「ニュートラルであることを大切にしたい」um design代表のTOMOCOさん

デザイン事務所「um design」の代表で、建築の設計やプロダクトのデザイン、香りのデザインなどを提供しているTOMOCOさん。

今回は、TOMOCOさんのご自身のことや、代表を務めるum designについてなど、多方面にわたりお話を伺いました。

um design代表・TOMOCO

福岡を拠点に活動する空間デザイナー兼調香師。建築設計をベースに、香りや空気感、コンセプトといった“目に見えない要素”も大切にしながら、五感で感じる空間づくりを手がけている。デザイン事務所「um design」を主宰し、住宅や店舗などの空間設計に加え、展覧会の会場構成、香りのディレクション、オリジナルプロダクトの開発など、幅広いジャンルで活躍中。

ニュートラルであることを大切に

はじめに、TOMOCOさんが暮らしの中で大切にしているデザインについて伺いました。

「デザインをする上で大切にしていることは、ニュートラルであること意識しています。ニュートラルって自然体でいることだと思うんです。自分自身が自然体でいることで物ごとを自然体に捉えたり、素直に反応ができたりするのではないかなと思っていて、1番大切にしていることです。」

好きな場所はものづくりの現場

続いて、TOMOCOさんのお好きな場所や空間はどこでしょうか?

「ものづくりの現場が好きです。設計事務所に勤めていた経歴もあるのですが、その時代も現場がすごく好きでした。 今もプロダクトの開発をする際にも、必ず現場、作り手さんのところに行きます。伝統工芸の方の工場だったり、生産者の畑に行ったりだとか、生で見ることをすごく大事にしていて、ものづくりの過程を見たりということが楽しいですね。」

「um design」を始めたきっかけ

TOMOCOさんが主宰されるum design。建築や空間に対して香りをデザインされているということなんですが、始めたきっかけについて教えてください。

「元々大学では、建築デザインを専攻していました。卒業後に意匠系の設計事務所に14年間ほど勤め、保育園や学校、中小規模の設計や管理に携わっていました。そこで日々設計をする中で建築の素材や、空間のボリューム、フォルムを検討する中で、数字だけに捉われるのではなくて、人は目に見えないものも影響を受けたり感動したりすることもあるなと感じながら設計をしていたんです。その時に香りや調香という存在を知って、『あこれだ』と思いましたね(笑)香りって記憶がフラッシュバックをしたり、思い出したりする経験って誰もがあると思うんですけど、空間にも香りを使ってデザインすることで誰かの記憶に残ったり、空間を印象付けたりすることができるなと思ってワクワクして、これはやりたいと思いました。」

デザインで重要視すること

建築や空間に対して香りをデザインをされているわけですけども、重要視されているポイントはどこでしょうか?

「趣味趣向の好き嫌いみたいな香りもあると思うんですが、いわゆる主観でデザインするのではなく、客観的にということを重要視しています。なぜこのブランドの香りや場所をデザインするのかなど、目的をはっきりすることは大事にしています。」

香りのプロダクト「Emott」も手がける

TOMOCOさんは、Emottという香りのプロダクトを作っていますが、どのようなコンセプトですか?

「先週建築のお話をしたと思うのですが、建築空間の中で香りを繋げたいという想いがあって、どのようにしたらイメージしてもらえるのかなと考えていたんですが、実際に使って、感情が瞬間に動く体験をプロダクトにして理解してイメージしてもらいたいと思って作ったのがEmottの始まりですね。 Emottというのは感情をプラスにするという”Emottional +(プラス)というコンセプトがプロダクトのタイトルになっています。1日の時間をテーマに香りを作っていて、これを使った瞬間に気持ちを切り替えたり、リフレッシュしたりするアイテムとして作りました。 原料は、植物性の原料をのみを使っており、精油も天然のもののみを調香して作ったものになります。デザインは持ち運びやすいようにカードタイプにして、ビジネスシーンでも使っていただけるようなデザインにしています。」

サウナのロウリュ用オイル「 露 -LOW- 」について

サウナのロウリュ用のオイルも作られていますが、これはどんなイメージなんでしょうか?

「サウナで使用するために開発した“ 露 -LOW- ”というブレンドオイルになります。サウナの時間が、気持ちを落ち着かせたり、自分と向き合う時間、自分を大事にする時間だということをコンセプトにし、3種類の香りで表現をされています。」

「1つ目のYOYOは、葉っぱから抽出されるオイルをメインにブレンドしたもので、爽やかな朝のようなイメージで心と体が軽やかになるように作りました。2つ目のKIKIは、樹木の香りをベースに、深く呼吸をして静かな落ち着いた凪のような気持ちで自分と向き合い落ち着きを取り戻すようなイメージです。 3つ目のKAKAは、お花の香りをベースに、とても華やかな印象の香りに仕上がっています。女性の方にも心も体もポジティブな気持ちで、一枚ベールを脱いで新たな自分に出会う、美しくなるといったようなイメージを持っていただきたいなという気持ちで作りました。」

不定期で開催されるワークショップ

不定期でワークショップも開催されていますが、どんなことができるのでしょうか?

「直近では熊本にあるライフスタイルショップで、天草陶石という断面がすごく綺麗な石をガラス容器に閉じ込めたディフューザーと調香のワークショップを行いました。ご自宅に持って帰って、ご自身で作った香りをそのディフューザーに垂らして楽しんでもらえたらと考えたワークショップ企画になります。」

「来月の8月3日には、建築的にも素晴らしい日本家屋がある久留米にある日果という和菓子屋さんで、定期的に開催しているワークショップが行われます。空間を楽しみながら季節を味わう調香のワークショップで、甘味もいただけますのでぜひお越しください。Instagramから告知をしていて、申し込みフォームを都度お作りしていますのでそこから問い合わせてください。」

暮らしの中の香りを大切にしながら新しい香りも楽しむ

TOMOCOさんの影響で香りに興味を持ったり、考え始めたりする人が増えると思うのですが、香りに関してどのような環境になったら良いなと思いますか?

「香りは、香らせるものというイメージをお持ちの方が多いなと感じています。私としては日常の暮らしの中にたくさん香りって実はあると思っていて、食事や季節の移り変わりで花の香りがふわっとしてきたり、人の匂いなどもいろいろなものがある中でその一つになれたらいいなと思っています。暮らしの中にある香りを大切にしていきながら、新しい香りも楽しんでもらえるような環境が一番いいかなと思っています。」

Life is 塩梅

インタビューの最後、TOMOCOさんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると、「Life is 塩梅」と答えてくれました。

「塩梅という言葉は、料理の味加減だったり、物事の具合など色々な意味で使われますが、私の人生で1番しっくりくる言葉かなと思っています。デザインの仕事でも調香の仕事でもそうなのですが、必ずしも正解が正解ではない。その人、その物にとっての最もちょうど良い塩梅を見つけるというところ、程よい距離感を作ることが答えなのかなと思います。」

「ニュートラルであることを大切にしたい」um design代表のTOMOCOさん

「ニュートラルであることを大切にしたい」。そう語るTOMOCOさんの言葉には、自然体でいることの美しさと、感性にまっすぐ向き合う誠実さがにじんでいます。空間と香りを通じて、私たちの暮らしにそっと心地よさを届けてくれるTOMOCOさん。今後の活動からも目が離せません。