金沢出身の建築家・谷口吉生の建築も多数!有名建築家が手がけた石川県の建築10選。
石川県は、豊かな自然と歴史的な街並みが調和する魅力的な地域です。その風景を彩る建築物の中には、著名な建築家たちが手がけた珠玉の名作が数多く存在します。特に、金沢出身の世界的な建築家・谷口吉生の作品群は、石川県の建築文化を語る上で欠かせない存在です。今回は、日本を代表する建築家たちが手がけた石川県内の選りすぐりの建築を10選を紹介します。
1.21世紀美術館/SANAA
金沢の中心部に位置し、金沢城公園や兼六園と隣接する「金沢21世紀美術館」は、建築家ユニットSANAA(妹島和世+西沢立衛)が手掛けた、街に開かれた現代美術館です。特徴的なのは、そのシームレスな空間です。円形という形状は、どの方向からもアクセス可能で、美術館と街との境界線を曖昧にし、人々を自然に内部へと誘います。館内は、トップライトや光庭から降り注ぐ自然光で満たされ、明るく開放的な雰囲気です。大小様々な展示室が水平方向に配置されているため、企画展の内容に合わせて自由な順路を設定できるフレキシブルな空間構成となっています。まるで街を歩くように、自由に空間を巡りながらアート作品と出会うことができる、新しい美術館体験を提供しています。この街と一体化したようなデザインは、金沢の文化とアートの発信拠点として、多くの人々に親しまれています。
参考:SANAAによる画期的で金沢の街に開かれる公園のような美術館「金沢21世紀美術館」
21世紀美術館
開館時間:展覧会ゾーン:10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)※5/12〜5/31の間は休場
交流ゾーン:9:00~22:00 *各施設の開室時間はそれぞれ異なる。
休館日:展覧会ゾーン:月曜日(休日の場合は直後の平日)、
電話:0762202800
URL : https://www.kanazawa21.jp/
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
2.谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館/谷口吉生
金沢市出身の建築家、谷口吉郎がかつて暮らした邸宅跡に建てられた「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」は、その息子であり世界的な建築家としても知られる谷口吉生によって設計されました。建築と都市をテーマにしたミュージアムであり、金沢の魅力的な建築文化や街づくりについて深く学ぶことができる場です。同時に、谷口吉郎・吉生という二人の建築家の作品世界を堪能できる貴重な空間でもあります。
石張りの鉄筋コンクリート造とガラス張りの鉄骨造で構成され、展示空間を外気から守る構造となっています。正面の低い庇や縁側は、周囲の景観との調和を意識して軒の高さを抑えた設計が特徴です。館内には、谷口吉郎の代表作である迎賓館赤坂離宮和風別館「游心亭」の広間と茶室が忠実に再現されており、その空間美を感じることができます。谷口吉生の洗練されたデザインが、父・吉郎の建築作品を際立たせるように展示空間全体を構成しており、二人の建築家の才能が融合した空間体験を提供しています。
谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館
営業時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)
定休日:月曜日
電話番号:076-247-3031
公式サイト:https://www.kanazawa-museum.jp/architecture/
住所:石川県金沢市寺町5-1-18
3.鈴木大拙館/谷口吉生
金沢が生んだ世界的仏教哲学者、鈴木大拙の思想を伝える「鈴木大拙館」は、金沢出身の建築家・谷口吉郎の息子であり、自身も著名な建築家である谷口吉生によって設計されました。この施設は、大拙が世界に広めた「禅」の精神を国内外の人々に伝え、訪れる人々が静かに思索を深める場となることを目指して建てられました。
館内は、「展示空間」「学習空間」「思索空間」という3つの屋内空間と、「玄関の庭」「露地の庭」「水鏡の庭」という3つの庭園が回廊で結ばれた構成となっています。この回遊性のある空間構成が、訪れる人に多様な体験をもたらします。展示空間では、大拙の生涯や思想に関する資料が展示され、学習空間では、講演会やワークショップなどが開催されます。そして、最大の特徴とも言えるのが「思索空間」です。水面に囲まれた静謐な空間は、訪れる人に深い静寂と内省を促します。
