建築家・石上純也が手がける、見えない自然空間を作り出す神奈川工科大学「KAIT広場」
建築家・石上純也は1974年神奈川県生まれ。2000年東京藝術大学大学院建築科修士課程終了。2000~2004年妹島和代建築設計事務所勤務。2004年石上純也建築設計事務所設立。主な作品に、神奈川工科大学KAIT工房、Vijversburgビジターセンター(オランダ)、ボタニカルガーデンアートビオトープ/水庭、2019年サーペンタインギャラリーパビリオンなど。2008年に竣工した神奈川工科大学KAIT工房で2009年日本建築学会賞を受賞している。その他、2010年ヴェネチア・ビエンナー レ第12回国際建築展金獅子賞、2010年毎日デザイン賞、2019年Obel Awardなど受賞多数。
今回紹介するのは、上記のような多くの実績を残す建築家・石上純也が手がけた神奈川工科大学多目的ホール。通称KAIT広場だ。壁面がホワイトで覆われたこの白いボックスの中には一体どんな空間が隠されているのだろうか。
白いボックスの中に隠された柱のない巨大空間
神奈川工科大学野球場の隣に異様な存在感を放つ建物がある。この白いボックス状の建物は通称KAIT広場と言われ、多目的ホールとして活用されている。
全体は約4100平米と広々とした空間だが、天高は2.4mと一般的な住宅の天井高と変わらないスケールになっている。建物内には大きな天井を支える柱はなく、障害物のない白く美しい空間だけが広がっている。
自然を人間のスケールに取り込む設計
この建物で特徴的な点は主に2つだ。「天井に開けられた四角い窓」と「床と天井の傾斜」だ。
風や日の光を取り込む四角い窓
大きな天井に開けられた無数の四角い窓が空間に取り込むもの、それは風と日光だ。晴れの日は時間の経過とともに、差し込む日光の光の濃淡を感じることができる。そこに吹く風は時間の流れを忘れさせるほどに心地が良い。山や川といった自然空間の中で心地の良い時間を過ごした経験は誰にでもあると思うが、この建物ではそれと同等か、それ以上の心地よさを体験することができる。四角い窓は自然を人間のスケールに落とし込む役割を果たし、訪れる人全てに、まるで自然の中にいるかのような心地よさをもたらしてくれる。
思いのままの時間を過ごすための床の傾斜
この建物の床は敷地のなだらかな傾斜に沿って作られている。自然の丘で寝転んだり、座ったりすることができるように、この建物内でも思いのままに時間を過ごすことができる。床でくつろぐ人々に天井から差し込む日光と風、ホワイトで覆われた白の空間の中に見えない自然の景色が見えてくるような設計になっている。
神奈川工科大学KAIT広場
- 住所 〒243-0292 神奈川県厚木市下荻野1030