ドアハンドルメーカー・UNIONと田根剛が贈るインスタレーション「One Design – One Handle」
フランスのパリを拠点に世界を股にかけて活躍する建築家・田根剛は、ミラノデザインウィーク2019にてドアハンドルメーカー・UNIONとコラボレーションにより、「One Design – One Handle」と題したインスタレーションを行った。「エストニア国立博物館」を手掛け、ミラノデザインウィーク2014でのシチズンとのコラボのインスタレーション「LIGHT is TIME」を手掛けた田根剛の今年のインスタレーションはどのようなものなのだろうか。
ドアハンドルの膨大な素材や資料
ドアハンドルメーカー・UNION の前身は、戦後まもなく開いた大阪の小さな金物商店である。1958年にドアハンドルなどの建築金物の製造を開始し、その歴史を刻み始めた。建築家やデザイナーとともに建築やインテリアに使われるデザイン性の高いドアハンドルも手がけ、ドアハンドルに特化したものづくりの道を進んできた。ミラノのトルトーナ地区を舞台にして、60周年を迎えたUNION の歴史を表現する展示は、ドアハンドルの膨大な素材や資料から始まる。
UNION の作るドアハンドルの種類は約3,000ほどある。アルミやステンレス、鉄、真鍮、天然木、ガラス、磁器、レザーなどその素材も数多いが、それに使用される技術もまた形状やスケールによって様々だ。
「砂型鋳造」を魅せるインスタレーション
今回のインスタレーション「One Design – One Handle」では、鋳造の中では最も古い技術「砂型鋳造」のプロセスにフォーカス。田根剛は、UNIONが行なってきたハンドル製造、歴史、技術、素材やプロセスを読み解き、脈々と流れるその精神を表現。
UNION では創業当初から使用している技術のひとつである「砂型鋳造」は、現在もハンドルの試作やごく小さなロットの製造時に使用している技術。ひとつひとつのドアハンドルをしっかりと製造するというUNION の技術と精神が表れていた。
U字型の作業台の上で繰り広げられる職人技術の披露に来場者の視線は釘付け。また、それだけでなく作業台に並べられた様々なマテリアルも一つの芸術品や工芸品のようでその美しさにも目を奪われる。
今回、非常に評判の良かった田根剛の展示は、ミラノデザインウィークが開幕するとともに噂になるものだった。砂型鋳造の作業そのものを見せるインスタレーションというのは非常に斬新だったように思う。UNION の技術と精神が最大限表現されている展示だったと言えるだろう。