
建築家の佐藤研吾が作る「インド・シャンティニケタンへ同志を募って家を作りに行く」
1989年神奈川県生まれの建築家・佐藤研吾が手がけたインド・シャンティニケタンの住宅。インドのかつての首都・コルカタから200kmほど北西に位置し、静けさと思想が息づくこの土地に、「日本の家」を建てようと夢を見ていた現代詩人の住まいです。
建築やデザインの分野で、「文化を運ぶ」という新しい住まいの形として静かな注目を集めています。
建築家・佐藤研吾が手がけた「インド・シャンティニケタンへ同志を募って家を作りに行く」
インドの西ベンガル州、詩人ラビンドラナート・タゴールが理想郷として築いた町、シャンティニケタン。そんなシャンティニケタンは、タゴールが学校を設立した地として知られ、今もなお国内外から芸術家や思想家が訪れています。かつてタゴールと深い交流を持った日本の思想家・岡倉天心らとの関係が、時を越えてこの「インド・シャンティニケタンへ同志を募って家を作りに行く」のプロジェクトへと繋がりました。
こちらが、インド・シャンティニケタンの住宅のの中心となるスペースです。床・壁・天井はすべてコンクリートで仕上げられ、素材そのものの表情が感じられる空間になっています。
家具を作ることから始まったプロジェクト
この「インド・シャンティニケタンへ同志を募って家を作りに行く」のプロジェクトは、まず家具を作ることから始められました。日本で家具を作り、シャンティニケタンへ持って行く。そして現場では持ち込んだ家具を起点として、座机、床の間、家全体に広がる木架構を制作されました。
装飾を排したミニマルな佇まい
木のベンチや座卓が置かれ、床も天井も装飾を排したミニマルな佇まいです。建物はRCとレンガによるシンプルな構造でありながら、窓から差し込む自然光と素材の表情が、空間に豊かな表情を生み出しています。壁には細かな木造作の棚があらわれているののも魅力です。
ガラス窓に囲まれたコーナー空間は、外の木々がそのまま室内に溶け込んでくるような設計で、自然と対話するための部屋のようです。柱や窓枠は、あえて無骨な仕上げられています。
こちらは、階段と吹き抜けをつなぐ空間です。鉄と木が組み合わされていて、吹き抜け全体を使った軽快な架構があらわれています。そして窓から差し込む光が壁に反映され、時間とともに陰影を変えていく様子もこの空間の魅力と言えることでしょう。
周囲の緑と調和する外観
空へ大きく張り出した鋭角な屋根と、コンクリートの力強いボリューム感が印象的の外観の一部。そんな中で、周囲の緑とやわらかく調和しているところが、この家らしさを物語っています。
素材を活かしたシンプルな家具
こちらは、クッションも装飾もなく、ただ木の質感と角度だけで、背を預けるという動作を支える作りのシンプルな椅子です。地元の鉄鋼所の職人さんが鉄で骨組をつくり、建築家自らが削り出した木板を組み合わせました。
床に座り、墨をすり、言葉を綴る。この家は、彼がずっと憧れていた日本の家を、インドのこの場所で少しずつ実現していったものです。いま、言葉と暮らしがひとつになって、この空間に静かに息づいていることでしょう。
建築家の佐藤研吾が作る「インド・シャンティニケタンへ同志を募って家を作りに行く」
建築家・佐藤研吾の手によってつくられた「インド・シャンティニケタンへ同志を募って家を作りに行く」。この空間は、過剰な装飾を排し、素材そのものの力と所作によって、“生きた暮らし”を支えています。そしてこれは、ただ家を建てたという話ではなく、日本とインド、それぞれの場所から何度もやりとりを重ねながら、夢や暮らしの形を伝えあい、育てるようにして生まれた住宅なのです。