北欧フィンランドらしい森と共存するアルヴァ・アアルトの建築群「ユヴァスキュラ大学」

フィンランド国内でも修士課程までをまかなう教育機関として重要な役割を持つ「ユヴァスキュラ大学」。北欧建築の巨匠アルヴァ・アアルトとも所縁の深いユヴァスキュラにある高等教育機関であるユヴァスキュラ大学もアアルトによる建築が数多く残っており、今尚現役で多くの学生に実際に使われ、愛されています。1951年の設計競技によりアアルトが勝利し、本館や図書館など7施設の設計を手がけました。

アルヴァ・アアルトの建築群「ユヴァスキュラ大学」

ユヴァスキュラの街の西端に位置するユヴァスキュラ大学のキャンパスは、森と湖に囲まれたユヴァスキュラの落ち着いた雰囲気にとても馴染んでいます。キャンパスは、陸上競技用のトラックを中心にその廻りを馬蹄形に囲むように建築が配置されています。

一つ一つの建築は、適度に距離を取って配置されていて、森と共存する建ち方が集落的でもあるのでキャンパスと言うよりも「家」のような落ち着いた存在のようにも思えてきます。

赤レンガの外装はフィンランドの伝統的なマテリアルだが、ファサードには北欧建築では有効的に多用されるハイサイドライトが実装され、アクセントになっている。

造形はモダニズムでありながらも北欧らしい優しい雰囲気が漂っています。

キャンパスのメインビルディングと諸室を隔てるホールはトップライトからの自然光と外壁と同じレンガをインテリアに使っているので、外部空間のようで気持ちが良いです。こんなキャンパスで過ごせる学生さんは幸せですね。

キャンパスの中は木をマテリアルに使った柔らかい空間造りになっています。

身体的なスケールと緑を取り込む内部空間が素敵

講堂もあるメインビルディングは、天井の高い1階部分がガラスのカーテンウォールで覆われていて、周囲の緑豊かな森の風景を取り込み、素敵な内部空間を作り出しています。

白い空間に対して、アアルト建築の階段にしばしば見られる木のルーバーやartek の木製の家具がアクセントになっています。ガラスのカーテンウォール越しに森の風景が背景になっているのも清々しいですね。

講堂のホワイエ脇にあるカフェは、住宅のようなスケール感で居心地が良く、家具ももちろんartek のものが使われています。

テーブルの高さ分掘り込んであるので、芝生や森と視線がフラットにつながります。身体スケールを意識した家具造りのような空間造りがアアルトの建築の魅力の一つですが、大学のキャンパスのような大きな建築でも丁寧に設計されていました。

講堂の中もモダンでありながら、北欧建築ならではの柔らかい空間造りがなされています。

フィンランドらしい趣きのある学生寮

キャンパス内の中央トラックに沿って設けられたメインストリートを歩くと、右手に見えてくるのがこの学生寮。 学生寮だからといって簡素な建物ではありません。しっかりとした煉瓦貼りに重厚な木製サッシが取り入れられ、フィンランドらしい趣きのある、学生寮とは思えないほど立派な印象を受けます。

抑えられた照明と低めの天井で居心地のいい学生食堂

寮の隣には食堂があります。煉瓦の壁に大きなガラス窓が特徴的な外観。周りの樹々の風景を反映し、環境に溶け込んだ優しい雰囲気に。

煉瓦の壁と、構造架構である木をそのまま表した天井。トラスの下の材が比較的に低めに設定されているものの食事をするには問題なく、むしろ開けた視界でオープンな空間に程よい存在感をもたらし、居心地の良さが感じられます。

ハイサイドライトから光が差し込む煉瓦が使われた室内では、暖かく優しい時間が流れます。 写真手前はガラスの開口部になっており、食事や談笑中にも自然を眺めることができ、豊かな学生生活を送れそうです。

広々とした開放感のある体育学部棟

学生寮の反対側にはキャンパス体育学部棟があります。

内部はアアルトならではのあたたかみのある空間が広がります。ホールの中央には2段の階段。奥の階段にはトップライトからの光が入り、明るく照らされているので、自然と目線が明るい方へと向かい、上階へと誘われるよう。その階段の左側のガードマンボックスも大きなガラスで囲まれた柔らかいデザインです。

中に入ると白い空間に木の什器が配置していある綺麗な空間が広がっており、優しい雰囲気にまとめられています。

電話機が置かれていた空間もアアルトらしい木と白でまとめられたシンプルであたたかなデザインになっています。

食堂やカフェにはartekの家具が用いられ、やわらかい雰囲気の空間にとても馴染みます。

2階フロアに上がると丸くくり抜かれたトップライトからの自然光で明るい空間が現れます。

照明も連続する丸いダウンライトでリズム感があり、全体的に白い空間なので照明や自然光が反射して透明感が感じられます。

アアルトが唯一設計した屋内プール「アアルト・アルヴァリ」

キャンパス内にある市民プールもアアルトの設計。このプールにはジム、屋内運動場、カフェも併設されています。

ラウンジスペースにもartekの家具が配置されています。

プール内部はモダニズムに忠実なミニマルなデザインですが、レンガなどアクセントになる場所には、素材感を生かしたマテリアルを取り入れていました。

プール内の食堂もartekの家具でまとめられています。プールの青が映える中でも丸みのある照明や家具などのインテリアによって、あたたかな雰囲気に。運動前後の時間がより豊かに過ごせそうです。

アアルトの建築的な特徴が集約されたキャンパス

アルヴァ・アアルトがデザインした建築群がある「ユヴァスキュラ大学」は、アアルトの建築的な特徴が集約されたキャンパスです。

Jyväskylän yliopisto – ユヴァスキュラ大学

住所:住所:Seminaarinkatu 15, 40014 Jyväskylän yliopisto, Finland