それぞれの庭もまた、禅の精神を表現する重要な要素です。「玄関の庭」は訪れる人を迎え入れ、「露地の庭」は静かな散策を促し、「水鏡の庭」は水面に映る景色を眺めながら瞑想する空間を提供します。建物と庭園が一体となった空間全体で、大拙の思想を感じ、自己と向き合う時間を持つことができる、それが鈴木大拙館の魅力です。
鈴木大拙館
営業時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)
定休日:毎週月曜日、年末年始、展示替期間
電話番号:076-221-8012
URL:https://www.kanazawa-museum.jp/daisetz/index.html
住所:石川県金沢市本多町3丁目4番20号
4.加賀片山津温泉・総湯/谷口吉生
「加賀片山津温泉・総湯」は、柴山潟のほとりに建つ、ガラス張りの外観が印象的な温泉施設です。世界的建築家・谷口吉生によって設計され、周辺の自然と調和したモダンなデザインが特徴です。
この建築は、「葛西臨海公園展望レストハウス」のように柴山潟、空、森といった周囲の自然環境に溶け込むように、ほとんどがガラスで覆われています。内部も要素を極力削ぎ落としたミニマルな表現で、洗練された空間。内部からは、雄大な白山連峰を背景とした美しい柴山潟の眺望を楽しむことができます。特に、浴槽と柴山潟が一体化するように見える「潟の湯」は、まるで湖に浸かっているかのような開放感を味わえます。もう一つの浴室「森の湯」は、緑豊かな景色を眺めながらゆったりと過ごせる癒やしの空間です。
加賀片山津温泉・総湯
営業時間:6:00~22:00
URL:http://sou-yu.net/
住所:〒922-0412 石川県加賀市片山津温泉65−2
5.北國銀行武蔵ヶ辻支店/村野藤吾
金沢の台所、近江町市場のほど近くに佇む「北國銀行武蔵ヶ辻支店」は、日本を代表する建築家・村野藤吾の初期の傑作として知られています。昭和7年(1932年)に竣工して以来、現役の銀行として金沢市民に利用され続けており、街の風景に溶け込んでいます。
特徴的なのは、正面に並ぶ3つのアーチ窓が織りなす優美なファサードです。モダニズム建築でありながらも、村野藤吾らしい装飾的な要素が随所に見られ、時代を超えて人々を魅了します。均等に配置された5つの窓と、船底を思わせる独特な形状の3つのアーチ窓の組み合わせは、シンプルながらも洗練された印象を与え、新しさと懐かしさが同居する独特の雰囲気を醸し出しています。
北國銀行武蔵ヶ辻支店
営業時間:平日9:00〜15:00
定休日:火曜日
電話番号:076-262-2161
URL:https://sasp.mapion.co.jp/b/hokkokubank/info/1102/
住所:石川県金沢市青草町88番地
6.石川県金沢港大野からくり記念館/内井昭蔵
金沢港に位置する「石川県金沢港大野からくり記念館」は、体験型のからくりミュージアムです。日本建築史に名を刻む内井昭蔵が設計を手がけ、北前船をモチーフにした外観は、日本海に突き出すように佇み印象的です。木造立体トラス構造による開放的な内部空間は、訪れる人々を驚かせます。
館内では、幕末のからくり師・大野弁吉が製作した精巧な「からくり人形」や、ユーモラスな機巧人形「芋掘り長者」などを展示。単に展示を見るだけでなく、実際に触れたり、動く様子を見学したりと、からくりの世界を体感できます。子供から大人まで楽しめる、体験を通して日本の伝統技術に触れられる施設です。
石川県金沢港大野からくり記念館
営業時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
定休日:水曜日
電話番号:076-266-1311
公式サイト:http://www.ohno-karakuri.jp/
住所:石川県金沢市大野町4丁目甲2番29
7.石川県九谷焼美術館/象設計集団
「石川県九谷焼美術館」は、加賀市の「古九谷の杜親水公園」内に位置し、公園と一体化した景観が特徴の美術館です。設計は象設計集団が担当。
