建築家・保坂猛による光も雨も取り込む、自然とともに開放的な暮らしを楽しむ住まい「INSIDE OUT」
東京建築士会住宅建築賞を受賞した自邸〈LOVE HOUSE〉や、日本建築仕上学会にて作品賞を受賞した〈ほうとう不動 東恋路店〉など幅広いジャンルの空間設計を手掛ける建築家・保坂猛。保坂さんが主宰する保坂猛建築都市設計事務所による〈INSIDE OUT〉は、東京都葛飾区に建つご夫婦と3匹の猫のための住宅。家の中にもう1個家があるような構成で、住宅内に太陽の光や雨風が入る、外部空間が家の中にあるようなユニークな建築です。
人間も猫も、自然とともに開放的な生活をする住宅
計画は、人間のために設計された家に猫が住むのではなく、人間と猫が同じ家に住むというアイディアをベースにスタート。最終的に「屋内でも屋外を感じられる家」というテーマに着地し、設計が始まりました。
開口部で外と繋がる白い箱形の建築
建物は大小6ヶ所の開口部を持つ白い箱のような形状。
南北2棟にわかれており、北棟がLDKや寝室など生活を行う「屋内の家」、南棟が工作室やフラワールームといった趣味のための「屋外の家」となっています。屋外の家はさらに中央の吹き抜け空間を挟んで東西に部屋を配置しており、雨、風、光すべて素通しの開口部を持つ部屋や、屋上テラスなど半屋外の空間を主として構成しています。
屋内の家は南側に大開口を設けているものの、屋外の家が緩衝帯となっているため、隣地の視線を気にせず生活することができます。
日々移ろう自然を取り込む暮らし方
屋内では光はもちろん雨や風も入り込むため、その日の暮らしは天気に大きく左右されます。そうした自然の存在が日々の生活を刺激し、ポジティブに過ごそうと動かすのです。雨で濡れるエリアは風向きによっても大きく変わるため、濡れないところを都度探したり、過ごす時間が長くなるにつれ経験的にそうしたエリアがわかるようになるはずです。
猫は雨に濡れていない部分を選んで歩いたり、晴れた日には日向が心地よいスポットを選んで昼寝をしています。住宅にはエアコンがないため、真夏でも自然通風の環境下で過ごすことになります。風が強い日や肌寒い日には、ガラスの引き戸で囲まれたリビングなどの空間で過ごします。
オーナーのお気に入りのフィギュアや雑貨などのコレクションは屋内のみならず屋外の棚にも飾られ、お気に入りのアイテムを眺めながら、心地の良い風が吹く中で飲むビールを楽しんでいるようです。
これからの暮らし方を提案するユニークな住宅
現代に生きる人々は、エネルギー消費を減らし、自然と共存するための暮らし方を探索する必要があります。〈INSIDE OUT〉は人間視点での住宅のあり方を超え、自然と共に住まうことの楽しさが感じられる住宅。エネルギー問題はもちろん、これからの私たちにどのような暮らし方が可能であるかを提案した住まいです。