「積み重ねた努力が通用しない時代が来ると思った」画家・北村直登が大切にしているデザインや画家を目指したきっかけ

2014年一世を風靡したドラマ「昼顔」に絵画を提供後、柔らかなラインや幻想的な色使いが注目され、個展やSNSでも幅広い層から人気を集める画家・北村直登。今回は北村さんに、日常で大切にされているデザインや画家となったきっかけについて伺いました。

画家・北村直登

1979年福岡県出身。幼少期よりサッカー漬けの日々を過ごし、1995年ブラジルへ1年間サッカー留学。その後、家を離れ大分県の高校へ進学。大学卒業後、絵画の分野での活動を開始。自身の作品の販売のほか、テレビ番組でのアート協力、子どもたちに向けたライブペイント、SNSでの制作現場の配信など、多角的にアートに取り組んでいます。

自然を身近に感じられる環境が大切

まずは日常生活の中で大切にされているデザインについて伺いました。

「大分で暮らしていると温泉に入ったりと自然を身近に感じる場面が多く、改めて自然の存在が大切だと感じますね。」

北村さんは福岡出身ですが、大分に拠点を移したのはそうした自然を求めてでしょうか?

「駆け出しの頃に大分の方に絵を買って頂くことが多かったので、恩返しではありませんが、それに近い意識はあるかもしれません。」

アトリエが一番居心地の良い空間

画家として、お好きな空間はどういったものなのでしょうか。

「自分のアトリエが最高に居心地がいいです。画家のバスキアのアトリエを映画で見てから、彼のように半地下で薄暗い空間で作業することが夢だったんです。現在のアトリエはそれが叶ったような、倉庫を活用した空間です。床を汚せるというのが最高に楽しく、外履のまま制作できるのも便利で気に入っています。」

サッカー選手のキャリアに不安を感じたのがきっかけ

サッカーでブラジル留学するほどサッカーにのめり込んでいたとのことですが、絵画の分野で活動を始めたきっかけとはどういったものでしょうか。

「プロを目指してサッカーを20歳くらいまで本気でやっていたんです。そんな中である日ふと、『プロになれなかったらどうなんだろう。なれたとしても現役引退後の人生はどうなるんだろう。』と不安に感じたんです。コツコツと努力を続ける粘り強さが身についたのは良かったですが、積み重ねた努力が通用しない時代が来るということを意識できていなかったんですね。そこから他の人生の選択肢を考えた中で、絵画にたどり着きました。」

様々ある選択肢の中で画家を選ぶのは大胆なチョイスですね。自信はあったのでしょうか。

「全くやったことがなかったのですが、他にも色々と試した中で、初めて描いた絵が表参道で売れたのをきっかけに、絵画だけはこの先画家としてやっていけそうな手応えが感じられたんです。ちょうど親から送ってもらっていた仕送りも止まってしまった頃だったので(笑)、この道でやっていこうという決心がつきました。」

サッカーとアートには共通点がないからこそ経験を活かしあえる

サッカーとアート、この二つに共通点はあるのでしょうか。

「共通点がないからそれぞれの経験を活かし合えると考えています。例えば、画家には絵が描けないスランプ期間があったりするのですが、サッカーに置き換えたら、気分が乗らないからといってコーチに『今日はボールが蹴れません』なんて言えないわけです(笑)。病気でない限り、自分の不調がバレないように体を動かしてこなしていくもの。なので、絵画においてそういった現象が起きるときはサッカーに置き換えてみるんです、『手は動くやん』って(笑)。そこからは自分が納得できるかできないかが問題なので、自分が納得できるように描いた作品にどうアプローチしていくかを課題として捉えています。」

常に自身で考え、道を切り拓く

プロサッカー選手への道から画家への転身と、一風変わった経歴をお持ちの北村さん。ご自身の心にまっすぐ、周りに流されることなく自分にとってのベストな選択肢を考え、進むことで、唯一無二のオリジナリティが生まれたようです。

後編:「緊張感のある空間は良いものを生み出す条件になる」画家・北村直登が考えるライブペイントのやり甲斐や作品タイトルのこだわりについて