広島市現代美術館で「フィンランド スピリット サウナ ー建築、デザインからサウナハットまで」が開催!

広島市現代美術館で、フィンランドのサウナ文化を建築・デザイン・美術の視点からたどる特別展「フィンランド スピリット サウナ」が開催。アルヴァ・アアルトのサウナ6作品や《ムーラッツァロの実験住宅》の実寸模型、サウナハットを含む道具類など約200点を通して、サウナが育んだ“暮らしの美意識”に深く迫ります。

サウナを「文化」として読むとフィンランドの素顔

本展のポイントは、サウナを単なる入浴習慣としてではなく、生活に組み込まれた文化装置として捉え直す点にあります。展示は5章立てで、サウナが日常にどれほど深く根づいているのか、歴史的にどう形成され、芸術やデザイン、建築へとどのように接続してきたのかを段階的に理解できる構成です。

第1章ではサウナの本質に迫り、フィンランド国内に推計320万ものサウナがあること、人口約560万人のうち59%が週1回以上入るとされることなど、数字のインパクトで“日常への浸透度”を可視化します。さらにフィンランドのサウナ文化が2020年に無形文化遺産に登録された点にも触れ、伝統が現在進行形で継承されていることを示します。

第2章は歴史。現代に近い「木造小屋の中で火を焚く」形式が西暦600〜900年頃に成立したとされること、北欧・バルト・ロシアへ広がっていった背景など、サウナが“北の環境”とともに育ったプロセスが語られます。第3章では美術へと視点を移し、画家マルッタ・ヴェンデリンの作品などを通じて、暮らしのイメージとしてのサウナがどう描かれてきたのかをたどります。

アアルトのサウナは「付属」ではなく「建築の核」だった

ムーラッツァロの実験住宅(コエタロ)でサウナを楽しむアルヴァ・アアルト、1960年代、Photo: Heikki Havas

建築ファンが特に注目したいのが第4章「サウナと建築」です。アルヴァ・アアルトの事務所は、多数のサウナを設計したことが知られています。独立サウナや住宅内サウナなどの蓄積を背景に、展示では“アアルト設計のサウナ6作品”が紹介される予定です。

ヴィヒタによるウィスキング ©️Katja Lösönen / Kalevala Women’s Association, Finland

たとえば、療養の場としての環境設計で知られるサウナ、母屋と渡り廊下でつながるサウナ、川の傍に建つヨキサウナなど。サウナが「付属室」ではなく、風景・動線・居場所の設計と密接に結びつく“核”として扱われていたことが、具体例で立ち上がってきます。

サウナの平面・立面・断面図 作図=アルヴァ・アアルト、1938、アルヴァ・アアルト財団蔵

なかでも《ムーラッツァロの実験住宅(コエタロ)》のサウナ小屋を“実寸模型で再現”する展示は、図面や写真では伝わりきらないスケール感や、身体感覚としての距離・素材感を呼び戻してくれるはずです。建築展示で「実際に立つ」体験が持つ説得力を、サウナというテーマで味わえる貴重な機会と言えます。

サウナハットまでが「デザイン」。道具に宿る美意識を読む

温度計、個人蔵、Photo: Shouma Kohsai

第5章「サウナとデザイン」では、ロウリュの音、蒸気、木の香りといった感覚のレイヤーを支える“道具のデザイン”に焦点が当たります。白樺のヴィヒタ、桶やひしゃく、温度計、マグカップ、そしてサウナハットまで、サウナ時間を整えるディテールが並びます。機能を満たすだけでなく、暮らしの美意識として選び取られてきた形や素材、その背景まで見えてくるはずです。

無料プログラムでサウナ空間を“体感”。鑑賞が次の行動につながる

ヴィヒタによるウィスキング ©️Katja Lösönen / Kalevala Women’s Association, Finland

会期中は、オープン・プログラム「フィンランドサウナのいまむかし」も同時開催されます。70年代のサウナと現代のサウナを“部分再現”し、実際に中に入って空間スケールを体感できるという内容。映像資料の上映や、江田島のフィンランド式サウナ施設「NOT BUSY」セレクトの関連書籍閲覧コーナー、県内サウナ施設の紹介なども予定され、展覧会の理解を“次の一歩”へつなげる導線が用意されています。

トーク、ギャラリートーク、ツアーで理解を深める

森の中で携帯型のテント風サウナでくつろぐ人々、2011、 Photo: Alexander Lembke

関連プログラムとして、フィンランド理解を深めるトークが2回実施されます(デザイン編:2026年3月21日、ライフスタイル編:2026年4月25日/各15:00–16:30)。学芸員によるギャラリートークは5月16日・6月13日(15:00–16:00)に開催予定。さらにアートナビゲーターによるツアー形式の解説も会期中に複数回行われ、初見でも“読み解く手がかり”を得やすい設計になっています。

展覧会グッズ&カフェも。会期限定の“持ち帰れる体験”

ミュージアムショップ「339」では、本展オリジナルのサウナハットやタオル等が販売予定。トントゥ(サウナの精霊)やサウナストーンなどの輸入雑貨も会期限定で展開されます。鑑賞後に“持ち帰れる体験”があるのはうれしいポイント。

併設カフェ「KAZE」でも関連メニューが用意されるため、展覧会の余韻ごと滞在してみてください。

「静かな豊かさ」を学ぶ

参考:その名も”実験住宅”?森の中に佇むアルヴァ・アアルトのサマーハウス「コエ・タロ」

サウナを「整う」ための流行語で終わらせず、歴史・美術・建築・デザインという複数のレンズで読み直す——それが本展の核です。

参考:その名も”実験住宅”?森の中に佇むアルヴァ・アアルトのサマーハウス「コエ・タロ」

アアルトが設計したサウナの具体例に触れられるうえ、実寸模型や“入れる再現展示”で身体感覚まで呼び戻せる構成は、建築・インテリア好きにとって強い体験になるはず。春から初夏にかけての広島で、フィンランドの暮らしが育んだ“静かな豊かさ”を、空間と道具の両面から味わってみてください。

広島市現代美術館

Photo: Kenichi Hanada

広島市現代美術館は、全国で初めて現代美術に本格的に取り組む公立美術館として1989年5月3日にスタートしました。建物は、建築家・黒川紀章による設計で、市内を見渡す緑豊かな比治山公園に位置しています。自然の景観と調和しながら、美術館としての先駆性が表現されており、垂直軸に沿って下から順に自然石、タイル、アルミと変化する素材は、過去から未来への文明の発展や時間の流れを表し、設計者独自の「共生の思想」を体現しています。2023年3月18日、リニューアルオープン。

フィンランド スピリット サウナ ー建築、デザインからサウナハットまで

  • 会期:2026年3月14日(土)〜6月28日(日)
  • 会場:広島市現代美術館 展示室B-2、B-3
  • 開館時間:10:00–17:00(入場は閉館30分前まで)
    休館日:月曜日(ただし5/4は開館)、5/7(木)
    観覧料:一般1,100円(前売850円)ほか/中学生以下無料 ※本展チケットで同時開催中のコレクション展も観覧可
    URL:https://www.hiroshima-moca.jp/