スペイン・バスクの山々に呼応するような力強いサンティアゴ・カラトラバによるワイナリー「ボデガス・イシオス」

ワインの生産地として有名なスペイン北部のリオハ地方。ワイン造りにおいて1000年以上の歴史を持ち、テンプラニーリョ種を主体として世界的に有名な高評価のワインを造りだしています。そんなリオハは、フランクオーゲーリーが手掛けた5つ星ホテルが建てられるなど、ワイナリーを中心としたバカンス・観光の地として近年注目を集めています。2001年に竣工した「ボデガス・イシオス」は、独創的な造形が特徴的な建築家 サンティアゴ・カラトラバが手掛けたワイナリー。山脈の長い稜線に呼応するように、有機的な曲線が強調されたフォルムが特徴的な建築です。

サンティアゴ・カラトラバとは

バレンシア出身の建築家 サンティアゴ・カラトラバ。彼は建築家としてだけでなく、構造エンジニア・彫刻家・画家としても活躍する世界的アーティスト。彼の表現の特徴は、構造デザインを主体にし「骨や翼」を思い起こさせるような独特かつダイナミックな造形にあります。構造エンジニアでもあるカラトラバが作り出す設計は、厳密な構造計算に基づいており、特にスタジアムなどの大空間建築や、橋などの土木構築物の設計デザインにおいて世界的に高い評価を得ています。

スペイン北部のワインの町「ラグアルディア」

「ボテガス・イシオス」が建つのはスペイン王国の北東部にあるバスク州、ラグアルディアと言う小さな町。ワイン生産国として有名なスペインの中でも、最上級のワインを作るのがこの地域です。古くからワインを作っていたこの町は、中世の頃には地下にワインを貯蔵するためのワインセラーを備えており、複数のワインセラーは洞窟のようなトンネルで繋がっていました。現在も多くのワイナリーがあり、見学や試飲などもできる観光資源となっています。

ぶどう畑に溶け込む有機的な建築

ワイン用のブドウは、早朝に収穫することで品質がよりよくなると言われており、建築はブドウ畑の真ん中に建っています。ラグアルディアのブドウ畑はなだらかな丘となっており、高さを抑えられた有機的な造形の建築は、木の自然の色合いとも相まって周囲に溶け込みます。

「ボデガ」と言うのはスペイン語でワインの醸造所・酒蔵と言う意味。「イシオス」は、エジプト神話の豊穣の神イシスと、ワインを広めたとされる兄であり配偶者でもあるオシリス神の名前を合わせた造語と紹介されています。

山脈に呼応するような躍動感のあるフォルム

建築は、スペイン北部に連なるカンタブリア山脈の東部、バスク山地の山々を背景にして建てられました。

木造のうねるような外壁(内側にRC壁)に、アルミでカバーされた集成材の屋根が沿うように続きます。

カラトラバはこの造形について、現地で並べられたワインの樽を見てこの形を思いついたと話しています。

ファサード中央部は庇が長く突き出しており、鳥が翼を広げて飛び立つかのようなイメージに。

有機的な柔らかさを感じさせながらも躍動感のある堂々とした形態は、周囲の自然に馴染みつつも、圧倒的な存在感を放つ町のアイコン的な存在となっています。

広さ 8,000㎡、長さ196mにもなる建物の中央入口上部のテイスティングルームから、ワインを飲みながら見るワイドなビスタは圧巻です。

外からの強い日差しを木の壁面が受け止め、柔らかな光となって館内に広がります。

荘厳な自然に溶け込む美しく力強いワイナリー

荒々しい山肌の裾野に展開する葡萄畑に溶け込むワイナリー「ボテガス・イシオス」。広大な自然に呼応するような有機的ながらもボリュームを感じさせる力強い形態が魅力の建築です。

Bodegas Ysios – ボテガス・イシオス

所在地 : Camino de la Hoya, s/n, Laguardia, Álava, País Vasco
電話番号 : 945-600-640
公式サイト : https://www.bodegasysios.com/