【DESIGNART TOKYO 2024】若手クリエイターによる独自の視点が生み出すデザインの新たな可能性「TIERS GALLERY」

今年で8回目となる日本最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO(デザイナート トーキョー)」が10月18日~10月27日の約1週間、過去最大規模となる96会場、117の多彩なプレゼンテーションで東京の街を彩ります。今年は「Reframing 〜転換のはじまり〜」をメインテーマに、従来の枠組みにとらわれず別の視点から見つめ直すことで、新たな価値を提示するクリエイターたちの営みに注目します。ワイヤー金具・ピクチャーレールメーカーの荒川技研工業株式会社のショールームTIERS GALLERY(ティアーズギャラリー)では、UNDER 30のクリエイター1名を含む4組の作品を展示。自然光が差し込む心地の良い空間のなかに、ユニークな視点が活きた作品が並びます。

HOJO AKIRA「Is that structure essential?」

金沢美術工芸大学卒業後、現在は企業に所属しながら個人のプロダクトデザイナーとしても活動するHOJO AKIRA。軸足を量産に置くことで感じる利点と違和感を基点に、構造や接合方法に焦点を当てたプロダクトを提案しています。

本展では「What is the essential structure?」と題し、品質管理や在庫管理を優先した設計から、ユーザーとメーカー両者の新たな関係を模索したソファを発表。通常ソファはクッション材やフレームとなるスチール、張り地となる革などさまざまなマテリアルが使われるため、捨てる際の分解、再利用が難しい製品です。

本作はファブリックでクッション材を包むことなくフレームとなるスチールとの2つのマテリアルのみで構成することで、これまでの課題の解消を目指しました。剥き出しとなったクッション材は、座面はもちろん足や手が触れる断面も柔らかな肌触りとなるよう調整されているため、見た目とは一変した柔らかな座り心地に。分解性、再生利用を視点に製品を再設計されたソファは、私たちが当たり前と捉えているプロダクトの在り方に新たな気づきをもたらしてくれます。

Masaya Kawamoto「PF Chair / PF Armchair」

日本大学大学院芸術学研究科を修了後、大手オフィス家具メーカーやデザイン事務所を経て、2024年に独立。プロダクトデザイナー/インダストリアルデザイナーとして東京を拠点に活動中の川本真也。

本展では丸パイプの一部に「潰し」の加工を加えることで、人の触れる背もたれにやさしさを加えた椅子を発表しています。

この椅子の特徴である「Press」と「Flat」の頭文字を取り「PF Chair」と名付けられた本作の着色には、ステンレスに酸化被膜を形成することで複雑で独特な紋様を浮かび上がらせ、唯一無二の色味を表現することができる「塩浴着色処理」という技術を使用。塗料や顔料などは一切使わず、一つ一つ職人の手作業により生み出されています。

造形、色味ともにアート作品の様に美しい表情を持つ椅子は、プロダクト・マテリアルへの新たな視点を提示します。

FARM AND BUILD「STRAIGHT ARM CHAIR & NAJIO LOW TABLE」

FARM AND BUILDは野村牧生&佐藤建のデザインユニット。文化や伝統を掘り下げ、理解することで、伝統的な素材や技術、知恵を活かした新たなデザインを提案してます。野村牧生による「STRAIGHT ARM CHAIR」は、自身が持つ個性や様式を椅子という形で表現した新たな試み。

佐藤健は日本独自の紙である和紙に着目。泥土を混ぜた名塩和紙は、破れにくく水や日焼けに強いのが特徴です。

この和紙を柿渋と鉃媒染で黒染めしたのちニスを磨きながら何層も塗り重ねることで、繊維や泥の濃淡が浮き出て独特の味わいに。木や金属、ファブリックでは表現できない独自の質感が魅力のローテーブルとスツールに落とし込みました。

デザインが文化と伝統を尊重しながら、革新と持続的な価値を創出するための重要な手段として機能することで、過去の知恵を未来へと繋ぐ架け橋となり、文化的な豊かさを形にする側面に気付かされます。

PULSE「GROPING PROCESS」

PULSEは豊嶌 力也、多木 翔夢、三井 大輝による急速に発展する時代において、モノづくりの本質的な価値を見直すプロジェクト。

豊嶌 力也は鋳物の砂型に使用される砂を再利用したプロダクトを発表。製造の際に混じる鉄片によって煌めきを含んだ黒砂を、ローテーブルやトレー、壁掛け時計などの日用品に落とし込みました。

テーブルの角を浴槽の角からサンプリングしたり、時計の文字盤を鉛筆で示したりと日常の造形を取り入れることで、「黒い砂」といった硬さを感じさせるマテリアルにも関わらず、懐かしさや親しみやすさが感じられる柔らかな印象にまとめています。

多木 翔夢はレトロガラスの光の拡散に着目した照明器具を発表。

既存のレトロガラスに凹凸の加工を加え、美しい灯りをもたらすプロダクトを提案しています。

三井 大輝は竹かごや竹編みに和紙を重ね、柿渋や漆を施すことで強度を高める技術「一閑張り」に着目。

この技法を有刺鉄線や金網など現代の無機質な素材に取り入れることで、視覚だけでなく手触りの温もりや素材本来の表情を際立たせた新たな一閑張りの在り方を提案します。

大きな開口部で街と緩やかに繋がるTIERS GALLERY

会場となるTIERS GALLERYは、伊東豊雄事務所出身の建築家・田邊曜が設計した荒川技研工業のショールーム「TIERS」に併設されたギャラリーで、これまで数多くのファッション・デザイン・アート展を開催。「TIERS」は段状、層という意味の言葉であり、外部から内部へつながる大階段、途中階のテラス、野老朝雄デザインによるパターンを用いたワイヤーのファサードにより、緩やかに街と連続する空間をつくりだし、訪問者を優しくギャラリー内部へと導きます。

TIERS GALLERY
会期:2024年10月18日(金)〜10月27日(日)
会場:荒川技研工業株式会社 本社・表参道ショールーム「TIERS」3F 東京都渋谷区神宮前5-7-12
参加クリエイター:FARM AND BUILD、HOJO AKIRA(UNDER 30)、Masaya Kawamoto、PULSE
WEB : https://www.arakawagrip.co.jp/tiersgallery/