【ミラノデザインウィーク2023】世界最大規模の家具見本市ミラノサローネから振り返る2023年インテリアトレンド

毎年イタリア・ミラノで開催される世界最大規模の家具見本市ミラノサローネ。第61回となる今回は、新型コロナウイルスの流行以降4年ぶりとなる4月開催となり、予想をはるかに上回る307,000人以上の来場者を記録しました。今回は世界中から集まったブランド・デザイナーの展示から、2023年のインテリアトレンドを考察しました。

曲線的なフォルム、柔らかな質感

角のないコロンとした曲線的なフォルムの家具が目立った今回。表面の素材も優しくてリラックスできるようなものが注目されているようです。

現在も続くジャパンディ・スタイル

また、2020年頃からインテリア業界においてトレンドになっている“ジャパンディ”も引き続き人気を集めているようです。ジャパンディとは、Japanese(日本の)とScandinavian(北欧の)をミックスしたインテリアスタイルのこと。温かみの中に洗練された風合いを感じる空間は海外でも注目を集め、インテリアトレンドとして普及しつつあります。

リモートワークや在宅勤務などで室内で過ごす時間が増えたことで、こうした家具に落ち着き・安らぎを求める声が増えているのかもしれません。

植物由来の有機的なデザイン


曲線的なフォルムの人気に続き、自然も今回多くのデザイナーのインスピレーションとなったようです。

会場では苔や藁、野生の茂みなどが、ミラノの街に並ぶアンティークな建築物・空間の装飾として用いられる様子が多く見られました。今回、デザイナー深澤直人は木蓮の花をモチーフとした照明を発表。ミニマルなデザインが特徴の彼の新作は、コロナ禍によって自宅で過ごす時間が長がったことで、触れる機会が減少した自然との接点を求めた結果かもしれません。さまざまなプロダクトに見られる自然由来のデザインからは、多くのデザイナーたちの関心が伺えます。

サスティナブルな素材としてのガラス

サスティナブルで環境に優しいデザインという概念は、インテリアデザインの世界でも一般的なものに。今回の展示で多くみられたのが、ガラスを用いたプロダクト。リサイクル可能な素材として、これまで以上にその可能性に多くの注目が集まっています。技術の進歩とともに可能になった多様なカラーリングや仕上げによって、無機質な印象から有機的な手作り感のある印象まで、幅広い表現が魅力のマテリアルに進化しました。

煌びやかな空間を生み出すミラー

ミラーやその反射面を用いたプロダクトも多くみられました。天井や間仕切り、キッチンキャビネット、家具の構成要素として、または装飾性を高める素材として取り入れられました。

ミラーの反射が生み出す煌びやかな空間は、コロナ渦から解放された、新たな日常への高揚を表しているようです。自然由来のデザインと相反して、メタリックな空間も両端のトレンドとして広がっているようです。

自由な表現が可能になった照明

今年はエウロルーチェ(Euroluce / サローネ国際照明見本市)の開催年ということもあり、会場では多くの照明作品が発表されました。ノーマンフォスターをはじめ、建築家がデザインする照明も多くみられ、建築空間そのもののデザインを邪魔しない、最低限の造形で光を強調するプロダクトも特徴的でした。

LEDやバッテリー性能の向上によって、光そのものの表現の自由度、フレキシビリティが高まり、空間の表現が広がっています。

空間の仕切りとしてのカーテン

北欧では既に注目されているトレンドであるカーテン。従来の窓辺のみならず、空間の間仕切りとして多くのブランドがその新たな用途を提案していました。カーテンは光を遮ることなく、同時に質感を加えることでプライバシーを確​​保し、空間をさまざまな機能に分けることができます。

AI×インテリア

デザインやサービスにAIを取り込んだ展示も多くみられました。MooiではAIがその日の気分に合わせてアロマを調合するインテリアディフューザーを発表。AIをはじめブロックチェーン、バイオテック等の最先端技術の発展によって、今後もインテリアや家具など未来の生活に影響を与えそうです。

赤系のカラーリング・アースカラー

アメリカのPANTONE(パントン)社が発表した2023年のトレンドカラーは「Viva Magenta(ビバマゼンタ)」。今回の展示でも多くのブランドが赤系のカラーリングのプロダクト・空間を発表していました。

また、近年のトレンドでもあるアースカラーも引き続き人気を保っており、特にテラコッタのような赤みのあるオレンジが多くみられました。

一方、そこにアクセントとして補色であるロイヤルブルー系を合わせる例も散見されました。

コロナウィルスの終焉と先端技術が新たにするこれからのインテリア

4年ぶりの通常開催となった今回のミラノデザインウィークでは、室内に篭りがちであったこれまでの暮らしの反動から、自然や煌びやかな装飾を求める社会のトレンドが伺えたようです。AIをはじめとするテクノロジーの進歩もさまざまな形でインテリアに取り入れられ、今後も革新的なプロダクト・空間によって我々の暮らしがより豊かなものへとアップデートされていくでしょう。