〈MOMENT〉によるイッセイミヤケの台湾大都市店舗「ISSEY MIYAKE市政ブティック」

デザイナー・平綿久晃と渡部智宏によるデザインオフィス〈MOMENT〉。株式会社イッセイ ミヤケの国内外にある複数ブランドの店舗デザインを筆頭に、多種多様な企業、ブランドに対して空間からグラフィックまで垣根のないシームレスなコミュニケーションを提案しています。＜MOMENT〉が店舗デザインを手掛けた台湾・台中市の「ISSEY MIYAKE市政ブティック」は日本の伝統的な金工技法にインスピレーションを得た、モダンな中に日本らしい技巧が取り込まれた空間となっています。

2つのブランドから成る2層の空間

「ISSEY MIYAKE市政ブティック」は台湾・台中市の開発が進む街区にあります。高層ビルの左棟1階にBAO BAO ISSEY MIYAKE、2階にHOMME PLISSE ISSEY MIYAKEが入り、両者が内階段で繋がる構成となっています。

BAO BAO ISSEY MIYAKEは、三角形のピースが集合し、自在にかたちを変えるバッグのライン。アイテムが職人の丁寧な手仕事から生み出されることから、空間デザインについては日本の伝統的な金工技法の一つ“鎚起“に着目し、1枚1枚鎚起を施したアルミニウム板を壁や棚に用いて、モダンさの中に職人のスピリットをじわりと感じさせるデザインを行っていました。

この店舗も同様のデザインをベースに、広い窓を介して台湾の街の風景が重なるように設計し、自然光を取り入れて居心地を高めています。

HOMME PLISSE ISSEY MIYAKEは、プリーツ技術を用いた軽く、快適で、しわにならない高機能なメンズ服ライン。

店内は、墨色に染色した杉材に浮造りを施して仄暗さと重厚さをつくり、男らしさと服の軽さを引き立てるデザインとなっています。

シンプルながらも什器の形状や繊細な色使いからブランドのデザインへのこだわりが感じられます。

空間と空間、文化と文化の繋ぎ目となる蛇紋岩

どちらの空間も日本の伝統的な技法を駆使した素材使いによって、イッセイミヤケが日本のブランドであることを強調しています。

そして、上下階を繋ぐ階段には、台湾で採掘される蛇紋石が用いられています。台湾蛇紋は蛇紋岩という種類の岩石で、濃淡様々な美しい緑色が特徴です。上品な蛇紋岩の存在が上階への意識を高め、上下階の結びつきを強固のものにしています。

異国の文化を取り入れつつ、日本の香りを纏った空間

〈MOMENT〉らしく、クライアントのこだわりやストーリーを深掘りし、その本質を落とし込んだ空間に、現地の地域性をさりげなく取り入れることで違和感なくその街に溶け込んだ「ISSEY MIYAKE市政ブティック」。ブランドのオリジナリティを崩すことなく、その土地の個性も取り込んだ店舗デザインは、世界で人気を集めるイッセイミヤケらしさが感じられる空間です。