スペイン・バルセロナにあるプリツカー賞受賞建築家集団・RCRアルキテクタスによる「サン・アントニ図書館」

スペインの地中海を臨む最大の港湾都市バルセロナにあるサン・アントニ地区。ここに建築家集団「RCRアルキテクタス」が手がけた図書館建築「サン・アントニ図書館」が存在する。

カタルーニャ出身の建築家3名による建築家集団「RCRアルキテクタス」とは?

「RCRアルキテクタス」は、スペインの小さな街・カタルーニャ地方オロットで活動を続ける、ラファエル・アランダとカルマ・ピジェム、ラモン・ビラルタの3人の建築家によるユニットだ。

2017年にプリツカー賞を受賞し、プリツカー賞史上初「3名が同時受賞」という偉業を成し遂げたことでも世界中から知られる。まさに今、最も注目を集める世界建築家の1組なのだ。

ランドスケープと独特な素材使いが特徴的なRCRアルキテクタス建築

「RCRアルキテクタス」の建築作品の特徴は、大きく分けて2つある。1つ目は、屋内と屋外をつなぐようなアプローチの建築設計だ。ランドスケープを深く考察したデザインが美しくも巧みである。建築と敷地との関係性や自然環境を生かしながら、それらを両立させた作品の数々は、パブリックを中心とした施設でも幅広く起用され、高い評価を集める。

2つ目は、リサイクルされた鉄やプラスチック、スチール素材を使ったデザイン力。近代的な素材を上手く使いこなし、シンプルさだけでなく力強さをも感じられる空間づくりは、まさに圧巻だ。

人の流れを呼び込み、憩う「サン・アントニ図書館」

スペイン・バルセロナの中にあるサン・アントニ図書館。間口は大きくなく、至って普通の通りに面しているが、中庭に向けて大通路を作ることで動線が生まれ、敷地に人の流れを呼び込むように作られている。

元々、この図書館があるサン・アントニ地区は「それほど治安が良くない場所」としても認知されており、この地区固有の環境を意識しながら、外から中への導線を考えられていることが想像できる。このアプローチこそ、ずばり「RCRアルキテクタス」。そう考えずにはいられない設計だ。

中庭側の外観は、黒の鉄格子が印象的

中庭は非常にパブリックな公園としても機能していて、子供達も集う遊び空間。公園に面した外観はガラス面の上に折り曲げられた鉄のルーバーが当てられ、緩やかに外部とを隔てている。

スチールとガラス素材で創られた、道路側の外観

道路に面した真っ黒な外観はガラスで包まれ、内部の様子が伺える。「街のブロックごとに閉鎖的」なバルセロナの街の中で、人を呼び込むのに有効な手段だろう。

隔たりを感じさせない、ガラス張りの図書館内部

図書館内へ入ると、ガラス張りの心地良い空間が広がる。「RCRアルキテクタス」らしい無機質な素材をシンプルに使ったデザインで、正当に作られたモダンな空間。まさに図書館としての「落ち着き」の中で、地域への解放感をも両立している。

「吹き抜け」をダイナミックに使った「繋がる空間」

サン・アントニ図書館の各階は、大きな吹き抜けで繋がる。空間全体にオープンな印象を与えるだけでなく、大階段などの操作も相まり、どの空間にいても外光が入る。これにより「奥まる場所」がない、市民に解放された「パブリック施設としての機能性」を高めている。

地域固有の特徴に寄り添って作られたモダニズム的建築

RCRアルキテクタスの建築は、モダニズムを感じさせながらも、現代的なリサイクル素材・幾何学を駆使して近代建築の高みを感じられる。ただデザインするだけではなく、RCRアルキテクタス3人の能力が統合され、どの部分にも抜かりない設計・デザイン技術の賜物だ。

その土地の関係性・特有性をしっかりと考慮しながら、パブリック施設としての機能性を意識した「サン・アントニ図書館」。RCRアルキテクタスは、建築界だけでなく、街や未来に対しても良い影響を与えるような建築物を作り上げたのである。

Biblioteca Sant Antoni Joan Oliver – サン・アントニ−ジョアン・オリバー図書館

URL : http://ajuntament.barcelona.cat/biblioteques/bibjoanoliver/ca
住所:Carrer del Comte Borrell, 44, 08015 Barcelona, Spain