
建築家・工藤浩平が手掛けた都市の隙間に広がる豊かな空間「方南町の家」
建築家・工藤浩平による、東京の住宅密集地にひっそりと佇む「方南町の家」。この住まいは、限られた敷地条件の中で開放感と心地よさを生み出すことを目指されました。都市ならではのゆとりのない住宅街のなかでも、建築家ならではの自由な視点で、のびのびと過ごせる空間に仕上げた一軒です。
狭小敷地ならではの挑戦

「方南町の家」は、周囲を住宅に囲まれた密集地に建っています。日照やプライバシーの確保が課題となる中で、光と風を巧みに取り込む工夫が施されています。限られたスペースを最大限に活用することで、閉塞感を感じさせない空間づくりが求められました。そこで、敷地東側に庭を設けたうえで、建築面積が最大となるよう地下1階地上2階建てのヴォリュームを配置するプランが導かれました。
シンプルさの中に込められた美学

外観はガラスを多用したオープンなデザインが特徴です。無駄を削ぎ落としたミニマルなフォルムが、周囲の景観に溶け込みながらも存在感を放ちます。

大きな窓が数多く配置され、内部への自然光の取り入れと外部との視覚的なつながりを強調しています。
自然光と開放感あふれるプラン

室内は、地下水位近くまで掘削した地下空間をもち、スキップフロアとすることで光や風を取り込みつつ、周辺との距離感を調整されました。

地下にベッドルーム、1階にLDK、3階に個室と水回りを配するプランによって、プライバシーを確保したい空間を緩やかにわけ、オープンなデザインの建築ながら落ち着きが感じられるよう工夫されています。

内部は白を基調としたシンプルな内装でまとめ、淡い色味のフローリングを採用することで、都市の喧騒を忘れさせる、静謐で落ち着いた空間を演出しています。

「方南町の家」で特徴的なのは、スキップフロアを活用した開放的な設計です。スキップフロアによって空間に立体的な広がりが生まれ、視覚的にも豊かな変化が楽しめます。

また、ところどころに設けられた大きな窓によって室内外の境界が曖昧になり、開放感を生み出しています。3階の個室には書斎が設けられ、読書を楽しんだりリモートワークに集中したりと多用途に活用できる空間です。

さらに、視線の抜けを意識したレイアウトが、狭小住宅とは思えない広がりを感じさせます。
都市生活に豊かさをもたらす「方南町の家」
「方南町の家」には、都市の限られたスペースの中で豊かな暮らしを実現するための工夫が詰まっています。光と風を取り入れ、開放感と機能性を両立させたデザインは、都市住宅の新しい可能性を示しています。人口が集中する都市のなかで、快適で心地よい生活空間を提供するユニークな住まいのかたちです。