
ものづくりの街であり自然も豊かな静岡県浜松市にある個性豊かな建築3選。
静岡県浜松市は、楽器やオートバイ産業で知られる「ものづくりの街」である一方、豊かな自然に恵まれた土地でもあります。この街には、その土地の風土や文化、そして最先端の技術を反映した個性豊かな建築が点在しています。
1.秋野不矩美術館/藤森照信
浜松市天竜区に位置する浜松市秋野不矩美術館は、日本画家・秋野不矩の作品を収蔵・展示するため、1998年に開館しました。設計は、独自の世界観で知られる建築家、藤森照信が手掛けました。秋野不矩がこよなく愛したインドを想起させるような、土壁と焼杉板を組み合わせたユニークな外観が特徴です。建物は、周囲の里山風景に溶け込むように、自然素材をふんだんに使用しています。
内部空間は、土壁の温かみと、天井の梁が織りなす力強い構造美が印象的です。展示室には、秋野不矩の作品を鑑賞しやすいように、光の入り方を計算したトップライトが設けられています。特に、床面に敷き詰められた土は、足元から自然の感触を伝え、来館者に安らぎを与えます。藤森建築特有の、手仕事のぬくもりと自然との一体感を感じられる、心地よい空間が創り出されています。
参考:藤森照信が手掛けた二俣川の自然に溶け込む建築「秋野不矩美術館」
秋野不矩美術館
開館時間:9:30~17:00
休館日:月曜日
入館料:¥300
電話:0539-22-0315
URL : http://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/akinofuku/
住所:静岡県浜松市天竜区二俣町二俣130
2.サーラプラザ浜松/黒川紀章(改修設計/青木茂)
浜松駅前に立つサーラプラザ浜松は、1991年に黒川紀章が設計した「アクトプラザ」を、2006年に青木茂が改修した複合商業施設です。黒川紀章のオリジナルデザインである、ガラスと金属パネルを多用した未来的なファサードが特徴で、アクトタワーと共に浜松のランドマークとなっています。外観は、モジュール化されたパネルが繰り返し使用され、都市のダイナミズムを表現しています。
改修後の内部空間は、ガラスの吹き抜け空間が印象的で、自然光が降り注ぐ開放的なアトリウムが中心にあります。このアトリウムは、商業施設としての賑わいと、人々の交流の場としての機能を両立させています。また、黒川建築のメタボリズム思想を継承し、将来的な改修や増築に対応できるようなフレキシブルな構造も特徴です。青木茂による改修は、建物の持つポテンシャルを最大限に引き出し、現代的な商業空間へと進化させました。
浜松サーラ
開館時間 : 10:00-18:00
休館日 : 月曜日
TEL : 0120-203-226
所在地 : 〒435-0044 静岡県浜松市東区西塚町200 サーラプラザ浜松
3. ROKI Global Innovation Center/小堀哲夫
ROKI Global Innovation Center(ROKI GIC)は、濾過フィルターを製造する株式会社ロキの技術開発拠点として、2013年に竣工しました。設計は、若手建築家として注目を集める小堀哲夫が手掛けました。外観は、ステンレスメッシュとガラスで覆われた軽やかなデザインが特徴で、周囲の風景と一体化するような透明感を持っています。内部空間は、研究開発施設としての機能性と、働く人々が快適に過ごせるような居心地の良さが両立しています。
特に目を引くのは、屋内外を貫くような大きなアトリウム空間です。このアトリウムは、社員間のコミュニケーションを活発にするための「コミュニケーションハブ」として機能しています。また、自然換気や自然光を積極的に取り入れるなど、環境負荷を低減する工夫が随所に凝らされています。働く場所としての快適性を追求しつつ、企業のイノベーションを促すような、これからのオフィス建築のあり方を示すような、先進的なデザインが随所に光る建築です。
ROKI Global Innovation Center
これからの時代の建築のあり方を示す建築群
浜松市には、藤森照信の自然と手仕事の温かさが息づく美術館、黒川紀章の都市的なデザインを継承したサーラプラザ、そして小堀哲夫による先進的なイノベーション施設が存在します。これらの建築は、伝統と革新、自然とテクノロジーといった異なる要素を巧みに融合させています。文化や経済、そして人々の生活を豊かにする存在として、浜松の街に新たな価値をもたらしています。これらの建築を通して、これからの時代の建築のあり方を感じ取ることができます。