現代日本の課題に建築で向き合う。「en[縁]アート・オブ・ネクサス」
現在、TOTO ギャラリー・間では、「en[縁]:アート・オブ・ネクサス――第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館帰国展」が開催されている。
この展示は、2016年5月28日〜11月27日に開催された、第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展において発表されたもので、1975年以降生まれの建築家12 組が、「人の縁」「モノの縁」「地域の縁」という3つのテーマで展示したものである。この「en[縁]:アート・オブ・ネクサス」は世界中の人びとの共感を獲得し、「特別表彰」を受賞した。
今回はそんな展示の様子、作品の一部をご紹介したい。
ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展とは?
ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展は、イタリアのヴェネチアで2年に一度開催され、世界中の建築家が参加する建築界のオリンピックのようなもの。
この第15 回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展は、2016年に開催され、チリの建築家アレハンドロ・アラヴェナを総合ディレクターに迎え、「REPORTING FROM THE FRONT」という、「各国それぞれの社会状況や課題に対し、それに応えた建築とは?」といったテーマが設けられた。
日本館の展示「en[縁]:アート・オブ・ネクサス」は、日本が抱える問題(空き家や高齢化など)に、今日的な方法で建築による解答を提示したことが評価され、特別表彰を受賞した。
震災、原発事故と向き合う「15Aの家」
「15Aの家」は2011年に起こった、記憶に新しい原発事故の経験から自身の身体感覚を鍛え直すことを考え、施工中の建築家の自邸である。地震に強いこと、建築家自身が施工可能なこと、家族4人で15アンペア以下で生活できることを条件としている。
一見廃墟のように見えるこの家。その経緯を追いながらみていると家の背景もがわかりやすく見えてくる。
新しい”家族”の形「不動前ハウス」
「不動前ハウス」は、核家族用の住宅と倉庫を、他人同士の7人が共同生活をするために再生するというプロジェクト。一回の倉庫はリビングへと化し、扉を取っ払うことで路地へと地続きになっている。
実際に「不動前ハウス」の様子を写真に撮ったものも展示されており、その生活を垣間見ることができる。
単身生活ではなかなかできないであろう居住環境を他人同士が共有し、また地域とも関わりを持つ、新しい”家族”の形を見ることができた。単身生活者が多い現代の生活においては共感度の高い住居なのではないだろうか。
窓の可能性「射体の窓」
既存の鉄筋コンクリート二階建てより大きく三層分に拡大された「窓」。全面ガラスにより太陽光を反射させたり、冬は暗い庭を明るく照らす。「建物の開口部より庭側へとずらすことで、窓というエレメントが室内と庭の前提条件を変え、空間全体を揺るがし、身体と環境に対する拡張された感覚を生み出している」とするこの作品。窓で確かに遮られているものの、窓の内外で同じ空気感が感じられる。
大きな転換期をむかえる現代社会において建築が何を実現すべきなのか、建築家ひとりひとりが向き合った本展。
彼らの建築からは人びとのつながり、地域との連関など、様々なものを感じとることができた。建築のもつ可能性をさらに押し広げ、独自の立ち居地を確立しようとする現代の建築家たち、是非足を運んでみてほしい。
en[縁]:アート・オブ・ネクサス
――第15 回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館帰国展
会期: 2018年1月24日(水)~ 3月18日(日)
開館時間: 11:00~18:00
休館日:月曜、祝日
ただし2月11日(日・祝)は開館
入場料:無料