建築家・神谷修平率いるKAMIYA ARCHITECTSによる、静かな刻が流れる弓形の別荘「THE CONE」

デンマーク、日本で実績を積んだ建築家・神谷修平。彼が率いる建築設計事務所「株式会社カミヤアーキテクツ」では、「世界に感動をゆり起こすクリエイティブな建築設計組織」をビジョンに、空間設計に限らずさまざまなクリエイティブでクライアントの課題解決を目指したソリューションを提供しています。

カミヤアーキテクツが手掛けた「THE CONE」は、軽井沢の地に建てられた、住宅のような落ち着きを持った別荘。ホテルと住宅の中間のような存在を目指して作られた建築は、非日常を感じさせる静けさの中で得られる、自宅のような家族との安らぎが感じられる空間設計が魅力となっています。

弓のような特徴的な形状

Photo : Takumi Ota

敷地は、豊かな森を有しながら大半が南側へと急傾斜した土地。

Photo : Takumi Ota

斜面の形状に沿わせるように、円の一部を切り取った円弧状のプランが導かれました。

Photo : Takumi Ota

断面は片流れ。円弧に沿ってこれを回転させると、逆円錐形のルーフができあがります。

矩形にくらべてパノラマに風景を切り取ることができ、曲面の壁と屋根がつくる柔らかな表情は、静寂で落ち着いた空間を演出します。

Photo : Takumi Ota

光を取りこむ⽚流れ屋根

Photo : Takumi Ota

屋根形状は、大自然を取り込む大きな開口部を生み出すために、地形の勾配と逆の勾配に設定。

Photo : Takumi Ota

大きな窓からは四季折々の自然を楽しむことができます。北側には滝のある水景が作られ、静けさに包まれています。

構造種別を主張しない中性的な建築

Photo : Takumi Ota

建築の法規上の構造種別は木造であるものの、リビングの15M×12Mの大スパンを実現するために、スチール材で梁を補強。

Photo : Takumi Ota

また、在来木造の柱ではなく、無垢の鉄柱を用いて柱サイズを最小化することで、透明度の高い森に開いた大開口が実現されています。

自然光を生かす白の天井空間

Photo : Takumi Ota

逆円錐のやわらかさを内部空間でも生かすため、天井を白く塗り大きな反射板としました。  日中は自然光だけで過ごすことができ、夜間は間接照明だけでも、反射した光によって空間全体が暖かく照らされ、心地の良い灯りを保っています。

Photo : Takumi Ota

建物中央を貫く円弧上の廊下は、全貌が見えないことで期待感を生み出しています。

Photo : Takumi Ota

この廊下を軸に大小さまざまな空間が展開され、軽井沢の自然風景を様々に取り込んだ豊かな空間体験をもたらしています。

Photo : Takumi Ota

リビング・ダイニングでは、開放感のある大空間のなかでも人間が落ち着けることを目指し、信州産 安山岩の巨石をくり抜いてつくった直火の暖炉を配置。

Photo : Takumi Ota

揺らぐ炎を見つめることで人間がコントロールできないランダムネスによって、心安らぐ穏やかな時間が流れます。

五感を刺激する素材

Photo: nanako ono

「THE CONE」では地域にある素材を建材として採用。石材は地元・信州産の安山岩、壁の木材は杉を用いています。

Photo: Takumi Ota

また、ステンレスなどの金属を用いて自然素材にない艶やかさを演出しています。

Photo: Takumi Ota

素材のよさを活かすために照明の配置や当たり方にもこだわり、落ち着きと驚きを与える空間としています。

逆円錐の形状がもたらす柔らかさとこだわりの材が生み出す心地よさ

自然環境から導かれた円弧状のフォルムがユニークな「THE CONE」。大開口がもたらす非日常的な解放感を活かしつつ、安らぎを感じさせる光や炎などプリミティブな要素をうまく取り込むことで、穏やかな時間が流れる柔らかな空間となりました。