美しいHPシェル構造が特徴的な「フェリックス・キャンデラ」が手がけたメキシコシティの建築まとめ
HPシェル構造が代名詞の天才建築家、フェリックス・キャンデラ。コンピューター技術を使わずにアナログ計算だけで彼が創りあげる「巨大な貝」のような建築設計は、美しく壮大だ。
メキシコシティの中心街には、キャンデラの神技が見られる教会建築が多く存在し、彼の建築ファンにとってメッカ的な場所となっている。今回はメキシコシティに点在するフェリックス・キャンデラの建築作品を紹介する。
フェリックス・キャンデラとは
スペイン生まれの建築家、フェリックス・キャンデラ。コントラクターでもあるその知識で作り上げた「立体曲線HPシェル」は、後に世界から「天才的建築家」と呼ばれる彼の代表的な建築技法となっている。
「縦に切ると放物線、横に切ると双曲線、45度に切ると直線」という合理的な形の曲面を用いて、構造と表現が一体化した「流れるような空間」を実現した。
コンピューターのまだ無い時代に、計算をして創り上げた放物線と双曲線を組み合わせは実に美しい。
サン・ビセンテ・デ・パウル礼拝堂
メキシコシティ内にありながらも、人目につかない場所に存在する「サン・ビセンテ・デ・パウル礼拝堂」。「帽子がモチーフ」と言われる特徴的な外観だが、ひっそりと佇むこの礼拝堂は、地元民でさえも見つけることに苦労するという。
サン・ビセンテ・デ・パウル礼拝堂は、フェリックス・キャンデラが手掛けた教会建築の中でも「HPシェルを最も有効的に表現した建築だと話すものが多い作品だ。
シンプルに作り上げた内部空間は、屋根全体が構造体になっており、少ない要素で一体化した表現が、流れるような曲線で魅せられ美しい。
ヌエストラ・セニョーラ・デ・ソレダ礼拝堂 – Capilla San Jose del Altillo
電話 : +52 55 5659 6606
URL : http://mspsprovinciamexico.org/templo-de-san-jose-del-altillo/
住所 : Av. Universidad 1700, Santa Catarina Coyocan, Coyoacán, 04010 Ciudad de México, CDMX, Mexico
ヌエストラ・セニョーラ・デ・ソレダ礼拝堂
メキシコ市街の閑静な住宅街に存在する「ヌエストラ・セニョーラ・デ・ソレダ礼拝堂」。
フェリックス・キャンデラらしいHPシェル構造で作られているが、モダンでありながら土着的な雰囲気が特徴的だ。周囲の観光にうまく溶け込んだ外観は、シンメトリーなファザードと、正に「シンボル」のように掲げられた十字架が美しく我々を見下ろす。
建物内部は、水平に広がるワンルームのダイナミック空間。神聖な静寂に描かれた「HPシェルの天井」と、射線状に切り分けられたステンドグラスからの鮮やかな虹彩が上品に交わる。
Capilla San Jose del Altillo – ヌエストラ・セニョーラ・デ・ソレダ礼拝堂
URL : http://mspsprovinciamexico.org/templo-de-san-jose-del-altillo/
住所 : Av. Universidad 1700, Santa Catarina Coyocan, Coyoacán, 04010 Ciudad de México, CDMX, Mexico
ラ・メダージャ・ミラグロサ教会
ラ・メダージャ・ミラグロサ教会は、キャンデラが手掛けた教会建築の中でも比較的「一般的な教会のカタチ」を踏襲している建築だ。
しかし、外観の教会的なカタチからは想像できない内部空間はシームレスに繋がって、まるで森の中にいるような印象を覚える。
スパンが大きくなっているところを中心に天井を高くし、この屋根や柱によって体的なスケール感で生まれた独特な雰囲気。洞窟や叢祠のような落ち着きをも感じ、ステンドグラスから入る虹彩は、彼の構造らしい「曲面」に反射して美しく照らされる。
Parroquia de la Medalla Milagrosa – ラ・メダージャ・ミラグロサ教会
URL : http://medallamilagrosa19.wixsite.com/parroquia
住所 : Calle Matías Romero 78, Vertiz Narvarte, Benito Juarez, 03600 Ciudad de México, CDMX, Mexico
サンタ・モニカ教会
ファサードもダイナミックな「サンタ・モニカ教会」。L字の地形に合わせて「扇形」で作られたのがこの建物だ。そこに「均質な明るさ」の空間を求めたキャンデラは、屋根をHPシェルのリブ・アーチ&スリットを採用した。
高い天井空間が広がる内部は、中央の柱から放射状に伸びる天井が空間を作る。まるで「ヤシの木」のように放射状に伸びるその天井は、柱であり壁でもあるのだ。外観で印象的だった、ダイナミックなステンドグラスは、リズム良く内部を虹色に彩る。それと同時に、スリット状に切り込まれたトップライトからも自然光が差し込み、明るい空間が広がっている。
Capilla Santa Mónica – サンタ・モニカ教会
URL : http://www.agustinosrecoletos.org/comunidad.phpid_pais=7&id_provincia=36&id_comunidad=49&idioma=1
住所 : Fresas 126, U.H. del Valle, Benito Juárez, 03100 Ciudad de México, CDMX, Mexico
フェリックス・キャンデラを冠した駅「キャンデラリア」駅
メキシコシティのメトロの駅の一つに、フェリックス・キャンデラを冠した駅がある。ここが「キャンデラリア」駅の内部建築は彼が手掛けたことで知られる。
外観は至って普通の駅の印象だが、校内に入ると広がるのは、フェリックス・キャンデラらしいHPシェル構造。天井を支える柱や地上階の屋根が柔らかくその空間を印象づけ綺麗に整えている。
Candelaria station – キャンデラリア駅
住所:Candelaria, Candelaria de Los Patos, Zona Centro, 15100 Ciudad de México, CDMX, Mexico
カワイイ容姿が印象的な「宇宙線研究所」
メキシコ・シティにあるメキシコ国立自治大学(UNAM)に、フェリックス・キャンデラ初めての作品「宇宙線研究所」が存在する。華奢な柱で作られ、一階部分がピロティになっているカワイイ容姿が印象的だ。
コンピューターのない当時、平均厚さ4cmで作られたこの建物は建築のエンジニアリングの世界で注目され、1985年のメキシコ地震にも耐えた数少ない建築だという。
Universidad Nacional Autónoma de México / UNAM – メキシコ国立自治大学
住所: C.U., Coyoacán, 04510 Ciudad de México, CDMX
キャンデラがHPシェル構造を使ってで創り上げた幾つもの教会建築。そこには、建築業界とキリスト教徒の垣根を超えて、見るものを魅了し、感動させる空間が存在する。
1960年代の当時、コンピューターのない時代に自身の手で図面と構造計算を行い、創り出された柱も梁もない曲面。その空間設計は、デザインもエンジニアリングもマネージメントも全てを自身で行った彼だからこそ出来た神技だ。
そのダイナミックで美しいフェリックス・キャンデラの建築構造は、日本ではなかなか観られないものだろう。