大小さまざまな窓の配置が楽しい。ポルトガルの白い小さな家
この家が建っているのは、ポルトガル中央部、おいしいチーズが名物というラバサル地方の小さな村です。紀元前4年ころにはすでにローマ帝国の集落があったという、たいへん歴史のある地方で、現在はぶどうやオリーブの畑が広がるのどかなところです。
そんなのどかな村の農園の一角にこの家を建てたオーナーが望んだのは、広大なお屋敷ではなく、一家が心地よく暮らせるジャストサイズの家でした。白壁の細長い二階家に切り妻屋根、というスタイルは、この地方の伝統的な家屋の形式にならっているそうです。
この家を建てるにあたっては、元の地形や植栽になるべく影響を与えたくない、という配慮から、建築場所を慎重に検討したそうです。その甲斐あって、ゆるやかな起伏のある地形に大幅に手を加えることなく、また、一本の立木も切ることなく、家を建てることができました。
家を建てた場所は農園の西の端、幹線道路から少し奥に入った、静かで陽当たりのいいところ。小路から家へのアプローチは半地下の駐車場。突き当たりはコンクリート製の壁で、その奥はランドリールームになっているそうです。駐車場から階段を上がると、家の玄関と同じ高さになります。
家の敷地は、東側(玄関から見て家の奥の方)に向かってなだらかに傾斜しています。ここを平らに整地する代わりに、傾斜側にコンクリート製の地下室を設けて、1階部分を持ち上げました。少し離れて見ると、家の片側が地面から浮いているように見えますね。家を支えている地下室は、小さなワインセラーとして活用しているそうです。
玄関を入ると、ガラスのエントランス。これは、強風が直接家の中に吹き込むのを避けるためのスペース(風除室)になっているのだそうです。
玄関から駐車場側を見たところ。
家の地上部分は2階建てです。
1階は入口側にダイニングとキッチン、奥にリビングが配置されています。
床は木の板、壁と天井は白で統一されています。
リビング奥から玄関方向をみたところ。キッチンの裏側を棚として利用しています。明るく居心地のよさそうなリビングですね。
リビング奥は壁一面の窓。自慢のオリーブ畑がよく見えます。
2階には寝室とバスルームがあります。中央のバスルームをはさんで、両側に寝室が配置されています。天井がないので、ちょっと屋根裏みたいな雰囲気も味わえます。
1階と2階をつなぐ階段は、一見普通の木の階段に見えますが、なんと収納棚になっています。引出しの位置にも注目!階段の側面側と、段の正面側に、それぞれ引出しが付いているので、奥行きが深くなりすぎなくて、使い勝手がよさそうですね。
そして、階段(兼収納棚)と天井の間に空間があることにも注目です。これは、デザイン的にもカッコイイですが、空気の流れや採光に配慮しているのかもしれません。
もうひとつ、この家の大きな特徴があります。それは、大小さまざまな窓。家の中から外の素晴らしい景色を見るときも、外から景観の一部として家を眺めるときも、とても素敵な姿を見せてくれます。
家の西側、玄関は、L字型に窓が配置されています。
家の北側は小さな窓が少し。寒い風を入れないように、開口部を最小限にするという機能的な配慮もあるかもしれません。でも、薪ストーブの隣にこんな小さな窓があるのは、「なぜここに?(かわいいけど…)」という不思議な気がしなくもありません(この謎は、あとで解けます)。
反対側の南側は、リビングも寝室も大き目の窓。光をたっぷり取り入れます。
そして、東側、リビングの奥は、壁面いっぱいの大きな窓。こちら側は傾斜のおかげで地面より少し高くなっているので見晴らしがよく、広いオリーブ畑をずっと遠くまで見通せます。
外から見ると、どうなっているでしょうか?まずは図面を確認してみましょう。
以下は、それぞれ家の東西南北の壁面を真横からみたときの図面です。
東面
西面
南面
北面
いかがでしょうか、大小の窓がリズミカルに配置され、四角形で構成された抽象画を見ているような楽しい気分になりませんか?ストーブ横の小窓も、こうして計算された位置に配置されていたのですね。
では、実際に外から見た家の姿をご覧ください。
東面
西面
南面
北面
大小の窓がいろんな表情を見せてくれて、実に可愛らしいですね。
ポルトガルのオリーブ&ぶどう農園にある、シンプルな家。小さな地下室からワインを出してきて、名物のチーズをつまみながら団らんする様子が目に浮かぶようですね。
日本人の感覚からすると十分ゆったりしたスペースを持つ家ですが、家族のライフスタイルに合わせて必要十分な、ちょうどのサイズのミニマルハウスというものがあるとすれば、この家は一つの例かもしれませんね。
Via: archdaily.com