捨てられるはずの素材に価値を見出す、ダンボールアーティスト儀間朝龍さん
沖縄を拠点に活動するダンボールアーティスト・儀間朝龍さんは、日常の中にあふれるダンボールに目を向け、独自の視点で作品へと昇華させてきました。
捨てられるはずだったダンボールを再生し、流通や消費の現場と向き合いながら、アートを通して循環を生み出すエコな取り組みを続けています。
今回は、儀間朝龍さんの暮らしの中で大切にされているデザインやお好きな空間などさまざまな角度からお話を伺いました。
rubodan代表、ダンボールアーティストの儀間朝龍さん

沖縄県在住。1976年沖縄県生まれ。主に廃ダンボールを素材に制作を行う。
「流通と消費」をコンセプトに「POP COLLAGE」シリーズを展開。国内外のギャラリーや企画展に参加。GUCCI、adidas、le coq sportif、A BATHING APE、 オリオンビールなどコラボレーションも多数。
2011年福祉作業所と協働で廃ダンボールステーショナリー『rubodan(ルボダーン)』を設立。現在は企業の協力を経て続けられています。
暮らしの中で自然と惹かれる、ダンボールのデザイン
儀間さんが暮らしの中で大切にされているデザインについて伺いました。
「普段からダンボールに触れているということもあり、ダンボールで作られたものや、そのようなデザインに目が惹かれることが多いです。
具体的に、スーパーや日常的に見かけるダンボール箱にプリントされているロゴやデザイン・印刷技術・紙質など、そのようなところまで細かく見る傾向があります。
ほかにも、ダンボール素材を使った、災害時に作られた道具や家具も見ます。さまざまな使い方を見ますが、自然と目が行きます。」
制作の中心となる、こだわりのデスク空間

お好きな場所、空間を教えてください。
「自宅で制作していることが多いため、机周りには本があったり、 レコードがあったりします。ほかにも、スニーカーや好きなものに加えて資料などを周りに置くことで、常にクリエイティブな空間を作ることをしているため、机周りがお気に入りの場所です。」
捨てられるはずのダンボールとの出会い
世界中どこにでもある、本来は中身を運んだら捨てられてしまうようなダンボールを、素材に選んだきっかけについて伺いました。
「那覇の牧志公設市場で、以前アトリエを構えていた時期がありました。そこでは、毎日夕方になると市場からゴミが捨てられていきます。そのゴミの一つがダンボールでした。
よく見ると世界中から届いているのがデザインやプリント部分から分かったのですが、そのダンボールが個性的だったり、カラフルでデザインが良かったりとそのようなことを気にしていたのです。その中で、いつか何かできないかなという思いがありました。」
雨の日の気づきが生んだ、ダンボールの表現

「ある雨の日に、濡れたダンボールを見かけ、端っこがめくれているのに気づきました。その際に『もしかしてダンボールを水につけると、一枚一枚剥がすことができるんじゃないか?』と思い、実験をしてみました。
簡単に一枚一枚を紙にすることができ、その紙を使ってノートや使えるものを作ったり、絵を描いたりしていました。
そして、2014年頃からダンボールに入っている商品を、ダンボールの紙を使ってコラージュ制作をすることを行い、現在に至っています。」
ダンボールだからこそ、クオリティにこだわる
作品を作る際のこだわりや重視するポイントについて教えてください。
「ダンボールの紙を使い、コラージュ制作を行っているのですが『流通と消費』というコンセプトをつけて現在制作をしています。そもそも捨てられたダンボールを使うことが多いのですが、ダンボールのイメージがあまり高くないので、クオリティを常に高くすることを心がけています。
かっこよく見せることでコンセプトを鍛えやすくなるのではないかなと思い、そこはかなり意識して制作をしています。」
作品に表れる、沖縄のカルチャー

儀間さんの作品には本当に鮮やかなロゴやパッケージの色が活かされていますが、 そこには沖縄暮らしからの影響はあるのでしょうか?
「沖縄県は歴史が複雑でさまざまなカルチャーが混ざっているのですが、特に幼少期からアメリカンカルチャーに触れ合う機会が多くありました。
それは食べ物や飲み物・お菓子・服・映画から強い影響を受けてきたことが制作に大きく反映されています。その辺で作品に表情として出ているような気がします。」
段ボールを見た瞬間に『これはここに使おう』というインスピレーションが湧いてくるのでしょうか?
「段ボール自体は、絵の具として捉えているところが多いため、絵の具を集めていくような感覚です。具体的に『この場所に使いたい』ということもありますが、基本的には色を集める、素材を集めるという点で日々段ボールには目を向けています。」
廃材を日用品へと生まれ変わらせる「rubodan」

