2024年にプリツカー賞を受賞した建築家・山本理顕のコミュニティを創出する建築8選!

中華民国北京市に生まれ、日本大学などで建築を学んだ後に公共の建物や個人の住宅など数々の設計に携わった日本人建築家の山本理顕。2024年には建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞するなど、日本だけでなく世界的にも高い評価を得ています。

今回は、そんな世界中から評価されている日本人建築家・山本理顕が手掛けてきた建築8選を紹介します。

2024年のプリツカー賞を受賞した建築家・山本理顕

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山本理顕の建築は、ガラスで覆われた箱型のスタイリッシュな建築物や、開放的な空間を取り入れていることが特徴です。

そして山本理顕が重視している、地域コミュニティを再構築する「地域社会圏」は、プリツカー賞への受賞に大きく繋がった考え方で、山本理顕が手掛ける多くの建築物は、この地域と個の関係性をはじめとしたコミュニティのつながりが垣間見える建築物となっています。

1.常に外部と接することができる「熊本県営保田窪第一団地」

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熊本県営保田窪第一団地は、110世帯の鉄筋コンクリート造の集合住宅です。熊本アートポリス事業の一環として建設され、くまもとアートポリスの最初の集合住宅となっています。

特徴は、従来の「団地型」の配置とは異なり、各住戸が中央広場を囲むように配置されていること。各住戸には中庭や広いテラスがあり、常に外部と接することができるようにおり、110世帯全員のふれあいの場になるように期待されて作られています。公共住宅としては、かつてないほどの大きな専用空間を持っています。

2.全ての人々が1つの空間を共有する「公立はこだて未来大学」

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北海道函館市にある「公立はこだて未来大学」は、山本理顕の特徴である箱型をした建物と、正面のガラス張り特徴的なスタイリッシュな建築物です。

ガラス張りは、函館山の景色を見渡せるように設置され、室内の「スタジオ」と呼ばれる大空間は、高さ約20メートル・幅約100メートルの大きくて広い吹き抜けが開放感を演出しています。

人々の視線や活動がまじりあうこの大空間は、そこにいる全ての人々が1つの空間を共有する感覚を生み出すようにと作れました。

公立はこだて未来大学

住所:〒041-0803 北海道函館市亀田中野町116−2 116 2
電話番号:0138346448
HP:http://www.fun.ac.jp/

3.映画やドラマのロケ地として使用される「埼玉県立大学」

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埼玉県越谷市にある「埼玉県立大学」は、ガラス張りの外観や芝生で緑化された屋上、吹き抜けの通路などが特徴的な建築物です。

周辺は住宅地や、北・西側には水田が広がっており、なるべく低い建物を敷地いっぱいに建てようと考えて作られました。北側が大学棟、南側が短大棟で、2つの棟の間には図書館や実験・実習室が設けられており、ほとんどの建物からは2階部分の屋上デッキからアプローチをすることができ、学生たちは自由に行き来ができます。

優れたデザインの建築物であることから、映画やドラマのロケ地として使用されることが多い建築物として注目を集めています。

埼玉県立大学

住所:〒343-8540 埼玉県越谷市三野宮820
電話番号:0489710500
HP:http://www.spu.ac.jp/

4.周囲の美しい自然と一体化した「横須賀美術館」

横須賀美術館
山本理顕が手がけた「横須賀美術館」は東京湾を望む豊かな自然環境に浮かぶショーケースのよう。

神奈川県横須賀市にある「横須賀美術館」は、“環境全体が美術館”をテーマに周囲の海や森と調和する開放的な美術館です。

周囲は山と川に囲まれた豊かな環境であったので、建築も環境と調和するような工夫がなされています。その1つに、建物の約半分を地下に埋め込むことで高さを抑え、周囲の森や海と調和した印象に。建築は外側がガラス、内側が白い鉄板というダブルスキンの構造になっており、その理由には内部に光を取り入れるためや海水の塩害による経年劣化を防ぐことなどが、理由として挙げられています。

