中原慎一郎が手がけた、シャープでありながらカジュアルな雰囲気の「駒沢の住宅」
ランドスケーププロダクツ・ファウンダーの中原慎一郎は1971年鹿児島県生まれ。大学卒業後に上京し、家具デザインに興味を持った彼は、1997年にランドスケーププロダクツを結成する。彼が手がけるのは建築・インテリアだけではなく、エキシビションやイベントのプロデュース、飲食店経営など多岐に渡り、自らの興味を持ったものに忠実に活動を続けている。そんな彼が手がけたのが、駒沢の住宅だ。
中原慎一郎が主宰するランドスケーププロダクツは2000年にPlaymountainをオープンする。そこで販売されている家具等はシンプルさを基調にしたモダンなデザインだが、単に機能的で合理的なだけでなく、人の心をときめかす何かを備えており、どんなアイテムと合わせてもしっくりとなじむ自由さがある。そんな世界観が駒沢の住宅には詰め込まれている。
Playmountainのアットホームな世界観
Playmountainのデザインで特徴的な点は「シャープさとカジュアルさのバランスが巧みな点、使いやすさ重視の機能的な空間に木目など自然の要素を取り入れる点が特徴だろう。しかしより明確なのは外観や素材の特徴よりも、誰にも身構えさせることのない空気感だ。」(公式サイトより)と述べられている。そんなPlaymountainの世界観で設計された駒沢の住宅で注目するべき点は「ヒースセラミックスタイル」「木製の引き戸」「家具のレイアウト」。この3つだ。
ブラウンレッドのセラミックタイルが空間にメリハリを生む
施主は Playmountainと同様、ヒースセラミックスの世界観も好んでおり、この住宅の設計にはヒースセラミックスの淡くも、鈍い光沢のある美しいセラミックタイルが用いられている。駒沢の住宅で最も異彩を放っているのがこのブラウンレッドのセラミックタイル。木を基調とした空間の中に少しトーンを抑えた暖色を入れることで空間にメリハリが生まれている。ヒースセラミックスとPlaymountainの世界観を同じ空間に落とし込めている大きな理由は、しっかりとした世界観がありつつも、決して周囲にデザインを押し付けることのないランドスケーププロダクツの設計センスにある。
洗面所にはネイビーのセラミックタイルを使用。キッチンとはまた違った、大人びた雰囲気を作り出している。
扉の向こうへの興味を引き出す木製の引き戸
木製のフローリングに連続して現れるのがこの木製の引き戸。引き戸全体を木製にすると、目の前に木製の壁面が現われているように見える。壁面がアクセントになるだけでなく、木製であることがそこに引き戸があることを強調し、奥にある部屋の存在に対する興味がうまれる。
調和する表情豊かな家具と空間
アッシュグレーの扉に合わせるように、入り口の手前には同系色のソファーと机をレイアウト。その下には、ワインレッドのラグが敷かれている。家具の張り地には基本的にグレー、ブラック、ブルーの同系色を、ラグはキッチンのブラウンレッドと同系色のワインレッドを。一見バラバラに見える配色だが、空間全体にはしっかりと統一感がある。
中原慎一郎が手がけた「駒沢の住宅」は、住む人、訪れる人に好奇心を持たせる設計になっていた。