「家づくりへの固定概念を解除したい」建築家・内山里江の初の著書に込めた想いや住まいづくりのポイントについて

「家を単なる休む場所ではなく、遊べる場所に」をモットーに、のべ2000棟以上の建築の設計・デザインを手掛けてきた建築家、株式会社コモドデザイン代表・内山里江さん。ご自身初の著書「家は南向きじゃなくていい」(講談社、2024)では、これまでの家づくりの常識を覆すような内山さんならではの核心をついた空間づくりのコツを紹介されています。今回はそんな内山さんに、著書に込められた想いや理想の住まいづくりのポイントについて伺いました。

家を持つことで暮らす人も変わる

内山さんはこれまでに2000棟以上の設計・デザインを手掛けていらっしゃいますが、これまでで特に印象に残っている物件を一つご紹介頂けますでしょうか。

「設計自体が難しくて記憶に残っているものももちろんありますが、実際に暮らし初めてからのお客さまの変化で気付かされることも結構ありますね。あるお住まいでは、それまではご主人があまり家事に協力的ではなかったのですが、ご自身の家ができた途端に、お掃除したりちょっとでもインテリアが乱れたら整理整頓をしたりと、びっくりするくらいの綺麗好きになったことがありました。家を持つということはここまで人を変えてしまうのかと、特に印象に残っている物件ですね(笑)。」

家づくりにまつわる固定概念の解除をしたい

建築家・内山里江の著書『家は南向きじゃなくていい』

内山さんは今年4月に「家は南向きじゃなくていい」という本を出版されました。家づくりに関しては「玄関はこの方角にするといい」とか、「この位置に南天を植えると縁起が良くなる」など、昔からの言い伝えのような考えが色々ありますよね。この本のタイトルはまさにわたしたちが知っている常識の真逆のようにも思えるのですが、こちらはどういった意図が込められているのでしょうか。

「おっしゃって頂いたように、世の中の家づくりへの固定概念がすごく多くて、それら固定概念の解除をしたいと思ったんです。本の中では『もっと自由で楽しい家づくりができるんだよ』ということを盛り込んでいるので、伝えたいことを集約した言葉として今回のタイトルにさせて頂きました。」

確かに、わたしたちが常識と思っていることでも、実はそうとも言えないことってたくさんありそうですよね。他にはどういったことがありますか。

「数えきれないくらいたくさんあるのですが(笑)。最近多いのは収納を一つのキーワードとして重視している方が多いと思うのですが、収納っていっぱいあればあるほどいいってわけじゃないんです。何をどこにしまうのか、といった計画性がないと、収納は悪魔のスペースになりがちなんです。なので、自分にとっての適材適所をちゃんと理解して収納計画をする、ということが実際の収納スペースよりとても大事だったりします。実は収納がいっぱいあるということは、自分にとっては必要のないもの、ゴミを溜めてしまう場所をたくさん作ってしまうことなんだ、というような感覚を持って頂くと無駄のない効率的な住まいづくりに繋がるかと思います。」

広さではなくて、自分の理想に優先順位をつけることが大切

この番組のリスナーの中には、これから家づくりを考えている方もいらっしゃると思いますが、建築家というお立場から何かアドバイスを頂けますでしょうか。

「家を作る際に『3LDKは最低限必要』とか『リビングは20〜30畳は欲しい』とか、根拠のない固定概念に捉われている方が多いと感じています。そうではなくて、実際の数字よりも人がそこに広がりだったり快適性を感じるということが大事なんです。あまり数字に捉われずに、自分はどんなことを家で実現していきたいのか、何が好きなのか、何をそこでしたいのか、といった感覚的な自分の理想について考えながら、その優先順位を整理していくと、自分にとってすごく大事な空間というものが出来上がっていくんじゃないかと思います。」

内山さんが設計された作品をホームページで拝見しましたが、リゾートのようなデザインの素敵なお家がたくさんみられますね。

「見た目のデザインと言っても好きな感覚は皆さんそれぞれなので、そういった住む人の愛着が湧くような家を手に入れて欲しいと思いますので、コンセプトからデザインといった見た目の美しさまで、ご自身の好きを追求して頂きたいと思います。」

家づくりも人生も自由

固定概念に縛られずに、ご自身のライフスタイルに合わせた住まいづくりを目指すことが大切だと語る内山さん。そんな内山さんにとってライフイズ〇〇の〇〇に入るものは何でしょうか?

「私にとってはですね、ライフイズ“フリーダム”。家づくりはもちろん、人生は自由だということを意識して日々過ごしています。」

自由な発想でより良い住まいを形にする

ご自身初の著書「家は南向きじゃなくていい」ではこれまでの家づくりの常識の真逆をいくような斬新な空間づくりのコツを紹介している内山さん。周りに流されることなく、個人個人の好きを見つめることで、家族それぞれに合った理想の住まいを実現されています。後悔のないマイホームのためにも、まずは内山さんの著書で家づくりへの視野を広げてみるのはいかがでしょうか。