そして目の前には東京湾と観音崎公園の豊かな自然が広がっており、まさに周囲の自然と一体化した建築物です。

参考:山本理顕が手がけた「横須賀美術館」は東京湾を望む豊かな自然環境に浮かぶショーケースのよう。

横須賀美術館

住所:〒239-0813 神奈川県横須賀市鴨居4丁目1
電話番号:0468451211
HP:https://www.yokosuka-moa.jp/

5.北風から校舎を守る巨大な湾曲壁が特徴「岩出山中学校」

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宮城県大崎市の小さな町に建てられた「岩出山中学校」は、強い北風から校舎を守る巨大な湾曲壁「風の翼」と呼ばれる環境装置が特徴的な建築物です。

町のシンボルともなっている「風の翼」は、北風が強く、雪も降る地域ならではの環境装置で南側の反射光を教室の中に入れる役割を果たしています。

鉄骨とコンクリートのむきだしになった外観は、素材の特徴を生かした斬新なデザインであり、室内は開口部が多いことも印象的で、まさに山本理顕らしい建築物です。

岩出山中学校

住所:〒989-6461 宮城県大崎市岩出山松沢202−1
電話番号:0229724441
HP:http://www2.educ.osaki.miyagi.jp/iwadeyama-c/index.html

6.外壁が全てガラスで覆われている「広島西消防署」

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「広島西消防署」は、地下1階、地上8階建ての外壁が全てガラスで覆われており、ビルの中の様子が建物の外から見えるように設計された建築物です。さらに地下1階から地上8階まで吹き抜け構造で、外壁がなく、開放感あふれる空間となっています。

一般的にイメージする消防署の印象を覆すこの建築物は、消防署としての機能の他、救急救命士の養成学校、西消防団福島分団研修室、救急教育センター、消防音楽隊レッスン室を併設した多目的の庁舎です。

いつでもだれでも気楽に訪れることができ、地域と社会、個人を緩やかにつながることができる建築物として高い評価を得ています。

広島西消防署

住所:〒733-0023 広島県広島市西区都町43−10
電話番号:0822320381

7.市民が親しみやすい雰囲気を放つ「福生市庁舎」

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東京都福生市の「福生市庁舎」は、周囲の低層ビルを引き立てるため、1つの高層タワーではなく2つの中層タワーとして設計された建築物です。うねるマウンドの上に建てられ、煉瓦タイル貼りの2つのタワーが設けられました。そしてこのタワーの間には広場を設け、市民がイベントを開催することもできます。

赤みがかった茶色のレンガタイルの外観は可愛らしく、曲面で作られている床と外壁の取り合い部分が床から盛り上がっているユニークな形状は、洗練されつつ落ち着いた雰囲気の福生の街と調和しています。

福生市庁舎

住所:〒197-8501 東京都福生市本町5
電話番号:0425511511
HP:http://www.city.fussa.tokyo.jp/

8.地下鉄駅の真上に建てられた「名古屋造形大学」

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大きな屋根が浮いているような印象を与える名古屋造形大学は、地下鉄駅の真上に建てられました。地下鉄の直上には荷重制限などがあることや様々な制約のある敷地ということで、山本理顕は上部に広い面積を取ることができるゲート状を採用しました。

1階には、通路兼広場に小スペースをちりばめた「アートストリート」が、4階は5つの領域が大空間を共有する「スタジオ」となっており、領域を超えたプロジェクトが生まれることが期待されています。

名古屋造形大学

住所:〒462-0846 愛知県名古屋市北区名城2丁目4番1
電話番号:0529081630
HP:http://www.nzu.ac.jp/

プリツカー賞を受賞した建築家・山本理顕のコミュニティを創出する建築8選

“家族で住むことを前提とせず、周辺環境との関係を重視し、住民同士が助け合う”。そんな彼の思想である「地域と個の関係性」によって手掛けられた建築物は、人々が集まり交流する機会を増やす役割を果たしながら、つながりをより深くしてくれることでしょう。今後も世界中の人々を驚かせるような美しい建築を生み出してくれるのか楽しみです。