
o+hや工藤浩平、山田紗子ら注目の若手建築家が手掛ける大阪・関西万博の個性豊かな4つの休憩所。
大阪・関西万博の会場に点在する4つの休憩所は、それぞれ異なるコンセプトで設計されています。o+hのカラフルな布の屋根、工藤浩平建築設計事務所の石のパーゴラなど、個性豊かなデザインが魅力です。喧騒から離れ、建築と自然が織りなす特別な空間で、万博の体験を振り返ることができます。
休憩所1:ファッション業界のデッドストック生地を活用した「五感で感じる休憩所」
大西麻貴+百田有希/o+hが手掛けた「休憩所1」は、約40種のデッドストック生地を使ったカラフルな膜屋根が特徴です。黄色、赤、オレンジの布を手作業で取り付けることで、美しいグラデーションの天蓋が生まれました。この屋根は風が吹くとさざなみのように揺れ、光の移ろいを表現します。床は冷気が伝わるハンモック状のネットになっており、来場者は横になって、揺れる布と柔らかな光を眺めることができます。視覚だけでなく、触覚や聴覚など五感を刺激するこの休憩所は、忙しい万博の合間にふと立ち止まり、風や光を感じながら体験を反芻する場となることを目指しています。
休憩所2:壮大な時間軸を内包する「石のパーゴラ」
工藤浩平建築設計事務所が設計した「休憩所2」は、瀬戸内産の自然石を吊るしたパーゴラが特徴的な、仮設でありながら壮大な時間軸を持つ建築です。休憩所やトイレ、応急手当所などの機能を持つ複数の棟が分散配置されており、石のパーゴラがそれらをゆるやかにつないでいます。この石は、会期中は日除けとして機能し、来場者はその下で思い思いの時間を過ごします。そして、万博終了後には大阪湾へ沈められ、海洋生物の住処として新たな役割を担うことになります。何万年もの歳月を経て生まれた大地の資源が、半年間という短い期間、人々のための建築物となり、その後、海へと還っていく。この休憩所は、来場者に地球規模の時間の流れを感じさせる、特別な体験を提供します。
休憩所3:建築と自然が溶け合う「ジャングルのような半屋外空間」
山田紗子建築設計事務所が設計した「休憩所3」は、建築と自然が一体となった「半屋外の居場所」です。休憩室やトイレ、案内所といった複数の機能を小さな建築に切り離し、敷地内に点在させています。これらの建物は、周囲の樹木と同じスケールで配置されており、建築物と樹木が織りなす空間は、まるでジャングルのような豊かさと奥行きを持っています。各建物の個性的でアンバランスな形が、樹冠や草花と寄り添うことで不思議な余白が生まれ、来場者は心地よい日陰を求めて集まります。色彩のアウトラインも建物から地面や植物へと自由に横断することで、独立した建築物が全体として一つの景観を創り出す、開放的で居心地のよい休憩所となっています。
休憩所4:地形を「掘る」ことで生まれた洞窟のような休憩所
服部大祐と新森雄大のユニットMIDW+Niimori Jamisonによる「休憩所4」は、埋立地である夢洲の地盤処理という制約を逆手に取り、「掘る」という行為から生まれたユニークな建築です。この休憩所は、山と谷が交互に現れるように掘削した地形を型枠とし、鉄筋メッシュを成形。それを回転させて再配置することで、地形と屋根の間に洞窟のような連続した空間を創り出しています。この空間は、地盤の制約という課題から生まれたとは思えないほど有機的で心地よい居場所となっており、万博のリングと調和するような美しい曲線を描いています。会期後も取り壊されることなく、隣接する「静けさの森」と共に、藤などの植物に覆われた魅力的な廃墟として残されることが期待されています。
「いのち輝く未来社会のデザイン」を考えるための4つの休憩所
これら4つの休憩所は、一時的な安らぎの場にとどまらず、デッドストック生地の活用や、万博後の再利用計画など、持続可能性へのメッセージも内包しています。それぞれの建築が持つ物語を読み解きながら、五感で感じる豊かな体験を通して、万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を深く考えるきっかけとなるでしょう。