
ロサンゼルスにある「ルドルフ・シンドラー自邸」で斬新な住宅設計を垣間見る
オーストリア・ウィーン出身でさまざまな経験を経てアメリカに移住したルドルフ・シンドラーは、1920年代から1940年代のロサンゼルスで100以上もの住宅設計を手掛けました。1922年には「シンドラー自邸」をロサンゼルスのウエスト・ハリウッドに建設しました。今までにない新しい概念を取り入れたこの住宅は、建設されてから100年以上経過した今でも多くの学びを得ることができます。
2家族のプライバシーを守りつつ、共同スペースが存在するシンドラー自邸」
2家族用住宅の「シンドラー自邸」には、シンドラー夫妻と友人のチェイス夫妻がともに住んでいました。
L字型の「シンドラー自邸」は各自の自宅兼スタジオと中庭に加え、共同キッチンやランドリールームを設けて2家族で家事分担ができるようにしていました。
アトリエにはスライド式のキャンバス製パネルを開くと中庭に通じるようになっており、この中庭には各家族のプライバシーが守られるように背の高い生垣を設けました。アトリエの中では部屋の奥まで光が入り込めるようにパネルの上に帯状の高窓が取り付けられています。屋内のコンクリート床と中庭の高さが同じなので、屋内と屋外がシームレスにつながっていて動線をスムーズにしています。
当時では斬新なコンクリートの使用法
今でこそ普通に使用されているコンクリートスラブは、「シンドラー自邸」完成時は大変めずらしいものでした。地面に直接コンクリートを流し、さらに床に塗装をして仕上げたりはせずに生コンクリートを単純に磨いただけと言う使用法は当時ほとんどありませんでした。
また、壁も木造ではなくコンクリートパネルを使用しており、コンクリートの壁と床に対して腐食に強いと言われる天然のセコイアの木の屋根と言う対照的な素材で屋内の雰囲気を和らげています。
コンクリートパネルの狭い隙間が窓となっており、屋内のプライバシーを保っています。現代で見かけるコンクリートの使用法は、時代に先駆けたシンドラーによる斬新なアイデアから来ているものかもしれません。
屋外ですら居住する場所として捉えた
「シンドラー自邸」は屋内に寝室が一つもないことも特徴的です。2家族はエントランスの上に設けられたスリーピング・ポーチと呼ばれるロフトで睡眠を取っていました。
シンドラーは屋外に住むと言う斬新なアイデアを取り入れた結果、寝室と暖房を外に設置するに至りました。まるで屋外エリアがキャンプ場であるように考えられた「シンドラー自邸」は、私たちの常識をはるかに上回るアイデアに満ち溢れた場所です。
「空間」と「気候」を活かした「シンドラー自邸」
シンドラーは「空間」と言う言葉を建築の世界で最初に使用し、「空間」が建築で一番大切だ、と言い出した人物でもあります。またこの「シンドラー自邸」は、雨の少ないロサンゼルスの気候を活かして取り外し可能な引き戸を採用し、屋外で眠ることを提案して家の屋内と屋外の差を完全に排除しました。「空間」と「気候」を活かしたからこそ、この「シンドラー自邸」は今までの住宅の概念を大きく変えて、今なお多くの人たちの関心の元になっているのかもしれません。
シンドラー自邸
住所:835 Kings Rd, West Hollywood, CA 90069 アメリカ合衆国
電話番号:+13236511510
営業時間:11:00~16:00(月曜日・火曜日休館)
URL:https://www.makcenter.org/