【後編】建築家の設計力が光る「繋がる家、つなげるいえ」つながる間取りとインテリア
前編:【前編】建築家の設計力が光る「繋がる家、つなげるいえ」光と空間が溶け合う都市型住宅
外の喧騒を忘れさせるほどに静謐で洗練され騒がしい街角に、静けさを宿す箱。その中に足を踏み込むと、ここに住む家族のライフスタイルの豊かさを感じられます。
アイランドキッチンとダイニング、「食」を中心に家族が集う

キッチンとダイニングは、この家の中でも特に家族の時間が凝縮される場所です。写真を見ると、木目調の面材を用いたアイランドキッチンがゆったりと空間の中央に据えられており、その隣に無垢材のダイニングテーブルが横並びに配置されています。料理好きの家族のために、キッチンはアイランド型として設計されており、調理しながら家族との会話を楽しめる開放的な構成です。

キッチン背面にはウッド調のパネルが張られ、黒いレンジフードと組み合わさることで、落ち着いた中にも引き締まった印象を与えています。天井のライティングレールに取り付けられたスポットライトが、テーブルやカウンターを的確に照らし、調理も食事も気持ちよく行える明るさを確保しています。

大きな掃き出し窓の先には中庭テラスが広がっており、料理をしながらでも子どもたちが外で遊ぶ様子を見守ることができます。パントリーも隣接しており、食品の備蓄やキッチン家電類をすっきりと収納できる動線が整えられています。家事のしやすさと、家族の「見通し」を両立した、よく考えられたゾーニングです。
水回りに宿る上質感

洗面空間の写真からは、住まい全体のデザインの精度の高さが伝わってきます。

グレーがかったマットな面材のキャビネットに、石目調のカウンタートップを組み合わせた洗面台は、ホテルのバスルームを思わせる端正な佇まいです。横長に設置された3面鏡はLEDで均一に照らされており、機能性と見た目のすっきりさを兼ね備えています。水栓はマットブラックのものが選ばれており、グレーとホワイトを基調とした空間の中で、程よい引き締め役を果たしています。

廊下を挟んで洗面台が見通せる構造は、水回りを動線の中心に置いた設計思想の表れです。子どもたちが外から帰宅した際に、リビングを通ることなく直接手洗いへとアクセスできるよう配慮された動線計画は、4人のお子さんを持つ家族ならではの現実的な要求に応えるものです。
階段と吹き抜け、「縦の繋がり」を演出する

階段もこの住まいの見どころのひとつです。

木製の踏み板に、黒いスチール製のバルスター(手すり子)を組み合わせた階段は、シンプルでありながら存在感があります。1段目が大きく広がった形状になっており、リビングからゆるやかに上へと誘うような、おおらかな印象を与えます。階段を上がっていく際、視線が自然と吹き抜けの上方へと向かい、木板張りの天井と球形のペンダントライトが見上げる先に現れる——その演出は計算されたものです。

階段は単なる移動手段ではなく、1階と2階を視覚的に「繋ぐ」装置として機能しています。リビング階段にしたいというご要望に応えながら、家族がすれ違う場所、声を掛け合う場所として、この家の縦方向の繋がりを象徴する存在になっています。
子どもたちの部屋と、それぞれの居場所

2階には子ども部屋が複数設けられています。そのひとつには、淡いブルーグレーのアクセントクロスが1面に張られており、明るい無垢のフローリングとの対比が清々しい印象を与えます。

個性のある壁の色は、子どもが自分の部屋への愛着を育む大切な要素にもなるでしょう。

畳の部屋も設けられており、琉球畳風の正方形のユニットが整然と並ぶ落ち着いた空間になっています。壁際には間接照明が仕込まれており、夜には柔らかな光が壁を照らします。収納棚や可動棚も組み込まれており、実用的でありながら、素朴なぬくもりのある場所です。

ウォークインクローゼットにはウォルナット調の木目パネルが用いられた収納ユニットが設置されており、ハンガーパイプや引き出し、可動棚が効率よく組み合わされています。「現在の家は収納が少ない」という切実な声に応えるべく、各所に扉付き収納が配置されており、生活感を上手に隠しながら日常の使い勝手を高めています。
「甘くなりすぎない」インテリアへのこだわり

この住まい全体を通じて感じられるのは、素材と色彩のバランスの繊細さです。

白を基調にした壁と天井に、木の温かみをさりげなく加え、そこへ石目調のアクセントやモルタル調の素材、マットブラックの金物などを差し込む。

それぞれの要素が互いを引き立て合い、決して一方が出しゃばりすぎることがありません。設計者の言葉を借りれば「甘くなりすぎない洗練された空間」——それがこの住まいの核心にあるものです。
何かと何かが「繋がっている」感覚を得られる住まい
外観から内観まで、縦の吹き抜けから横の中庭テラスまで、家のどこにいても何かと何かが「繋がっている」感覚がある。それが、「繋がる家、つなげるいえ」という言葉の、最も正直な表現なのかもしれません。
子どもたちが走り回り、料理の香りが家中に漂い、吹き抜けを通して「ご飯だよ」の声が2階まで届く——そんな日常の風景が、すでにこの家の中で始まっています。