建築家・五十嵐理人による開放と多様性を包み込む“大空間の住まい”「グランドルーム / ハウス」
埼玉県に建つ「グランドルーム / ハウス」。田園風景の中に開発された住宅地の一角に位置し、穏やかな開放感と日常の喧騒が交錯する環境にあります。設計を手がけたのは建築家・五十嵐理人。五十嵐はこの場所にふさわしい“伸びやかで変化を受け入れる住まい”を構想し、二層吹抜の大空間「グランドルーム」を核とする住宅を生み出しました。
田園と住宅街の狭間に建つ開放的な家

敷地は田畑の風景を望みながらも、交通量の多い道路と私道に囲まれた角地。開放的である一方、周囲の視線や喧騒への配慮も求められる場所でした。

建築はそうした環境の中で、閉じすぎず、開きすぎないバランスを保ちながら、内外の関係を柔軟に変化させる構成が採用されています。

ファサードは周囲の景観に溶け込みながらも、内部に入ると一転して広がるダイナミックな空間が現れます。
住まいの中心に据えられた“グランドルーム”

この住宅の中心を成すのが、天井高約5メートルの吹抜大空間「グランドルーム」です。

リビングやダイニング、廊下、子どもの遊び場、さらには庭のような役割までを兼ね備えた多用途空間であり、建物の約半分を占めています。

空間は屋外と屋内、個と全体をつなぐ“余白”として機能します。用途を限定せず、日常の活動に応じて柔軟に形を変えていく点に、この住まいの本質が表れています。
“ジグザグ梁”が導く、構造と居場所のデザイン

大空間を支える構造的な工夫として採用されたのが、独自の“ジグザグ梁”。

梁と火打ち梁の役割を一体化したこの構造体は、強度と剛性を確保しながら、空間にリズミカルな奥行きを与えています。

視線が斜めに抜けることで、より広がりを感じさせる効果も生まれています。

また、この梁は照明レールを兼ねると同時に、人の居場所を示す“手掛かり”としても機能。構造体そのものが生活の指針となり、空間に秩序と柔軟性をもたらしています。
無機能の豊かさが生む、暮らしの余白

「グランドルーム / ハウス」は、明確な室名に縛られない構成をとっています。

リビングやダイニングといった機能的区分を持たず、空間そのものが多様な生活行為を受け止める“無機能の空間”として設計されています。

これにより、住まいは家族の成長や暮らし方の変化をしなやかに受け入れ、長い時間軸の中で更新され続ける余白を残しています。
ジグザグ梁がつくる秩序とリズムの家
「グランドルーム / ハウス」は、田園の開放性と住宅街の密度という相反する環境の中で生まれた、伸びやかで自由な住まいです。二層吹抜の“グランドルーム”が家族の活動を包み込み、ジグザグ梁がその場に秩序とリズムを与える。用途や時間に縛られないこの空間は、居住者の暮らしの変化を静かに受け止めながら、常に開かれた新しい生活の風景を描き続けます。