「織の地層 - Woven Strata -」川島織物セルコンが今年もミラノデザインウィーク2026へ出展!
ごつごつ、きらきら、ざらざら——。地層と鉱石、土が刻んだ時間の質感を、織物で表す。
1843年創業の京都・川島織物セルコンが、2026年4月20日(月)から26日(日)にかけてイタリア・ミラノで開催される世界最大規模のデザインイベント「ミラノデザインウィーク2026」に、5度目の出展を果たします。今回のテーマは「織の地層 - Woven Strata -」。長い年月をかけて積み重なり、隆起し、浸食された自然界の地層が持つ多様な質感を、高度な織物技術によって表現するという、これまでにない挑戦です。
「地層」と「織物」——二つの積層が出会う場所

今回のテーマ「織の地層」には、二重の意味が込められています。
一つ目は、自然界の「地層」と糸の積層である「織物」を重ね合わせるという視点です。地層や鉱石が長い時間の中でゆっくりと積み重なって形成されるように、織物もまた、糸を一本一本重ねることで生まれる”時間の痕跡”です。地層の断面に現れる凹凸や粒感、光の角度によって変化する鉱物のきらめき、乾いた土壁のざらつきやひび割れ——自然界の「堆積」が生み出す質感を、川島織物セルコンが長年磨き上げてきた織物技術によって可視化します。素材の選定から織組織の設計、密度の精緻な制御に至るまで、工程を幾層にも重ねることで、本来は捉えがたい感覚を「織の表情」として立ち上がらせます。
二つ目は、創業1843年から続く川島織物セルコン自身の「技術の堆積」を示すという意味です。手織りの綴織アートワークをはじめ、絹糸・金糸・螺鈿・フィルムなどを織り込んだ繊細な作品、さらにはリアルな質感を追求した実用的な機械織り作品まで、180年以上にわたって積み重ねてきた技術と挑戦の軌跡が、今回の展示に凝縮されています。
4つの新作織物が語るもの

今回の展示を象徴する新作が、4作品発表されます。それぞれが異なる技法と素材によって、地層・鉱石・土の質感を独自の表現で織り上げています。
Strata_1

(H約300×W約200cm)は、柄を表現する緯糸を手作業で織り込む「綴織」と「流し織」を用いた大型作品です。麻・紙・ウール・レーヨンなど多様な素材を組み合わせ、糸の太さや織組織の違いを積み重ねることで、時間の堆積を思わせる奥行きとリズムを持つ作品に仕上がっています。
Onyx_4

(H約30×W約30cm)は、西陣織の代表的な伝統技法「引箔(ひきはく)」を用いた作品です。金銀や漆で装飾された和紙を糸状に裁断して緯糸として織り込む技法によって、オニキスの断面が持つ透明感と鮮やかな艶をリアルに再現しています。光の反射によって表情が変化する奥行きは、まさに鉱石そのものです。
Soil_2

(H約400×W約120cm)は、乾いてひび割れた土壁の表情をジャカード織物で表現した作品です。ポリエステルの意匠糸が乾いた質感を生み出し、異なる2種類の生地を袋状に織る「風通織(ふうつうおり)」という技法によって不規則な凹凸を織り出しています。硬質な印象の中に、織物ならではの柔らかさを宿した一作です。
Onyx_5

(H約600×W約200cm)は、オニキスが持つ吸い込まれるような透明感と静謐な美しさを、マシンタフトとインクジェットプリントで表現した大型作品です。タフティングによる繊細な石目調の基布に2色の染料を流し込み、グラデーションで染め上げることで、層の重なりをダイナミックに表現しています。凛とした静けさと大胆な存在感を兼ね備えた、空間を支配する力を持つ作品です。
照明デザイナー・岡安泉によるインスタレーション

今回のアートディレクションを担うのは、照明デザイナーの岡安泉(岡安泉照明設計事務所代表)です。これまで青木淳、伊東豊雄、隈研吾、山本理顕ら国内トップクラスの建築家プロジェクトの照明計画を手がけてきた岡安氏が、川島織物セルコンの織物と光の演出を融合させます。
岡安はインスタレーションについてこのように語っています。「堆積をテーマに制作された織物が並ぶ今回の展示は、表出したものがゆっくりと時間をかけて浸食、風化していく風景をイメージしたものとしている。この風景の中で、今回の展示物の技術・技法の多様性と織の精度を感じ、記憶に残してもらいたい」。
光の反射や吸収による見え方の違い、近くで見たときと遠くから見たときで変化する表情——視覚と触感の両面から織物の豊かさを体感できる展示空間が、ミラノの地に出現します。
インテリア・建築空間への新たな提案
本展示は、近年高まっている建築・インテリア空間に自然素材の質感を柔軟に取り入れたいというニーズにも応えています。石や土壁といった硬質な素材が持つ表情はそのままに、触れたときに心地よい織物として空間に提案する——これが川島織物セルコンが目指す、織物の新しい役割です。
椅子張やクッション、パーティションなど実用的なインテリア用途への展開も可能で、さまざまな質感を空間のスケールや光環境に応じて選び分けられる構成としています。意匠表現にとどまらず、空間の重心や境界、雰囲気を静かに支える「空間の中で役割を担う質感」として設計に組み込める、新たな織物の可能性を提示しています。
会場はミラノ北部の「Paola Lenti Milano」

展示会場は、ミラノ北部に位置するパオラレンティ ミラノ(Paola Lenti Milano)です。1994年にグラフィックデザイナー出身のPaola Lentiがイタリアで創設したファニチャーブランドのショールームで、自然にインスパイアされた独創的なコレクションで知られる空間です。川島織物セルコンの繊細で力強い織物作品と、この会場の持つ空気感が交わる展示に、大きな期待が集まります。
180年以上の技術が、ミラノの地で結実する
川島織物セルコンは1843年に京都で創業し、今年184年目を迎えます。明治宮殿への納入から、京都迎賓館や国内外のラグジュアリーホテルまで、その唯一無二のクオリティと表現力は長く評価され続けてきました。2019年からは「織物屋の試み」と題したプロジェクトを始動させ、美の表現と織物の可能性に対するあくなき探求を続けています。
ミラノデザインウィークという世界最大のデザインの舞台で、日本の織物技術の深さと革新性を発信し続ける川島織物セルコン。今年の「織の地層 - Woven Strata -」は、テキスタイル表現の新たな地平を切り開く展示となりそうです。
織の地層 - Woven Strata -
開催期間:2026年4月20日(月)〜26日(日)
会場:パオラレンティ ミラノ(Via Giovanni Bovio, 28, 20159 Milano MI, イタリア)
アートディレクション:岡安泉(岡安泉照明設計事務所)
URL:https://www.kawashimaselkon.co.jp/event/milan2026/