建築家・島田陽が手がけた「ハミルトンの住宅」でオーストラリアの雄大な自然を全身で感じる
建築家・島田陽は1972年 兵庫県神戸市産まれ。1997年に京都市立芸術大学大学院卒業。同年にタトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所を設立。「六甲の住宅」でLIXILデザインコンテスト2012金賞、第29回吉岡賞受賞。「石切の住宅」で日本建築設計学会賞大賞。そして今回紹介する「ハミルトンの住居」では4つの賞(House of the Year Award, AIA Brisbane Regional Awards/State Award, AIA Queensland Architecture Awards/National Commendation, AIA National Architecture Awards)を受賞している。
豊かな自然を目ではなく全身で感じる住宅
この住居の特徴を最大限に引き出しているのが、住居が立地している斜面が生み出す他住居との高低差だ。傾斜地は高低差を生み出すとともに、オーストラリアの自然豊かな住宅地を美しい眺望へと変化させる。
住宅に周囲の環境を取り込む工夫として多く見受けられるのが大きなガラス窓の取り付けだ。しかし、この住居は大きなガラスの引き戸を取り付ける一方、各階に広々としたテラスを設けている。ガラス窓を取り付けるだけでは視覚的な要素しか住宅に取り込むことができないが、テラスを設けることで視覚的要素だけでなく、自然の匂い、音、風など目だけではなく五感を使って全身でオーストラリアの雄大な自然を感じることができる。
周囲の環境を効果的取り入れるために施されてる工夫がもう一つある。それは、テラスと部屋の床がフラットに連続している点だ。床をフラットにすることで部屋(内部)とテラス(外部)の境界が曖昧になり、家に住んでいるのではなく、自然の中に住んでいるかのように錯覚する。
テラスを設けて住居を外部に開放している分、建築内部にはしっかりとプライベート空間も作られている。
敷地を最大限に生かす建築家・島田陽の設計
建築家・島田陽は建築設計を「敷地を愛する方法をみつけること」と定義しており、家が立つことで周囲の町がよくなっていくこと、居住者が生活を通じて町や敷地を徐々に好きになっていくこと、この2点が重要であると考えている。ハミルトンの住宅はそんな島田陽のモットーをしっかりと体現。
敷地の傾斜を最大限に生かし、オーストラリアの豊かな自然環境を住居に取り込むことで、自然の中で暮らしていると錯覚させ、居住者が地域全体を住まいとして好きになっていく。彼の、敷地を活かした設計には今後も目が離せない。