建築家・保坂猛による7つのバルコニーが生み出すコミュニケーションを楽しむ住まい「BALCONY HOUSE」
東京建築士会住宅建築賞を受賞した自邸〈LOVE HOUSE〉や、日本建築仕上学会にて作品賞を受賞した〈ほうとう不動 東恋路店〉など幅広いジャンルの空間設計を手掛ける建築家・保坂猛。保坂さんが主宰する保坂猛建築都市設計事務所による、東京都台東区に建てられた住宅〈BALCONY HOUSE〉は、屋内に点在するバルコニーが家族の毎日を楽しくさせてくれる住まいです。
下町ならではの軽やかなコミュニケーションをヒントに
敷地は情緒溢れる東京の下町。日頃からバルコニーや窓から気軽に住民同士で声をかけるコミュニケーションが行われていました。そこで、通常は窓の外側に張出すバルコニーを、窓の内側に張出させるプランが導かれました。屋内にも屋外にも繋がる、開放的で人との繋がりも感じられるバルコニーがこの住宅の特徴です。
仕切りのない箱形に
白いシンプルな箱型のボリュームから、南側に軒のように突き出しているのはカーポートと小さなバルコニー。通常車高に合った屋根が設置されるカーポートですが、建築の屋根に合わせることでバルコニーにもかかり、雨天時でも洗濯物を干したり窓を開けて換気ができます。さらに土間部分は、自転車の整備や子供の遊び場にもなり、隣家のバルコニーから声がかかるコミュニティスペースにもなります。
玄関から室内へ入ると現れるのが複数設けられたバルコニー。
1階部分にはLDKが配され、それを上から囲むように、寝室バルコニーや子ども室バルコニー、客間バルコニーなど部屋としての機能を持つものから、フリーバルコニーまで様々なバルコニーが設けられています。
ベッドバルコニーから「起きる時間だよ〜」と声をかけ、「おはよ〜」とキッチンに向かって手を振る。同じ空間にいながら、コミュニケーションが楽しくなるような距離感を生む居場所が点在しています。まさにご近所さんがバルコニー越しに会話をするような、下町の路地風景が屋内にも現れたのです。
バルコニーは全てタイル張りで屋外感を演出しています。窓の外には道路や車が見えるのに、バルコニーは内側にあるという不思議な空間。建築正面に位置するフリーバルコニーは掃き出し窓なので脚を投げ出すこともでき、アスレチックのようなワクワクを感じさせてくれます。
下町ならではの人との距離感を、建築の内外で楽しむ住まい
この地元で生まれ育ったというオーナー。親戚や幼なじみ、古くからの知り合いが多く住む下町の雰囲気を取り込んだ結果、導かれた内外に繋がるバルコニーが、建築の内外でコミュニケーションを生み出す住まいとなりました。窓辺の気持ち良さを各所に散りばめた、楽しく心地の良い住宅です。