美しい幾何学で構成される神戸の美術館。建築家・安藤忠雄による「兵庫県立美術館」
神戸市水際広場の隣にある兵庫県立美術館は、日本を代表する美術館の一つです。有名建築家である安藤忠雄氏が設計を手掛けています。展示されている美術作品の見学はもちろんのこと、迫力のある外観から建物自体の見学者も次々と訪れている場所です。建築的にも珍しく、二重被膜などの変わった設計方法を用いているのも特徴になります。
文化の復興のシンボルとして2002年にHAT神戸にオープンした「兵庫県立美術館」
神戸市水際広場の隣に建つ兵庫県立美術館は、1995年に発生した阪神淡路大震災の文化の復興のシンボルとして建てられた美術館です。2002年4月に神戸東部新都心に建てられた美術館で、年間90万人もの来場者を迎え入れています。大震災という大きな出来事をきっかけに人々の心は傷つき、疲れ始めていました。
そんなときに兵庫県が人間の心の豊かさを取り戻したい、特に未来を担う子どもたちの感性を守っていきたいという気持ちからこの美術館の建設計画が立ち上がりました。芸術に触れることで兵庫の人々を元気付けたい、心の豊かさを取り戻してほしいという願いが込められているのです。
安藤忠雄建築らしい幾何学的な美術館建築
兵庫県立美術館は安藤忠雄らしい幾何学的な造形のコンクリートを多用しています。直方体3つとコンクリートで構成された建物で、安藤忠雄氏の作品の中では比較的シンプルな外観です。コンクリートの打ちっぱなしは冷たいような印象を受けますがそこはきちんと計算されていて、近くの海の風や青空から降り注ぐ太陽光を受けて時折優しい表情を見せてくれます。
コンクリートの打ちっぱなしは一見単純な見た目になっていますが訪れる時間帯や季節によって少しずつ表情が変わり、来場者たちを驚かせます。
多様な風景が存在する内部空間
安藤忠雄が手掛ける美術館ということもあり、内部空間は見どころが多くあります。
これから美術作品を集中して見られるような気持ちにさせてくれる落ち着いた見た目のエントランス、自然光が降り注ぐ展示室を囲んでいる廻廊などがあります。
美術館の内部からは兵庫の美しい海も眺めることができ、様々な風景を楽しめるのです。
地下1階から地上2階を屋外で繋ぐ円形テラスは無機質なコンクリートが特徴的です。
美しい螺旋状の階段がフォトジェニック。
屋外に広がる青い海と広い空とのギャップが楽しめ、不思議な気持ちにさせてくれます。
3階の企画展示室に繋がるエレベーターホールはピラミッドの内部のような複雑な造りです。4階の屋外スペースにある風のデッキは海側と山側に分かれていて、海側には兵庫の運河や近代的な商業施設が、山側には六甲山が見られます。綺麗な景色が広がる空間ということもあって、ファッション雑誌の撮影にも使われているのです。
ガラスとコンクリートの二重被膜に囲まれた展示空間
兵庫県立美術館の展示空間はコンクリートの壁をガラスの被膜が覆うという二重被膜の構造になっています。この二重被膜にすることで屋内に居ても自然を感じることが出来るのです。建物の外で風が吹いたら感じることが出来たり、日が差して来たらなんとなく分かったりと不思議と外の様子が手に取るように分かります。
自然との融合を大切にしている兵庫県立美術館ならではの設計方法です。あえて室内でも外の様子が分かるようにすることで閉鎖的なイメージのある展示室を開放的な空間にして、明るいイメージに近づけています。
この二重被膜の設計方法はドイツのランゲン美術館でも採用されている設計方法で、この美術館の設計にも安藤忠雄氏が携わっています。兵庫県立美術館のように自然との融合をコンセプトにした美術館で、館内に居るときにも外の様子が分かるようになっています。
安藤忠雄自身の作品を展示する「Ando Gallery」
2019年の増築時にオープンしたのが、第2展示棟「Ando Gallery」です。展示スペースや展示作品の充実を目的として建設されました。安藤忠雄氏の今まで手掛けてきた建築物の模型が飾られていて、安藤氏のこれまでの活躍が分かるのが魅力です。常設展示では阪神淡路大震災からの復興プロジェクトの立ち上げや震災の記録、復興までの道のりなどの展示が行われています。
建築的にも見事な美術館
日本の近代的な美術作品や兵庫県に関わりのある作品を多く取り扱っている兵庫県立美術館は建築物としても優れた設計方法が採用され、訪れる人たちを驚かせ続けています。ぜひ一度足を運んでみて、安藤忠雄氏ならではの独特な感性の設計方法を楽しんでみてください。
兵庫県立美術館
開館時間: 10:00~18:00(金曜と土曜は10:00〜20:00)
休館日: 月曜日
URL: https://www.artm.pref.hyogo.jp
住所: 兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1