外観は、削り仕上げのコンクリートと杉板、色鮮やかな陶器タイルの組み合わせが印象的で、地域の素材を活かしたデザインとなっています。内部は、展示室が作品の色使いごとに「青手の間」「色絵の間」「赤絵の間」と分けられ、それぞれの空間で異なる雰囲気。2階の休憩フロアは、幾何学模様の天井が特徴的な優雅な空間となっており、ショップや茶房「古九谷」でくつろぐことができます。
石川県九谷焼美術館
開館時間:9:00~17:00
休館日:月曜日
URL:http://www.kutani-mus.jp/ja/
住所:〒922-0861 石川県加賀市大聖寺地方町1−10−13
8.金沢海みらい図書館/堀場弘+工藤和美/シーラカンスK&H
工藤和美と堀場弘による建築家ユニット、シーラカンスK&Hが設計を手がけた「金沢海みらい図書館」は、その独創的なデザインで国内外から高い評価を受け、2012年には「世界で最も美しい公共図書館25選」にも選出されました。
「ケーキの箱」をコンセプトにデザインされた建築は、一辺約45メートル、高さ19メートルの白い立方体というシンプルな外観が特徴です。その外壁には約6,000個もの丸い穴が穿たれており、この穴を通して内部に自然光が降り注ぐ仕組みとなっています。この「穴あき壁」は、構造体と採光のバランスを緻密に計算した結果生まれたもので、柔らかな光が均一に広がる空間を実現しています。
館内に入ると、天井高12メートルの開放的な大空間が広がります。無数の穴から差し込む光は、まるで木漏れ日のようで、読書に最適な落ち着いた環境を作り出しています。この光に満ちた空間は、訪れる人に安堵感を与え、書物と向き合うための心地よい時間を提供します。地域コミュニティの核となるべく計画されたこの図書館は、その美しいデザインと快適な空間で、多くの人々に親しまれています。
金沢海みらい図書館
営業時間:平日10:00〜19:00/休祝日10:00〜17:00
休館日:水曜日
電話番号:076-266-2011
公式サイト:https://www.lib.kanazawa.ishikawa.jp/?page_id=118
住所:金沢市寺中町イ1番地1
9.中谷宇吉郎雪の科学館/磯崎新
「中谷宇吉郎雪の科学館」は、世界で初めて人工的に雪の結晶を作ることに成功した物理学者、中谷宇吉郎の業績を記念して建てられた科学館です。その建築は、世界的建築家・磯崎新によって設計され、雪の結晶をモチーフとした独創的なデザインが特徴です。
外観で最も目を引くのは、3つの六角形の塔が連なるように配置された構成です。これらの塔は、雪の結晶の六角形を象徴的に表現しています。外壁には木材が多用され、経年変化により周囲の自然環境と調和した温かみのある外観を作り出しています。内部空間も、雪の結晶を意識したデザインが随所に見られます。特に、窓の形状は雪の結晶を模しており、太陽光が差し込むと、結晶の影が館内に落ちるという仕掛けが施されています。
磯崎新は、この建物を「雪を受ける両の手」と表現しており、自然素材を多く用いることで、建物が古くからその場所に建っていたかのように感じられることを意図したと語っています。
中谷宇吉郎雪の科学館
開館時間:9:00~17:00
休館日:水曜日
URL:https://yukinokagakukan.kagashi-ss.com/
住所:〒922-0411 石川県加賀市潮津町イ−106
10.石川県能登島ガラス美術館/毛綱毅曠
「石川県能登島ガラス美術館」は、建築家・毛綱毅曠によって設計された、独創的な外観を持つ美術館。風水の思想、特に平安京の都市計画にも用いられた「四神相応」(東に青龍、西に白虎、南に朱雀、北に玄武を配する)という考え方を建築に取り入れているのが最大の特徴です。
複数の棟を廊下で繋いだ構造は、「四神相応」を象徴的に配置したものと言われています。実際の方位とは異なりますが、建築全体のバランスを考慮して配置されているのが特徴です。球体や円形を多用した前衛的なデザインは、宇宙基地を彷彿とさせ、訪れる人に強い印象を与えます。また、広大な庭園も特徴的で、人工池とガラスロードによる光の演出や、池と遠くの海を一体化させる演出など、「人工と自然」をテーマにしたデザインとなっています。
石川県能登島ガラス美術館
URL:https://nanao-af.jp/glass/
住所:〒926-0211 石川県七尾市能登島向田町125部10番地
魅力あふれる珠玉の建築が点在する石川県
石川県には、谷口吉生をはじめとする著名な建築家たちが手がけた、魅力あふれる建築が点在しています。これらの建築を通して、石川の歴史や文化、そして自然の美しさをより深く感じることができるはずです。