儀間さんがアート活動と並行して取り組まれている廃材をノートなどの日常品に変える活動rubodanについて教えてください。
「ダンボールを簡単に1枚1枚にする方法です。水につけ、のりを溶かして時間を置くと紙になります。その紙を使い、ノートにしたり絵を描いたりということをしています。
簡単に紙ができることもあり、それにシンプルペーパーメイドという製法名をつけました。 その製法をどうにか広めていけないかなと思い、さまざまな実験をしていたのですが、作ったものが売れることで、ゴミを減らしながら雇用を生めるのではないかと考えました。
その際に、一番いいアイデアとしてステーショナリーブランドがいいかなと思い『rubodan』というブランド名で 2011年から展開しています。
現在は企業の協力を得て段ボールを提供していただき、福祉作業所のお仕事になるように商品を作って販売するということを続けています。」
rubodanのこれからの取り組み
これからrubodanとして取り組もうと考えている活動はありますか?
「rubodanとして、現在は企業さんの協力を得てノート作りや商品展開させていただいています。
そのため、沖縄県だけではなく、福岡県やさまざまな地域でこのアイデアをシェアしたいという方々や団体企業の方とかがいらっしゃるようであれば本当に飛んで行って一緒にやりましょうという気持ちがいつもあります。声をかけていただければうれしいなと思います。」
身近なものの中で美しさを見つける視点

儀間さんは ダンボールという身近なありふれた素材の中に美しさを見出されていますが、私たちが日々の暮らしの中で 空間や物に美しさを感じるための見方や構えなど何かアドバイスやヒントがあったら教えてください。
「少し、性格がひねくれているところがあるのは自分で自覚していますが、皆さんが『いいよいいね』って言ってるものに対して、そうじゃないものも中にはあるかと思います。
私の場合、そのようなものに対して『この中には何かいい点があるんじゃないかな』と見る癖があります。その中でいい点を発見し、一人で満足してたりする時があります。
このように、みんながいいねって言ってるものだけではなく そうじゃないものに目を向けていい点を探すというトレーニングをすることで、世の中は本当にもしかしたらいいものだらけに溢れていることに気づくこともあるかなと思います。 」
無理をしない、物との付き合い方
現在世界的にサステナビリティが叫ばれていますが、儀間さんはアートを通して人々と物の付き合い方が今後どのように変わっていくことを期待されていますか?
「本当に日常的にサステナビリティやSDGs、リサイクルなどの言葉を聞くことが多いのですが、毎日聞いていると息苦しさを感じてしまうのかなと思います。
そのため、サステナビリティやSDGsなどに対しては、気軽にポップに楽しむぐらいな感じで付き合っていった方がいいのかなと思います。
気負わず長くできる気持ちでやっていければいいなと願っています。 」
音楽とともに広がる表現、これから挑戦したいこと

レコードジャケットをモチーフにした作品から、ロック音楽への影響を感じました。青春時代に親しんだ音楽が自然と作品に表れているとのことですが、今後は新しい素材や、これまでとは違う表現にも挑戦してみたいと考えていますか?
「サスティナビリティやリサイクルなどに対して、もう少し気楽にポップにエコを楽しんでほしいなという気持ちがあり、昨年から『ペコポプロジェクト』というものを立ち上げました。
これは何かというと、ポッププラスエコーでペコポっていう造語を作ったのですが、アルファベットで『POPプラス ECOエコ』それを合わせて『PECOPO(ペコポ)』と読みます。
ポップにエコを楽しみ、さまざまな場所で気負わず日常的にエコに触れ合ってくことをコンセプトにしています。ダンボールを使ったワークショップやこれまでダンボール以外の廃材に取り組むアクションとしてこのようなプロジェクトを立ち上げました。
具体的に、コーヒー屋さんで出るコーヒーの出がらしを使い、福祉作業場の方で消臭剤を作っていただき販売したり、電気屋さんでまだまだ使える道具を新しいライトにするような導き方を一緒に考えたりしています。
まだまだ使える道具のアイディアを加えることにより、まだまだ使えるというエコな取り組みをみんなでやっていける機運を作るためにこのプロジェクトを立ち上げました。」
Life is Cardboard
インタビューの最後、儀間さんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると、「Life is Cardboard」と答えてくれました。
「ダンボールに触れ合う機会が多いということもあり、Life is Cardboardという言葉を入れさせてもらいました。Cardboardとは、ダンボールという意味です。
制作する上でもダンボールは、必要なものになっていますが私たちの日常の中でダンボールは、やはり必要不可欠なアイテムだと思います。それを私が制作することでダンボールの良さやダンボールの可能性を伝えていきたいなと思っている反面、皆さんにもダンボールの良さや大事にしてほしいなども少し思っています。」
気負わず、楽しく続けていくものづくり
捨てられるはずだったダンボールに目を向け、素材としての可能性だけでなく、その背景にある流通や消費、暮らしのあり方までを見つめ直す儀間朝龍さん。
『いいと言われていないものの中にも、良さがある』という視点から生まれる作品や活動は、無理なく楽しく、長く続けられるサステナブルなものづくりのかたちを示してくれます。
身近な素材に価値を見出し、人とモノとの関係をやさしく繋げていく儀間さんのこれからの表現や活動に、ますます注目が集まります。