42個の窓によって、不思議な浮遊感をもたらした住まい「彦根の住居」

建築家・島田陽は1972年 兵庫県神戸市産まれ。1997年に京都市立芸術大学大学院卒業。同年にタトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所設立する。「六甲の住宅」でLIXILデザインコンテスト2012金賞、第29回吉岡賞受賞。「石切の住宅」で日本建築設計学会賞大賞を受賞している。

「彦根の住居」は滋賀県彦根市に建つ、若い夫婦と子どもたちのための小さな住宅。

草原から始まった住まいづくり

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敷地である住宅地はしばらく売れていなかったためか荒れた草原のような状態だったが、周囲ではこれから建売住宅が建ち並ぶ計画が進んでいた。そこで周囲がどのような状態となっても、草原の記憶を残しつつ成立するような建ち方を探すこととなった。

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建築は、長円形の平面を敷地に対し斜めに配置することで周囲から引きを取りつつ、計42個の窓を空けた白い長円形の壁に、木造の床や箱を挿入して生活の場をつくり出すプランに。たくさんの窓を並べることにより周辺の環境を微分して、どのような外部環境となっても受け入れられることを意図している。均等に窓を配することで、不思議なことに見えない部分は都合良く補完され、ある種の透明さが生まれた。

浮遊感のある踊り場

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階段をそのまま床面に繋げるのではなく、分割することで踊り場を作り出した。

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フロアから750mm上空の微妙な浮遊感。そのどちらにも属さない微妙な浮遊感を、窓の配置によってつくり出すことを目指している。

天井まで続く均等な窓が生み出す不思議な感覚

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天井は吹き抜けとなっており、降り注ぐ光が心地よい空間になっています。

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天井までの壁面に縦3層に窓を均等に配置することにより建築の大きさに不思議な違和感をもたらし、建築全体に踊り場のような不思議な浮遊感が感じられます。

木の柔らかな風合いが心地よいダイニングキッチン

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1階の中央に配置されたアイランド型キッチン。

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目の前がダイニングとなっており、導線もスムーズ。高めの天井が仕切りの少ない空間をより広く感じさる。

穏やかな光で落ち着きのあるリビング

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ダイニングの奥に配されたリビングは木のあたたかな風合いが感じられる落ち着いた雰囲気。

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合板で仕切られた空間にはトイレやバスルームなどの水周りがまとめられている。

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バスルームも壁面の窓から差し込む光が感じられる明るい空間だ。

シンプルながら居心地の良いプライベート空間

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踊り場からの螺旋階段で繋がる2階部分。

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こちらにはベッドルームと多目的スペースを配置。

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シンプルながらも均等に配置された格子付きの窓がアクセント。

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反対側には壁に沿ったデスクのある多目的スペース。

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窓の格子と揃えたデザインで遊び心のある扉。白壁と木のみのすっきりとした内装ながら、周囲の窓から差し込む光によって、その時々の心地よい時間の流れが感じられる心地の良い空間が広がる。

意図的に作り出された違和感が、暮らしを楽しませる住まい

敷地に対して斜めに配された建築、さらに縦に3層に窓を均等に配置することにより3階建てのビルのように見える外観。そうすることで生まれた建築の大きさへの違和感や、デスクのように壁際に設けられた踊り場によって生み出された室内での浮遊感が、住む人を楽しませる遊び心の詰まった住宅となっていた。