建築家・山田紗子による自然が暮らしに溶け込む穏やかな住まい「takahatafudo」
藤本壮介建築設計事務所からの独立後、「新しい価値観を創造する」をモットーに、慣習にとらわれないユニークな造形や構成の建築の数々を提案している建築家・山田紗子さん。2025年開催予定の大阪万博では、会場の休憩施設の設計も担当されています。そんな山田さん率いる「山田紗子建築設計事務所」が手掛けた「takahatafudo」は、キッチンやワークスペースなど暮らしを営むスペースが緩やかにつながり広がる、穏やかな時間が流れる家族四人の住まい。青と黄色、木材を基調とした建築に周囲の豊かな自然が溶け込み、豊かな日常を見守ります。
住宅の一角に建つ明るく爽やかな住まい
敷地は丘陵地を雛壇状に造成した住宅地の一区画。北側には眼下に広がる街が一部でき、南側は谷底型の道路に接するため明るく空がひらけているのが特徴でした。夫婦と2人の子どもの四人家族が住まうこの家は、ダイニング、洗濯・手洗い・浴室などの水回りスペース、そして夫婦のワークスペースから構成された、2階建+ロフトの住まい。それぞれに独立したヴォリュームが明るく伸びやかな環境の中に並びます。
黄色いカーテンが優しく揺れる穏やかなLDK空間
北庭に面した玄関から室内へと入るとまず現れるのは水回りスペース。玄関前に洗面台があるので帰宅後すぐに手洗いをすることができ衛生的。ホワイトのタイルを基調としたクリーンな空間には三方から光が差し込み、明るく開放的な場となっています。
東側の壁沿いにはキッチンを配置。隣接するダイニングも合わせた水平なヴォリュームは、北に広がる街の景色へ向かいます。
キッチンとワークスペースの境に位置する階段は吹き抜け+螺旋階段とすることで建築の中央にありつつ存在感を抑えています。
丈4,000mmの黄色いグラスオーガンジー生地のカーテンは光を透過し、場を緩やかに仕切ります。
ワークスペースの床は耐圧板をウレタン塗装で仕上げ、壁天井は7分艶塗装に。壁は真壁とし、間には有孔ボードを嵌め込むことでフックと併用して壁面収納を増やしたり、空間の防音対策としても機能します。幅1,700mm、天井高3,160mmの背の高いワークスペースは、幅3,500mmの折戸を開くことで庭と広く向かい合う、開放的な場に。
吹き抜け手前の天井にはFRPグレーチングを用いて2階の寝室前スペース、子ども部屋とを緩やかに繋ぎます。
南庭は隣地の住宅も左へセットバックしており周囲に遮るものがないため、たっぷりと日差しを浴びられる緑豊かな植栽が計画されました。
ブルーの床面がアクセントになったプライベートゾーン
2階には子ども部屋と主寝室を配置。子ども部屋1の手前の床はFRPのグレーチングとすることで、階下のワークスペースと緩やかにつながります。寝室前スペースから繋がる階段を上がったロフト部分には子ども部屋2を配置。FRPのグレーチングを介して1階まで視線が抜けます。
緩やかに繋がる家族それぞれの時間
壁を設けず各々の空間が緩やかに繋がる「takahatafudo」。広々としたフロアには風が光が満遍なく行き渡り、心地の良い空間に。それぞれの暮らしが個々に進みながらも一つの家を形成する、家族四人の日常を見守る穏やかな住まいです。