力の哲学

前編:「本質を追い求める建築家」──服部大祐が語る家具、水辺、そしてスイスでの原点

現在は京都を拠点に活動し、国内外で多彩なプロジェクトを手がける建築家・服部大祐。2025年大阪・関西万博では来場者の憩いの場となる休憩所のデザインを担当し、その独自の発想で注目を集めました。今回は、万博のデザインに込めた思いに加え、建築家としての責任感や、人生を導くキーワードともなる「直感力」について語っていただきました。

京都を拠点に選んだ理由

現在は京都を拠点に活動されていますが、その理由はどういったものでしょうか。

「特に深い理由はなくて、昔からなんとなく好きでよく遊びに来ていたんです。海外から帰国して、次に住む場所を考えたときに『そういえば京都好きだったな』と思って」

実家を除けば3年以上同じ場所に暮らしたことがなかったものの、京都暮らしはすでに5年目に突入。「初めて“3年の壁”を超えました」と笑う服部さん。京都の魅力は、町のスケール感と古いものが残る景観だと語ります。

「東京や横浜に比べてコンパクトで、ヨーロッパの街に近い感覚があります。必要なものが自転車圏内で揃いますし、友人と食事に行くのも気軽。古い建物がたくさん残っているのも好きですね」

万博における「休憩」の再定義

服部さんは大阪・関西万博では休憩所のデザインを手掛けています。こちらのコンセプトを教えてください。

「最初に考えたのは“休憩とは何か”ということ。座ってくつろぐだけじゃなく、運動したり散策したりするのも休憩になる。だから、箱のような建物ではなく、ランドスケープの一部、広場のような休憩所を目指しました」

ゆるやかな丘とメッシュ屋根の組み合わせは、訪れる人それぞれが思い思いに過ごせる場となっています。

建築家として万博に参加する意味

開催前から賛否の声があった万博ですが、参加する意義をどう捉えていますか?

「批判するのは簡単です。でも建築は文化の一部であり、万博は新しい建築の実験の場。だからこそ、ここでしかできないことを示すのが建築家の責任だと思うんです同世代の建築家が多く参加していることも刺激になりました」

若手建築家20組が集う「新しい建築の当事者たち」

現在、南青山のTOTOギャラリー間で開催中の展覧会について教えてください。

「万博に関わる20組が集まって展示しています。個性がぶつかり合って“ごちゃごちゃ”しているんですけど、それが時代性を映しているとも思います。未来を見据えると、この中からどんな建築が残っていくのか。そう考えながら見ると一層面白い展示になると思います」

人生を導く「直感力」

自身の視点を軸に、他者や環境からの影響も柔軟に取り入れ、多くの人に愛される建築を生み出す服部さん。そんな服部さんにとってライフイズ◯◯の◯◯に入るものは何でしょうか。

「ライフイズ“直感力”ですね。建築の提案をするときは徹底的に考え抜きますが、最後は直感で決める。直感を信じないと絶対にうまくいかない。これは建築だけじゃなく、生きていく上で共通する感覚だと思います」

万博から日常へ──直感で導く建築の可能性

大阪・関西万博で休憩所のデザインを担い、その独自性で注目を浴びた服部さん。休む行為を“座ること”に限定せず、散策や運動も含めた新しい休憩のかたちを提案。ランドスケープと一体化した空間には、訪れる人の多様な過ごし方が広がります。批判を受け止めつつ建築の可能性を示すことを建築家の責任と語り、また人生観として「直感力」を大切にする。考え抜いた先に直感で決断する姿勢が、作品と生き方の両方を支えているようでした。