隈研吾が手がけた東日本大震災を後世に伝える宮城県南三陸町の伝承館「南三陸311メモリアル」
2022年10月に宮城県南三陸町に誕生した、東日本大震災を後世に伝える伝承館「南三陸311メモリアル」。
国立競技場を手掛けた建築家・隈研吾が設計を担当し、「海と山、過去と未来を繋ぐ船」として防災と共存しながらも海と陸が切り離されないようなグランドデザインがイメージされ、建物には南三陸杉がふんだんに使用されています。
隈研吾が設計を担当した「南三陸311メモリアル」
2011年3月11日に発生した東日本大震災で、壊滅的な被害を受けた宮城県本吉郡南三陸町。震度6弱を観測し、浸水深が最大20mを超える津波により多くの方々が犠牲となりました。
そんな南三陸町に、2022年、道の駅「さんさん南三陸」内に、東日本大震災を後世に伝える伝承館「南三陸311メモリアル」が誕生しました。館内は、有料・無料のエリアに分かれており、地域住民の証言等の展示をはじめ、シアター、アート展示から構成されています。
木製のルーバーで覆われた外観
こちらが、南三陸の杉でできた木製のルーバーで覆われた外壁の「南三陸311メモリアル」です。重なり合う木材たちが、視線を遠くに導かせ、奥行き感や立体感を演出しています。
「船の舳先から復興の様子を見てほしい」という意図を込められた外観。イメージ中央の通路は、南三陸内さんさん商店街へと続く作りとなっており、南三陸さんさん商店街の鳥居のようにもなっています。
船の舳先のようにデザインされた箇所からは、海を臨む展望デッキが配置されています。展望デッキからは、被災当時の姿を残した「旧防災対策庁舎」や「南三陸町震災復興祈念公園」を見渡すことが可能です。
南三陸町の被害状況を基にした館内
「南三陸311メモリアル」内は、南三陸町の被害状況をデータを基に展示が行われています。さらに、写真家・浅田政志をはじめ、町民たちが協働で創り上げた写真作品も展示されており、当時の津波到達地点や、実際にどのような被害があったのかなど、震災時の様子が鮮明に感じられます。
その他にも、フランスの現代美術家・クリスチャン・ボルタンスキーのインスタレーション空間も設置。被害によって犠牲となった方々たちのことを想いながら、心を静寂に空間と向き合うことができます。
中橋も隈研吾がデザインを担当
そして「南三陸311メモリアル」や「南三陸さんさん商店街」の先にある中橋。この中橋も、隈研吾がデザインを手掛けました。上弦材と下弦材で、レンズのような形の歩行者専用の橋で、川の向こう側へと進むと、「南三陸町震災復興祈念公園」へと続く動線となっています。
多くの人が犠牲となった「旧防災対策庁舎」は、震災遺構として当時のまま残っています。津波の影響によって、剥き出しとなった鉄骨の様子を見ることができます。
隈研吾が設計を担当した、日本大震災を後世に伝える伝承館「南三陸311メモリアル」
南三陸311メモリアルを訪れた人々からは、「テレビやネットなどからでは感じ取れない感覚を感じることが出来ました」「災害についての記憶をなくさせず、かつ防災について考えさせられるとてもいい施設でした」との声が寄せられています。日本中の人々に大きな影響を与えた東日本大震災。犠牲者に想いを寄せ、震災の記憶を忘れずに、後世に伝え継ぐ施設として、今後も訪問者の心を揺さぶる施設となることでしょう。
南三陸311メモリアル
住所:宮城県本吉郡南三陸町志津川字五日町200番地1
営業時間:午前9時〜午後5時
HP:https://m311m.jp/