“良い図書館を良いと言う”LoY2017で大賞を受賞 「瀬戸内市民図書館/もみわ広場」

2016年岡山県瀬戸内市に開館した「瀬戸内市民図書館/もみわ広場」が、これからの図書館のあり方を示唆するような先進的な活動を行っている機関に対して贈られる「library of the year 2017」の大賞とオーディエンス賞を受賞した。同賞は学識経験者らでつくるNPO法人「知的資源イニシアティブ」が創設したものであり、昨年で12回目。6年間に及ぶ的確な図書館整備プロセスとこれからの図書館サービスのモデルを示したことが評価された。開館して間もなく“良い図書館”の認定をうけた、その魅力をご紹介。

もともとあったかのような自然な佇まい

邑久駅から徒歩10分ほどの場所にあるL字に折れたガラスの建物が瀬戸内市民図書館もみわ広場。「もちより・みつけ・わけあう」広場をめざして「もみわ広場」と名付けられたこの場所は、建築家・香山壽雄氏が設計を担当。その佇まいは、一見、隣接する赤煉瓦の公民館も図書館の一部と勘違いしてしまうほどごく自然で、市のシンボルツリーであるオリーブの木が植えられた芝生の庭も相まり、寝転びたくなるほど心地よい雰囲気を醸し出している。

テラスにいるような開放感あるL字の吹抜空間

館内に入るとまず「もみわカフェ」と名付けられたフリースペースが広がっている。飲食物の持込が可能なうえ、瀬戸内市が提供している無料公衆無線LANサービスも利用でき、ちょっとした打ち合わせや談話にはうってつけの場所だ。

L字を曲がると瀬戸内市の文化と歴史を紹介する「せとうち発見の道」が広がる。瀬戸内市内で使われていた生活道具や瀬戸内出身の著名人に関する本など様々なものが展示されているため、雑然とした雰囲気になりそうだが、明快な空間構成であるからか、不思議とエリアごとのまとまりを感じる。

発掘現場を再現した床下展示

瀬戸内市が誇る「喜之助ギャラリー」

せとうち発見の道の先には、瀬戸内市が誇る国際的な糸操り人形師、竹田喜之助を顕彰するギャラリーがあり、市が保有する喜之助人形の企画展示が行われている。それに加え、館内のシアターは、糸操り人形劇が上演できる舞台設備が整っているため、人形劇団による公演も不定期で開催されている。

ユニークで分かりやすい見出し板

多機能型図書館として、先に郷土文化に関する特徴を挙げたが、もちろん図書館としての工夫も随所に施されている。

なかでもユニークなのが本の仕切り方。料理本としてまとめるのではなく「健康な食事」「節約料理」など、より細かなジャンルで仕切られているので、内容が一目で分かる。その中には「今夜はお鍋」「やっぱり和食が一番」など遊び心のあるものもあり、本を選ぶのが楽しくなる。

図書館発!「せとうちまーる号」

邑久高等学校の美術部がデザインを担当した「せとうちまーる号」

図書館と地域郷土資料の展示が館内の主な機能だが、図書館主導で行われている取り組みはこれだけではない。そのうちのひとつが移動図書館サービスだ。2010年に新図書館整備検討プロジェクトチームが発足し、その翌年から軽自動車に約500冊の絵本をのせ、瀬戸内市内の全保育園、幼稚園に対して月1回の頻度で巡回している。2012年には、石川県の図書館から倍の1000冊積むことができる移動図書館車両を譲り受け、子供達に絵本とおはなし会を届けている。現在は、高齢者福祉施設にもサービスを提供している。

「寒風としょかんタイルプロジェクト」市民が思い思いに製作した3200枚以上のタイルが図書館南側壁面を飾る。

他にも、瀬戸内市内で撮影したとっておきの写真を投稿し共有する「せとうちデジタルフォトマップ」や牛窓地区にある寒風(さぶかぜ)陶芸会館とのコラボレーション企画「寒風としょかんタイルプロジェクト」など地域との繋がりを大切にした取り組みを数多く行っている。

「瀬戸内市民図書館もみわ広場」は開館してまだ1年だが、すでに瀬戸内市民の一員として共に成長しているような、生命力に溢れる図書館だった。

瀬戸内市民図書館もみわ広場

住所:岡山県瀬戸内市邑久町尾張465-1
開館時間:火・水・土・日・祝日…午前10時~午後6時
木・金…午前10時~午後7時
休館日:月曜日(ハッピーマンデーを含む)
祝日(ハッピーマンデーを除く)の直後の平日
毎月最終水曜日(祝日のときは前週の水曜日)
年末年始
特別整理期間
URL:lib.city.setouchi.lg.jp/