「自分のこだわりを見つけることから住まいづくりが始まる」建築家・山田紗子が語る自宅のデザインコンセプトと家づくりのポイントについて

前編: 「人と自然との良い関係を建築で生み出したい」建築家・山田紗子が語る大切なデザインや建築家になったきっかけについて

藤本壮介建築設計事務所からの独立後、「新しい価値観を創造する」をモットーに、慣習にとらわれないユニークな造形や構成の建築の数々を提案している建築家・山田紗子さん。2025年開催予定の大阪万博では、会場の休憩施設の設計も担当されています。今回は山田さんに、ご自宅のデザインコンセプトや家づくりのポイントについて伺いました。

家と庭が一体化したようなオープンな自宅

Photo : Yurika Kono | 建築家・山田紗子によるゴリラの暮らしにヒントを得た、都市のなかの森のような自邸「daita2019」

山田さん家族と両親の3世代5人が暮らす住まい「daita2019」のお写真を拝見しましたが、お庭が立派で植物園のような印象でした。こちらにはどのような想いが込められているのでしょうか。

「父がずっとマンション暮らしだったこともあって庭のある一軒家の生活に憧れていて、一緒に家を作るのであればお庭が欲しいよね、ということで庭のある住宅を目指しました。ただ庭があるのではなく、家全体がお庭と一体の空間になっていて、家の中にいても庭の中にいるような、ひとつの空間として作ることができたらいいなと思って現在の形にたどり着きました。」

Photo : Yurika Kono | 建築家・山田紗子によるゴリラの暮らしにヒントを得た、都市のなかの森のような自邸「daita2019」

外からはお住まいに見えないような、自由に入ってよさそうなオープンな雰囲気が感じられます。ご自宅での暮らしぶりはどのような感じなのでしょうか。

「子どもがいるので近所の子が朝の登校前や放課後に集まってきて、家の内外を登ったり降りたり、公民館のように自由に場所を見つけて過ごしています。みんなで遊んだり、1人で遊んでる子もいたり。」

ドイツでの経験も生かされているのでしょうか。

「うちの家族も人の出入りにオープンというか、子どもの友達が多い方が楽しいということもあり、子どもの出入りが日常的な風景になっています。」

動物の世界に人がすっと入り込んだような空間にしたい

現在、大分県にある牧場のリニューアル案件が進行中とのことですが、こちらのプロジェクトについて伺えますか。

「大分県の九重にある、やまなみ牧場という昔からある牧場があるのですが、来年のリニューアルオープンに向けて設計を進めているところです。リニューアルにあたって、人が羊や馬などの動物たちの住んでいる世界に入り込むようなイメージを目指しています。宿舎や牧草地といった環境を一体化して、まるで夢の中にいるように、動物たちと一日中一緒にいられるような場所になる予定です。」

牧場を担当される経験はなかなかないと思うのですが、楽しそうなプロジェクトですね。

「もともとランドスケープデザインを学んでいたこともあり、牧場という人工的であり自然の環境も生かされた融合的なありかたはかねてから興味があったので、そういった意味でも楽しいプロジェクトですね。」

自分のこだわりを見つけることが家づくりの第一歩

Photo : Yurika Kono | 建築家・山田紗子による暮らしが溢れる螺旋階段が結ぶ二階建の住まい「waseda」

リスナーの中には住まいづくりを考えている方もいらっしゃるかと思いますが、建築家という立場からアドバイスを頂けますか?

「自分の家づくりは、一生に一度しかないとても楽しい体験になると思います。自分の一番こだわっているポイントは何なのか、家族や建築家などのプロフェッショナルと話し合いながら、理想の家の形を見つけていければいいなと思います。」

素人なのにこんなこと言っていいのかな、と心配される方も実際は多いのではないでしょうか?

Photo : Yurika Kono | 建築家・山田紗子による暮らしが溢れる螺旋階段が結ぶ二階建の住まい「waseda」

「住宅をつくるにあたって、施主さんのこだわりやちょっと変わっている部分、その家族にしかない習慣など、そういった個性はとても大切だと考えています。日常でのこだわりなどを話しながら、『ご家族のための家』を叶えて頂ければと思います。」

鮮やかな絵のような人生になればいい

ランドスケープの視点を取り入れることで、周囲とのポジティブな関係性を生み出す建築を提案する山田さん。そんな山田さんにとってライフイズ〇〇の〇〇に入るものは何でしょうか?

「“ビビット”ですかね。人生、暗いところも明るいところもあるけど、そのコントラストが面白いと思っていて、色々なことを含めて最終的には鮮やかな絵になるようなものとして、今は考えて行けたらいいのかなと思っています。」

緩やかな繋がりが暮らしを楽しくする

ご自宅にはお子さんのお友達が気軽に遊びに来ると語る山田さん。誰に対しても開かれたオープンな空間だからこそ、新たな出会いや発見が生まれ、人を惹きつける魅力となっているようです。山田さんの生み出す空間が人気の理由がそこにあるのかもしれません。