アーティスト・内藤礼と建築家・西沢立衛による「豊島美術館」はアートと建築、自然が一体となった建築。
美術館そのものがアート作品として知られる、豊島美術館。豊島美術館は、造形やインスタレーション作品を制作する内藤礼と建築家の西沢立衛の協働で生まれました。季節や時間の経過で変化する豊島美術館は、どのような特徴があるのでしょうか。
周囲の自然と一体化した美術館
建築物とアート作品に加え、周囲の自然を一体化させることを目標にして制作された豊島美術館。豊島美術館は、瀬戸内海東部にある豊島にあります。豊島は湧水が豊富で、かつては農業や酪農が盛んな島でした。昔の景観を取り戻すため、豊島美術館の運営元である福武財団は、田畑や棚田を再生させます。その後、環境と調和した豊島美術館が生まれました。
2010年からは瀬戸内国際芸術祭の会場になったことからアートの島とも呼ばれ、豊島美術館を中心に人気を集めています。
内藤礼の代表的作品である、豊島美術館の母型は、水滴のような形をした建築物です。地下から湧き出る井戸水が作品の一部になっているのが特徴です。床には直径2ミリの孔が186ヶ所あり、そこから不規則に水が湧き出ます。水の小さなつぶが床の起伏で集まり、泉が生まれる瞬間がアート作品になっているのが特徴です。天井上部は開口部があり、雨の日には雨と湧き出る水が一緒になって流れる様子や天気のいい日には光を感じられるなど、その天候や季節によって異なる情景を目にすることができるでしょう。地下水はやがて蒸発し、雨となって作品に戻るという自然環境の循環も感じられる作品です。
西沢立衛によって設計された美術館は、水滴が床に落ちた時のような造形です。広さは約60メートル程度、高さは4.5mのシェルコンクリートで作られています。
豊島美術館のコンクリートシェルは、つなぎ目や柱もなく、自然に一体化するようなデザインです。
基礎配筋とコンクリート打設後には、土台となる土を盛って作られました。なめらかな局面を出すために、3600カ所の測量を行なっています。コンクリートを一度で打たなければならないため、船が使われる大規模な工事となりました。使用された鉄筋量は170トン、430立方メートルのコンクリートと巨大な造形物ですが、アートと建築物、周囲の自然がうまく融合した環境を作り出しています。
豊島美術館の楽しみ方
豊島美術館の楽しみ方は、美術館だけではありません。美術館前にある坂道は左手に棚田と目の前に海が広がる壮大な風景が見もののスポットです。さらにチケットを購入するチケットセンターから美術館までは長い遊歩道が続き、途中には瀬戸内海を一望できるスポットがあります。美術館の周囲には豊島の美しさを感じられるエリアが多数存在。自然を通して豊島美術館のコンセプトを実感できるでしょう。
美術館にたどり着くまでの過程で、自然を肌で感じることができます。豊島美術館は、朝や夕方と訪れる時間によって泉の大きさや光の入り方が変わるのが特徴です。再入館が可能なので、1日の違う時間に訪れる人も多く、その違いを楽しんでいるようです。自然と一緒に存在する豊島美術館は、訪れるたびに違う発見がある変化する美術館です。
併設されている豊島美術館カフェは、お茶の時間を楽しめるほか、グッズも販売されています。美術館と同じように靴を脱いで入るスタイルのカフェは、コーヒータイムやミュージアムショップでの買い物を楽しみながら、作品の余韻に浸れる空間です。
アーティスト・内藤礼と建築家・西沢立衛が創る豊島美術館
豊島美術館は、アーティスト内藤礼と建築家西沢立衛の協働により生まれた美術館です。自然と融合した豊島美術館は、時間と季節によってその変化が楽しめる新しい美術館。美術館だけでなく、周囲の自然も作品の一部となっています。
豊島美術館
開館時間:3月1日〜10月31日10:00〜17:00(最終入館16:30)
11月1日 〜 2月末日10:00〜16:00(最終入館15:30)
休館日:火曜日
URL: https://benesse-artsite.jp/art/teshima-artmuseum.html
住所:香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃607