丹下健三が手掛けた日本のモダニズム建築「香川県庁舎」は、鉄筋コンクリートで日本の伝統建築を表現!

「世界の丹下」として知られる建築家・丹下健三が設計した、香川県庁舎旧本館と東館は、2022年2月に国の重要文化財に指定された建築です。

そのデザインや構造、空間活用方法は斬新な手法が用いられており、今もなお多くの人々を魅了しています。

丹下健三の設計によって手掛けられた「香川県庁舎」

戦後に建てられた庁舎建築として初めて国の重要文化財に指定された「香川県庁舎」は、1958年に建築家・丹下健三の設計により竣工されました。そして、香川県出身の画家・猪熊弦一郎や、インテリアデザイナーの剣持勇も関わった建築物として、日本だけでなく世界中から話題となっています。

その話題となっている香川県庁舎東館は、屋上に3階建ての塔屋がついた8階建ての高層棟と、県庁ホールがある3階建ての低層棟で構成されています。

外観には梁や庇が取り付けられ、日本の伝統な木造建築が表現されました。しかし鉄筋コンクリート造が採用されていることにより「モダニズム建築」をも融合しており、近代建築と木造建築が組み合わされています。そしてバルコニーの庇の下には、当時の技術の限界ともいわれる幅11cmの薄い小梁を施されていることも特徴的です。

建築のデザインや魅力は、世界からも高い評価を得ており、1999年に「DOCOMOMO Japan」の「日本の近代建築20選」に選ばれたほか、2021年にはニューヨーク・タイムズ発行の雑誌の特集で「世界で最も重要な戦後建築25作品」に日本で唯一選出されました。

高さ約7mもあるピロティ

1階部分は、道路側からの自然なアプローチを創り出した高さが約7mもあるピロティが採用されています。

当時、さまざまな催し物が行える広場としての利用が想定し設計されました。現在は県民のためのオープンスペースとして、平日は誰もが出入り可能となっています。

このピロティは、「丹下建築で最も成功したピロティ」と言われており、風通しがよく季節や時間等を問わずに人気の休憩スポットとなっています。

そしてコンクリートの天井には、木製ルーバーが設置されており、中央には、丹下らがデザインした石灯籠が設置されているのもポイントです。

明るく開放的な高層棟1階ロビー

高層棟の1階ロビーは、全面ガラス張りで明るく開放的な空間です。

前面ガラス張りの窓からは、丹下研究室の神谷宏冶がデザインを手がけた南庭を眺めることができます。この南庭は、庁舎やピロティとつながる役割を果たしており、道行く人々も自由に立ち入りくつろぐことができる場所となっています。

そしてこの壁画で囲まれた1階ロビーの中央部分には、センターコアが採用されました。センターコアは、建物全体を支える構造体の役割を担っており、エレベーターや階段、トイレなどの共用設備を集約し、周囲の空間を自由に活用できる機能を果たしています。

芸術を鑑賞できる公共の空間「香川県庁舎東館」

「香川県庁舎東館」は、公共の空間でありながらも、さまざまな芸術を鑑賞できることも魅力の1つです。

こちらは、大きな「庵治石」が目を惹く受付です。さらに奥に見えるクローク棚は、丹下研究室がデザインし、地元の高松市内にある桜製作所が製作を担当しました。

受付を進むと、香川県出身の芸術家、猪熊弦一郎による巨大な壁画「和敬清寂」が待ち構えています。さらにロビーに並ぶ家具の多くは丹下健三の研究室によるデザインで、現在もほぼ全て竣工当時のものが使用されていることも、注目を集めています。

そして、階段や天井、コンクリートの間には木材がふんだんに使用されており、スタイリッシュでありながらもどこか温かみを感じられる空間を作っています。

剣持勇の作品が並ぶ県庁ホールロビー

こちらは、低層棟の2階にある県庁ホールロビーです。県民が集うロビーには、インテリアデザイナーの剣持勇がデザインした椅子やベンチが置かれています。

県民ホール入口の目に留まる赤い扉は、香川漆器の伝統技法である後藤塗で仕上げられました。

鉄筋コンクリートで造られた日本の伝統建築を表現!丹下健三によって手掛けられた「香川県庁舎」

日本のモダニズムを象徴する建築である、丹下健三によって手掛けられた「香川県庁舎」。伝統的な日本の木造建築をコンクリートで表現した外観だけでなく、内部の空間構成など優れた機能性を有していることも世界中から評価されているポイントと言えることでしょう。さらに、南庭の石灯籠や太鼓橋や、受付のクローク棚、椅子などの家具類を計57点も重要文化財の附に指定されており、公共の空間でありながらも、芸術に触れることができるのもまた魅力の1つです。

香川県庁舎

住所:香川県高松市番町4丁目1−10
電話番号:0878311111
HP:https://www.pref.kagawa.lg.jp/